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志村 研太郎 院長の独自取材記事

志村ウィメンズクリニック

(大阪市北区/大阪駅)

最終更新日:2021/10/12

志村研太郎院長 志村ウィメンズクリニック main

大阪梅田の中心エリア、阪急グランドビル22階にある「志村ウィメンズクリニック」。院長の志村研太郎先生は、幅広い産婦人科診療で女性の健康を一生涯にわたってサポートする一方で、大阪府内の産婦人科医師によって構成される「一般社団法人大阪産婦人科医会」の会長として、医業環境の整備や緊急時の対応など幅広い活動に尽力している。今回の取材では、大阪産婦人科医会の取り組みや産婦人科診療に対する思いなど、多岐にわたり話を聞いた。

(取材日2018年6月14日)

安全性と利便性を図る新たな産科システムも

開業前、どのような経験を積んでこられたのですか?

志村研太郎院長 志村ウィメンズクリニック1

産婦人科は大きく3つの分野に分けることができます。1つは周産期で、いわゆる妊娠や出産に関わる分野。2つ目が内分泌疾患で、ホルモン異常によって起こる月経異常や子宮内膜症のほか、不妊症治療などを行います。3つ目は婦人科腫瘍。悪性、良性を含め子宮や卵巣にできる腫瘍を診察します。大学病院で私は長い間、周産期に携わっていましたが、その後、大学の不妊症グループのリーダーを任されることになり、生殖内分泌やホルモンに関わる婦人科疾患を専門に診ていました。住友病院に来てからは、婦人科臨床の前線に立って先端治療や手術を担当し、結果的には産婦人科全般にわたり経験してきたことになります。

クリニックではどのような治療が受けられますか?

日常生活にさまざまな苦痛を及ぼす月経困難症をはじめ、子宮筋腫や卵巣嚢腫などの良性筋腫の経過観察、不妊症治療、更年期障害、がん検診など、入院を必要としない産婦人科診療全般をカバーしており、手術や入院が必要な場合は、専門治療が受けられる医療機関を紹介するようにしています。当院ではお産は行っていませんが、梅田という土地柄、近隣でお仕事を続けながら9ヵ月くらいまで妊婦健診を受けに通われる方もおられます。最近は晩婚化の影響で出産年齢が上がっており、そうなるとどうしても妊娠中毒症や合併症にかかりやすくなり、胎児へのリスクも高まります。当院では妊婦さんが抱える不安に対する検査やサポートも行っています。

開院された経緯をお聞かせください。

志村研太郎院長 志村ウィメンズクリニック2

住友病院では15年間部長を務めていましたが、勤務医だといつか定年退職しなければなりません。開院すれば自分の体力がもつ限り医師を続けられると考え、2007年に開院しました。ただ、その時自分はまだ十分に病院勤務できる年齢でしたので、病院を去る理由が「立ち去り型サボタージュ」だと思われることを心配していました。この言葉は、急性期病院の産婦人科診療の激務に耐えられずに辞めてしまう先生を指したものです。残された先生方に迷惑をかけないために、私が提案したのが「産科オープンシステム」でした。これは激務に追われる勤務医を、開業医の先生がサポートしていくもので、妊婦健診はクリニックで行い、分娩時は開業医が病院に出向いてお産に立ち会うものです。今は会長の仕事が忙しく、妊婦健診だけを行うセミオープンシステムというかたちですが、分娩の安全性と妊婦さんの利便性を図る取り組みは積極的に行っていきたいですね。

女性を守り、産婦人科医師を守る

志村先生は「大阪産婦人科医会」の会長も務めておられますが、こちらはどのような組織ですか?

志村研太郎院長 志村ウィメンズクリニック3

大阪府内で産婦人科医療に従事するほぼすべての医師1300人余りで組織される団体で、今年1月に法人化され一般社団法人大阪産婦人科医会となりました。産婦人科医師が安心して医療に専念できる環境を整え、産婦人科診療を通じて地域社会に貢献できるよう、新しい知識や技術の習得を目的とした会員に向けた研修、緊急時対応の教育、院内安全の確保、訴訟や医療事故への対応など、広い範囲で活動を行っています。緊急時には患者さんを診療所から高度専門的な医療を提供できる周産期センターに転院搬送するコーディネーター的な役割も担うほか、診療報酬制度や助成制度、健康保険、社会保険に関連するさまざまな情報を提供し、中学校や高校に産婦人科医師が出向いて性教育の教室を実施するといった取り組みも行っています。

