木田 肇 院長の独自取材記事
木田クリニック
(橿原市/耳成駅)
最終更新日:2026/10/14
近鉄大阪線の耳成駅から徒歩15分、古い街並みと新興住宅が混在する閑静な住宅街に「木田クリニック」はある。アイボリーのブリックタイルが上品な外観で、院内は温かみのある照明と中庭を望む落ち着いた空間が広がる。院長の木田肇先生は、京都大学医学部附属病院や天理よろづ相談所病院で内視鏡治療の専門性を磨いた消化器内科のドクターだ。胃がんの内視鏡治療を数多く手がけてきた木田院長が、2015年にこの地で開業したのは「患者さん一人ひとりの背景まで含めて診るのが本来の医療ではないか」という思いからだ。飾らない言葉で穏やかに語る姿が印象的な木田院長に、全人的医療への信念や専門分野の強み、地域医療にかける思いを聞いた。
(取材日2026年8月27日)
専門を極めた先に見えた、その人の背景まで診る医療
初めに、開業に至るまでの経緯をお聞かせください。

もともと内視鏡を使った胃がんの治療を専門にしていました。早期の胃がんを内視鏡で切除する技術が急速に進歩した時代で、私も病院の診療部門を軌道に乗せるところまでやり遂げることができました。ただ、専門的な治療を続けるうちに、小さな病巣を追求するだけではなく、患者さん一人ひとりの背景や家族構成まで含めて診ることが本来の医療ではないかと考えるようになりました。大きな病院ではどうしても1人につき数分で終わるような診療になりがちでした。もっとゆっくり、その人その人に向き合う医療に取り組みたいという思いが募り、生まれ育ったこの地で2015年に開業しました。父は産婦人科の勤務医でしたので継承ではなく、自分自身の決断です。内視鏡の検査や治療に特化するのではなく、内科として体全体を診るクリニックをめざしました。
消化器内科の道に進まれたのは、どのような理由からですか?
1991年に大阪医科大学(現・大阪医科薬科大学)を卒業し、京都大学医学部附属病院での内科研修を経て、静岡県立総合病院で3年余り内科全般を幅広く学びました。専門を決める際には循環器内科と迷いましたが、当時急速に進歩していた内視鏡治療に将来性と魅力を感じ、消化器内科の道を選びました。京都大学に戻ってからは、全国的にも早期に設立された光学医療診療部(現・内視鏡部)に所属し、内視鏡の専門性を深めています。その後、天理よろづ相談所病院の消化器内科で長く勤務し、内視鏡治療の技術向上と症例の積み重ねに力を注ぎました。開業後もしばらくは非常勤として、内視鏡治療の指導にもあたりました。現在は日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、日本肝臓学会肝臓専門医の資格を持ち、日々の診療に生かしています。
クリニックの周辺環境や、来院される患者さんについて教えてください。

私自身もここで生まれ育ちましたので、幼なじみや同級生、そのご家族とも顔なじみで、何代にもわたって家族ぐるみで通ってくださるご家庭もあります。患者さんの年齢層は100歳以上の方から小学生のお子さんまで幅広く、天理よろづ相談所病院時代から通ってくださる方や、県内の遠方、三重県など県外からいらっしゃる方もいます。診療は風邪や高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病、消化器疾患から健康診断、予防接種まで内科全般に対応しています。小児科ではないため乳幼児は基本的にお断りしていますが、ご家族を診て把握しているご家庭のお子さんについては、できるだけ対応するようにしています。また、通院ができなくなった高齢の患者さんに対しては訪問診療や往診も適宜行っています。
専門治療と負担の少ない経鼻内視鏡
消化器内科の専門家として、特に力を入れている分野を教えてください。

