腎臓病患者のライフライン
「人工透析」について
相模大野内科・腎クリニック
(相模原市南区/相模大野駅)
最終更新日:2021/10/12


- 保険診療
腎臓は、血液をろ過して体内で不要になった水分や物質を尿として排出する、体を正常な状態に保つために欠かせない臓器だ。近年、生活習慣の乱れや食の欧米化などにより社会的問題となっているのがメタボリックシンドロームだが、メタボリックシンドロームの症状である高血圧や高血糖、脂質異常などは腎臓の働きを低下させる要因にもなるという。現在、腎臓病の治療の一つである「人工透析」を受けている患者は日本で30万人以上にものぼり、腎臓病は新たな国民病ともいわれている。そこで、透析医療の黎明期から携わってきたエキスパートである「相模大野内科・腎クリニック」の鎌田貢壽院長に、人工透析の基礎知識から治療中に気をつけるポイント、治療への理想的な取り組み方まで詳しく解説してもらった。
(取材日2016年3月18日)
目次
薬や技術の進歩により、透析患者の生命予後は良好に。こまめに対応してくれるクリニックを選ぶことも重要
- Qそもそも、人工透析とはどのような治療なのでしょう?
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A
▲駅チカの好立地で長く続く治療にも「通いやすい」と好評
腎臓の機能が低下した状態である「腎不全」になり、腎機能が5%以下になってしまうと、自分の腎臓では命を支えていくことが難しくなります。そのとき、何らかの腎臓に代わるものが必要になりますが、代替する方法は、透析療法(=人工透析)と腎移植の2つ。透析療法には、血液透析と腹膜透析の2種類があります。血液透析とは、血液を体外循環させ、血液中の不要な老廃物や過剰な水分をダイアライザーと呼ばれる透析器を使って取り除き浄化する治療法。腹膜透析とは、腹膜という内臓を覆っている薄い膜を利用して血液を浄化する方法です。また、透析患者さんの中には、腎臓の病気のみを抱えた方と糖尿病などの全身性疾患を抱えた方がいます。
- Q血液透析療法の流れや費用について教えてください。
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A
▲院内は広く、更衣室やロッカーなどもしっかりと完備されている
血液透析を行うには、「内シャント」が不可欠。内シャントとは、血液透析を行う際に十分な血液量が確保できるよう、前腕の動脈と静脈を体外でつなぎ合わせて、体内に戻したものを指します。腎機能がだいたい6~7%になったら、そろそろ内シャントをつくっておく必要があるでしょう。腎臓のろ過機能の指標となる血清クレアチニン(筋肉に含まれるタンパク質の老廃物)の数値や、個々の患者さんの状態を診て、治療の開始時期を決めていきます。実際の治療は、週3回、1回4時間が標準で、大柄の方などは必要に応じて5時間行うことも。費用は、特定疾病療養受療証や身体障害者手帳の取得手続きを行えば、自己負担額も軽減されますよ。
- Q患者が治療中に気をつけるべきポイントはありますか?
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A
▲患者のプライベートにも配慮されたゆったりとした空間
人工透析と並行して実践しなければならないのが、食事療法。タンパク質を摂りすぎると、腎臓からしか排泄されない尿素窒素やクレアチニンなどが増え、体の負担になるためタンパク制限がかかります。また、尿素窒素を体内で有効利用するためにエネルギー(カロリー)をしっかり摂る必要があります。そして、腎臓が悪くなるとナトリウム(塩分)の排泄機能が落ちるので、塩分制限がかかります。現在、日本人の塩分摂取量は1日平均11~12gで、透析中は6~8g程度をめざしますが、慣れてしまえばそれほど苦ではないはず。治療開始と同時に医師がしっかり指導し、患者さんご自身に食事内容をよく理解していただくことが肝心です。
- Q「相模大野内科・腎クリニック」における人工透析の特長とは?
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A
▲院内には使用する水や設備への院長のこだわりが光る
私は人工透析の黎明期である1976年からこの分野に携わってきました。初期は、心不全で亡くなる患者さんや貧血がひどくて日常生活もままならないような方も多くいらっしゃいましたが、今は薬や機器の進歩により、丁寧にこまめに対処すれば透析患者さんでも良好な状態をつくることのできる時代です。当クリニックでは、透析器内を流れる透析液に超高純度の水を使用しているほか、全自動透析システムを装備し、透析の準備も浄化した血液を体に戻すのもすべて自動で行っています。こうした透析液の品質確保や設備の充実に加え、患者さんが治療に対して前向きに取り組めるような雰囲気づくりを大切にしている点が、特長といえると思います。
- Q具体的には、どのような雰囲気づくりをなさっているのでしょう?
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A
▲「通いやすく続けやすい治療を心がけている」と院長
私はいつも患者さんに「お風呂屋さんに来るようなつもりで人工透析を受けに来てください」と言っているんです。気楽に来ていただき、一定時間を過ごし、その間に医師や看護師に体調のことやご要望などをお話ししてもらって、さっと帰り、日常生活に戻ると。そんな雰囲気をゴールにしたいと考えています。人工透析を「治療」というより「生活の一部」と捉え、前向きな気持ちで来ていただきたいんですね。それを実現するには、医療者一人ひとりが努力を欠かさず、常に患者さんをよく診て、ちょっとした訴えによく耳を傾け、訴えの理由を発見すること、こまめに対応することが一番大切。ですから、私は患者さんとの関係性をとても大事にしています。