産婦人科医師の過酷な勤務状況は、今日では周知の事実となってきていますね。

特に病院の勤務医は、長時間の連続勤務や過重負担の過酷な勤務環境に立たされています。私が勤務医だった頃も、一晩で3、4人のお産を受け持ち、当直明けでそのまま外来診療するのは当たり前でした。しかしそれでは当然、安全面で問題がありますし、産婦人科を志願する若い先生が減っていき、マンパワー不足はますます深刻化してしまいます。最近耳にする働き方改革ですが、産婦人科こそ状況の改善が急務で、大阪産婦人科医会でも今いるドクターの勤務環境の改善を図り、多くの医師に情報提供するなどの取り組みを進めています。また産婦人科はお産と手術があり、外科と内科の両方の知識が求められるやりがいのある科なので、若い医師と現役の先生との交流の機会をつくり、その魅力を伝えていくようにしています。激務であることを承知で、患者さんのためになるならと手を上げてくれる先生も、少しずつですが増えているんですよ。

具体的には、産婦人科の勤務医はどれほどの激務に追われているのでしょう。

志村研太郎院長 志村ウィメンズクリニック4

大学病院から住友病院に移り15年間勤務した中で、研修医制度の改革によって、究極な産婦人科医師不足に陥ったことが一時期ありました。4、5人体制で診療していたのが2人になり、週3日の当直がある勤務体制が3、4ヵ月続きました。その頃、勤務医の勤務実態を取り上げたドキュメンタリー番組では、1日の仕事に密着する企画も取り上げられていましたね。ただ、産婦人科医師が過酷なのは、長時間勤務だけではありません。産婦人科はお母さんと赤ちゃんを救う科であり、命を救えなかった時の悔しさや精神的ショックは相当大きなものです。会員の理事がモデルとなり、実話をもとに作られた産婦人科を題材にしたドラマがあるのですが、それを見るといつも涙が出ます。感動の涙ではなくて、似たようなことを本当に経験してきたので、つらかったことや苦しかったことが頭に蘇るのです。

仕事を続けながら不妊治療や出産できる社会へ

女性を取り巻く今の社会の現状、その中で婦人科医療に求められる課題についてどのようにお考えですか?

志村研太郎院長 志村ウィメンズクリニック5

政府は女性にもっと働いてもらい、労働力になってほしいという一方で、子どもをたくさん産んでくださいと呼びかけるなど、女性に無理難題を提示しているわけですが、その理想に少しでも近づくには産婦人科医療の充実はもちろん、女性が仕事を続けながら不妊症治療や妊娠、出産、育児が安心してできる環境にしていく必要があります。妊娠に導くだけの不妊症治療ではなく、その人の生活や仕事の時間を確保しながら治療を進めることが求められ、体外受精となれば高額な費用がかかりますので、助成ももっと拡充されるべきだと思います。仕事をしながら出産や育児を迎える女性を、社会全体が応援していかなければ、日本の少子化は改善しないですから。

読者に向けてメッセージをお願いします。

子宮頸がん予防ワクチンは、その有害性がマスコミで指摘されてから、厚生労働省も積極的な接種勧奨を差し控えるようになり、ワクチン接種率は著しく低下しています。先進国のほとんどは接種率がほぼ100%あり、国によっては女の子を病気に感染させないために、男の子もワクチン接種しているといいます。それに比べて日本では、高額なワクチンを公費で受けられるのに接種率が極めて悪く、本当にもったいないと思います。ワクチンの副作用ばかりが注目されていますが、子宮頸がんの怖さを中学生、高校生の娘さんを持つお母さん方にもっと知ってもらい、初めての性交渉を経験する前に予防接種を受けるよう伝えてほしいと思っています。

今後の展望をお聞かせください。

志村研太郎院長 志村ウィメンズクリニック6

私は24歳で産婦人科医師になり、そろそろ44年になろうかというところですが、50年は続けて産婦人科の仕事を全うしたいと考えています。今後も実践していきたいのは、産婦人科のほぼ全領域にわたって、女性の体を一生サポートしていく診療、つまり「産婦人科のかかりつけ医」です。クリニック以外の場所でも、大阪産婦人科医会の役目を果たしていきながら、社会に貢献できる産婦人科医療をめざしていきたいですね。

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