まず、経鼻内視鏡検査です。消化器内視鏡専門医としてこれまで数多くの内視鏡検査・治療を経験してきました。患者さんにはできるだけ苦痛が少なく正確な診断を心がけています。次に胃がんと関連の深いピロリ菌の除菌治療です。また、肝臓専門医としてB型・C型肝炎の治療にも対応しています。患者数は減少傾向にあるものの、治療を行える施設が少なくなっているため、紹介で来院される方がいます。消化器のことで気になる症状があれば、まずは入り口として相談していただければと思います。当院での継続的な治療が難しい場合でも、適切な道筋をつけることはできますので。
内視鏡検査で大切にされていることはありますか?
当院では、ほぼすべての患者さんに鼻から挿入する経鼻内視鏡検査を行っています。口からの検査は基本的にお勧めしていません。私自身も経口の内視鏡を受けた経験がありますが、つらかったのです。鼻からであれば嘔吐反射が少なく、検査中に会話もできるので、患者さんの安心感がまるで違うと思います。余裕のある方とは話をしながら進めることもできます。また、鎮静剤、いわゆる眠るための麻酔は使わない方針を取っています。麻酔にはそれ自体のリスクがありますし、ぼんやりした状態で帰宅されるのも心配ですから。薬は鼻の局所麻酔など最小限にとどめ、身体的な負担やリスクを抑えた検査を心がけています。
大きな病院との連携についてはどのようにお考えですか?

現在は大学病院や近隣の提携病院との連携を密にしています。当院で対応できる範囲はもちろん診ますが、難しいケースは早く紹介しないと手遅れになってしまう場合もあります。緊急性はあるのか、今すぐ紹介すべきなのか。そうした見極めや適切な判断も、医師の実力ではないでしょうか。長年の臨床経験の中で培ってきたものを、日々の診療に生かしています。また、提携病院での治療を終えた患者さんが戻ってこられた際のフォローアップも大切にしています。紹介して終わりではなく、その後もしっかり経過を見ていく。そうした双方向のつながりが、地域医療に欠かせないと思っています。
不安があれば気軽に相談を。検診で自分の身を守って
患者さんとの関わり方で工夫されていることはありますか?

大事にしているのは、患者さんのお顔をしっかり見て、お話をよく聞くことです。こちらからはできるだけわかりやすい言葉で病状を説明することを心がけています。またカルテにはお仕事や家族構成など、病気以外の背景も記載して把握するようにしています。通院を重ねるとその方の人となりがわかってきますから、定期通院の患者さんとは半分が雑談になることもあるんです。趣味の話で盛り上がったり、ご家族の近況を聞いたりしながら、自然と信頼関係が深まっていきます。すると患者さんのほうから「ちょっと相談したいことがある」と切り出してくださるようになる。ご家族の介護のことなど、診療と直接関係のない相談にも乗ります。かかりつけ医というよりは、なんでも相談員のような面があるのではないでしょうか。それがクリニックの大切な役割だと思っています。
今後の展望についてお聞きします。
開業して10年以上がたち、クリニックとしてはある程度安定した時期に入りました。今後は5年ほどの区切りを意識しながら、その時点での体力や周囲の状況に応じて方向性を柔軟に考えていこうと思っています。新しいことを次々に広げていくというよりも、現在取り組んでいる診療の質を少しずつブラッシュアップしていくほうが大切ではないでしょうか。医療は日々進歩していますから、時代に即した治療を提供し続けるためには、知識や技術を常に更新していく姿勢が欠かせません。学びを怠らず、節目ごとに自分の診療をしっかりと見つめ直しながら、この地域の患者さんに安心して通い続けていただけるクリニックであるよう、地道に積み重ねていきたいと考えています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

病院は敷居が高いと感じている方も多いと思います。でも、どんな軽いことでも構いませんので、心配なことがあれば気軽に相談していただきたいです。ほかの医療機関での治療にちょっと納得がいかないという場合も、セカンドオピニオンに関するご相談も歓迎します。消化器内科や内視鏡のこと、ピロリ菌の除菌、肝臓疾患など、私の専門分野については特にお力になれると思いますので、遠慮なく声をかけてください。そしてもう一つ、ぜひお伝えしたいのが検診の大切さです。胃がんや大腸がん、肺がん、乳がん、子宮がんなど、がんで命を落とす方はいまだに多くいらっしゃいます。自分の身を守れるのは自分だけです。推奨される年代になったら、定期的に検診を受けていただきたいと思っています。

