都野 晋一 院長の独自取材記事
きらく内科クリニック
(墨田区/両国駅)
最終更新日:2025/07/04

都営大江戸線・両国駅から好アクセスな「きらく内科クリニック」。木材をふんだんに使った、温かみのある優しい雰囲気の待合室や、リクライニングシートが並ぶ処置室などには、訪れた患者に身も心も楽になってもらいたいという都野晋一(つの・しんいち)院長の思いが詰まっている。専門的な消化器内科診療に加え、子どもから高齢者まで幅広く対応する総合的な内科診療により、地域のかかりつけ医として家族全員の健康を支えることをめざしている。「自分のことは自分でできる元気な80代をめざして、健康寿命を延ばして、寝たきりにならないようにサポートしていきたいと思います」と気さくに語る都野院長に、同院のことや診療にかける思いを聞いた。
(取材日2025年3月28日)
患者には来て良かったと喜んで、楽になってもらいたい
こちらではどのような診療を行っていますか?

当院では、一般内科と小児科を扱っています。そして私の専門である消化器内科の診療、肝臓を含めた消化器の専門的な治療にも、もちろん力を入れています。開業当初から私が一番したかったのは、自分が病気になった経験やこれまでの診療で得られた経験を生かした地域医療です。開業前は慢性期病院の院長をしていたのですが、生活習慣病が原因で脳卒中や心不全、腎不全となって体が不自由になり、寝たきりになってしまった患者さん、がんになってしまった患者さんをたくさん診てきました。ですから、そうはならずに、自分のことは自分でできる元気な80代をめざして、健康寿命を延ばして、寝たきりにならないようにサポートしていきたいと思ったのです。そのためには地域に密着して、お子さんから高齢の方まで家族全員の生活も診ることができるかかりつけ医として、内科を総合的に診療しながら、自分の専門性も生かしてやっていきたいと考えていました。
最近ではどのような患者さんが訪れていますか?
お子さんから高齢の方まで、幅広い世代の患者さんに来ていただいています。40~50代の働き盛りで、健康診断の結果から高血圧症や脂質異常症、肝臓疾患の治療のためにいらっしゃる方も多いですね。また、ここ数年は糖尿病の患者さんと、花粉症やアレルギーでお困りの患者さんがたいへん多くなっている印象です。駅に近いということもありますから、急性腹症や胆石発作、膵炎など、緊急性の高い疾患で急に来院される方もいます。
院名の「きらく」という名前には、どのような思いが込められているのですか?

クリニックの名前はひらがなにしてありますが、これを漢字で書くと「喜楽」です。訪れていただいた患者さんに「来て良かったと喜んでいただきたい」「身も心も楽になってほしい」という思いから名づけました。これは「心がリラックスできる環境が、体の治癒にもつながっていく」という当院が大切にしている考え方でもあります。病気は「病の気」と書くように、気持ちが元気でなければ体の元気も保たれないでしょう。気は目に見えないものですが、これまで続けてきた診療と自分自身が患者になった経験から、私はその存在を身近に感じるようになりました。当院では、患者さんが心地良くいられる環境を第一に考え、スタッフとも協力しながら空間づくりに努めています。
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患と糖尿病の治療に注力
力を入れている治療について教えてください。

