気づきにくく潜在患者が多い
甲状腺の病気は専門家に
上野浅草通りクリニック
(台東区/上野駅)
最終更新日:2021/10/12
- 保険診療
甲状腺とは、喉仏にあるホルモンを分泌する器官だ。そのホルモンはわかりやすく表現すると「元気のもと」。代謝を活性化させる働きがあり、年代に関係なく分泌されているが、特に女性に甲状腺の不調が見られることが多いという。ホルモンがたくさん出過ぎたり、逆に少なくなったりということが主だ。医療機関を受診しても原因がわからず、症状が改善しないことに悩む人も少なくない。そこで、甲状腺の専門家でもある「上野浅草通りクリニック」の鴫原寿一(しぎはら・としかつ)院長に話を聞いた。
(取材日2019年6月27日)
目次
的確な診断が治療の鍵
- Q甲状腺とはどんな器官ですか? また、代表的な病気は?
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A
喉仏のすぐ下にある重さ10〜20gほどの器官で、全身の新陳代謝や成長の促進に関わるホルモンを分泌しています。わかりやすくいうと元気、やる気に関わるホルモンです。甲状腺の働きが異常になると、分泌されるホルモンの量が多過ぎたり、少な過ぎたりし、体に変調が起きます。形態学的な問題と機能的な問題があり、形態学的な面では腫れたり、腫瘤ができたりという形で現れます。機能的な面では、ホルモンが多く出過ぎることを甲状腺機能亢進症といい、代表的なのがバセドー病です。逆に少なくなる病気の代表が橋本病です。自己免疫疾患といって、ばい菌など外部からの侵入物に反応する免疫が、自分の体の組織を攻撃することから発症します。
- Q症状はどのように現れますか?
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A
代謝が活性化すると、痩せてくる、疲れやすい、心臓がドキドキする、汗が出るなどの症状が出ます。逆に足りなくなると、だるくなる、やる気が起きないという症状が出てきます。バセドー病では、眼球が突出する感じになったり、首が腫れたりすることもあります。汗をかくようになった、動悸が激しくなったということがあれば、ホルモンの亢進のせいではないかと疑ってみるべきです。珍しい病気ではありませんが、専門家のもとでしっかりと診断を受けて治療を始めることが重要です。ホルモン分泌が少なくなる橋本病では、倦怠感、眠気、便秘などの症状として現れることが多いです。
- Q診断についてお聞かせください。
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A
甲状腺の病気にかかっている人の割合は人口の10%ほどともいわれていますが、医療機関を受診している方は多くありません。罹患していても本人が気づいていない可能性が高いためです。残念ながら予防法はなく見つかりにくいため、的確な診断のもとで治療を始めることが大切です。検査には血液検査や超音波検査、穿刺吸引細胞診などがあります。甲状腺が腫れているかどうかを診るために触診もしますが、専門家でないとわかりにくいことがあります。動脈硬化を診るための頸動脈超音波検査で甲状腺の異常が発見される方もいます。甲状腺がんの恐れもありますが、甲状腺がんの多くは進行がゆっくりなので早期に発見さえできれば対応が可能です。
- Q穿刺吸引細胞診について詳しく教えてください。
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A
穿刺吸引細胞診は、甲状腺に2cm以上のできものがある場合、甲状腺がんが強く疑われる際に行われる検査です。方法としては、超音波ガイド下で頸部に針を刺し、細胞を採取して顕微鏡で良性・悪性の判断を行います。検査自体は5分ほどで終わり、トータルでも15分程度で終了します。採血と同じくらい細い針を使用するため、痛みは少なく、患者さんにとって負担の少ない検査といえるでしょう。穿刺吸引細胞診を実施している地域のクリニックはまだ少ないですが、当院では完全予約制で対応しています。遠くの大きな病院へ行かれるのは身体的にも時間的にも負担が少なくないと思いますので、甲状腺のできものでお悩みの方はご相談ください。
- Q甲状腺疾患には、どのような治療がありますか?
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A
バセドー病は一般的には飲み薬が第一選択で、次の選択肢として放射線を使うアイソトープ治療法や手術があります。また、鑑別しなければならない病気として無痛性甲状腺炎がありますが、これは一時的にホルモンが増えるだけなので、抗甲状腺薬の服用は必要ありません。この見極めはとても大事で、それぞれの治療法がまったく異なるため患者さんの負担に大きく関わります。バセドー病は早く見つけて治療できれば2、3年で回復に向かう方もいますが、そうでない場合は長期の服薬やアイソトープ治療、手術を考える必要があります。ホルモンが減った場合は不足分を飲み薬で補充し、血中のホルモン濃度を安定させ、体調の回復につなげます。