一つは専門である肝臓疾患です。肝臓疾患に対する医療は、例えばC型肝炎は薬で治療できるようになるなど進歩してきました。その一方で、お酒をあまり飲まないのに脂肪肝となってしまう「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」、その存在に気づかない間に進行して肝炎や肝硬変、中には肝臓がんになってしまうこともある「代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)」の患者さんが徐々に多くなってきています。これらの診断や治療は難しいのですが、診断に関しては最近、超音波検査などで脂肪化や、線維化という肝臓の硬さの程度がわかるなど、だいぶ進歩してきています。生活習慣病や内臓脂肪型肥満とも強い関係があるのでしっかりと診断し、投薬による治療に加え生活習慣の中の問題点を見つけ出して指導をすることで、肝臓病が悪化しないようにすることにも力を入れています。当院でも新しいエコー機器を導入して病状把握・説明・治療に役立てています。
若い人でも、肝臓疾患には注意が必要だそうですね。
実はMASLDは、20代から30代後半の若い方に多い傾向にあります。お酒を飲まなくとも代謝異常による肥満がベースにあり、それが原因で肝疾患になってしまうんです。肝臓疾患は初期段階ではほとんど症状がなく、若いとなかなか治療の必要性を感じられないかもしれません。しかし、肝臓の線維化が進んだ人は、健康な人と比べて脳血管疾患や心臓疾患、発がんのリスクが高まることがわかっています。年を重ねてから後悔しないよう、早い段階から定期的に医師のチェックを受けることが大切です。そして女性の場合、生理痛の治療のために服用しているピルが原因で肝障害を起こす例もあり、男性と比べて免疫やホルモンの異常による肝障害も多いので気をつけなくてはなりません。
糖尿病の患者さんも多いと先ほど伺いました。

肝臓疾患を専門にやっていて、MASLDやMASHの患者さんを多く診ていると、それに合併している糖尿病を診る機会が必然的に多くなりました。健康診断で指摘されて来院される方もいますし、ほかの医療機関から紹介されてくる方もいます。当院では、血糖値の指標であるHbA1c(ヘモグロビンA1c)をその場ですぐ測定できる機器を導入しています。それをもとに患者さんとお話しして、治療方針を決めていくようにしています。今はインスリン以外にもGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬といった新しい薬が出てきて治療を進めやすくなりました。糖尿病のほかにも、最近は睡眠時無呼吸症候群で受診される方も増えていて、いらした患者さんには自宅でできる検査キットを貸し出しています。睡眠と代謝は大きく関わっているので、睡眠に問題があると痩せにくくなってしまうこともあるんです。
患者を自分の家族に置き換え、最適な治療の提案に尽力
患者さんと接する際、大切にしていることは何でしょうか?

とにかく患者さんやご家族の立場に立って考えることでしょうか。自分がそう言われたらどう思うだろうか、もし家族だったらどうするだろうか、と想像しながら、目の前の患者さんをどうにか良くしたいと思っています。生活習慣病は一時期数値などが良くても、また悪化することもあります。そういう時に「自分がそうであったらどうかな」などと考えながら、患者さんの気持ちに寄り添うようにしています。また、問診の際には今一番つらい症状が何か話を聞き、まずはその症状を少しでも緩和できるよう努めていますね。
お忙しい毎日かと思いますが、どのようにリフレッシュしていますか?
もともと両国国技館の近くに当院を構えたのは、相撲が好きだったからなんです。以前は観戦に行っていたのですが、最近は忙しくてなかなか行くのが難しいですね。力士の方を見かけることもあり、そうした時にはここで開業して良かったなと思います(笑)。野球も好きで、よくテレビや現地観戦をしています。あとは、もともとマラソンをやっていたので、健康のためにも時間ができたらまた走りたいなとは思っています。
最後に、今後の展望とメッセージをお願いします。

私は消化器・肝臓内科という専門がありますが、体のことで不安に思うことがあればまずは来院していただければと思います。どこの科にかかったら良いかもわからない時は、診察した上で専門の医療機関や適切な病院を紹介することもできると思いますので、アドバイスを受けるつもりでお気軽に来ていただければと思います。当院では苦痛の少ない経鼻の胃内視鏡検査を行っていますし、胃や大腸、肝臓といった消化器の専門的な治療に対応できます。また、いろいろな生活習慣病を合併した糖尿病患者さんが多く、対応に慣れているので、インスリンや各種内服薬で十分な治療も可能です。骨粗しょう症や睡眠時無呼吸症候群の検査も行っています。また、子どもの健診や予防接種では、インフルエンザ流行期などには院内感染を防ぐために午後の診察前に専用の時間を設けています。こちらもぜひご利用いただきたいですね。