高血圧で病院に行く目安は?
放置せず症状が出る前に循環器内科へ
香里ヶ丘大谷ハートクリニック
(枚方市/枚方公園駅)
最終更新日:2024/01/18
- 保険診療
国民病ともいわれるほど、多くの人が悩む「高血圧」。さまざまな病気の要因となるため、健康診断で引っかかったら放置しないことが重要だ。一方で、「どれくらいの数値が、どの程度続いたら病院に行くべきなのか目安がよくわからない」という人もいるだろう。長年、循環器疾患の診療にあたり、高血圧に詳しい「香里ヶ丘大谷ハートクリニック」の大谷肇院長は、自宅で測る血圧の数値が、恒常的に135/85mmHgを超えていれば受診する必要があると話す。一人ひとりに合った薬の処方やアドバイスを受けるためにも、「専門家に相談してほしい」と呼びかける大谷院長に、高血圧を放置するリスクをはじめ、薬は一生飲む必要があるのかなど、誰もが知りたい基本的な情報について解説してもらった。
(取材日2023年12月27日)
目次
心臓血管疾患をはじめ、命に関わる病気を引き起こす高血圧。専門知識を持つ循環器内科の医師に相談を
- Q高血圧だと判明したら、どういった目安で病院に行くべきですか?
-
A
高血圧は健康診断で指摘されることが多い病態です。健診での高血圧の基準は、基本的に130/85mmHg以上ですが、この基準をうのみにしてはいけません。血圧は常に変動するからです。例えば、寒い所では上がり、風呂上がりなどで体が温まっていると下がります。また、精神状態や体調にも左右されます。瞬間的に血圧が基準の数値を超えても、心配はいらないでしょう。もし健診で高血圧を指摘されたら、まず自宅で何回か血圧を測ってみてください。いつ測っても135/85mmHgを超えていれば高血圧の可能性があります。特に、ご両親のいずれかが高血圧の方、肥満や糖尿病の方は、高血圧を専門とする医師に服薬が必要かご相談ください。
- Q高血圧はどの診療科に行けばいいのでしょうか?
-
A
高血圧が心配で一般内科を受診される方は多いでしょう。しかし、高血圧はどこの内科で診ても同じではないと考えています。本当は高血圧ではないのに漫然と薬を内服している方や、体質に合わない薬を処方されている方もいます。高血圧の背後にある心臓血管疾患が見逃されているケースもありますね。高血圧だと、心臓の中に血栓ができる心房細動という不整脈が起こりやすくなります。例えば、高血圧の治療を受けていたのに不整脈が原因の脳梗塞で突然半身不随になるということも起きかねません。心配な方は、高血圧に詳しい診療科である「循環器内科」の医師にぜひご相談ください。かかりつけの先生から紹介していただくのも良いと思います。
- Q高血圧になるとどういった症状が出るのでしょうか?
-
A
血圧が少々高くても症状が出ることはほぼありません。一般的に高血圧は徐々に体をむしばみ、健康寿命を縮める「サイレントキラー」です。血圧が180/100mmHgを超えると、頭痛、肩凝りや胸苦しさを覚えるようになります。そうした高い数値が続くと、心臓に負担がかかって心不全を発症することがあります。動悸、息切れや体のむくみが心不全のサインです。また、血液のろ過装置である腎臓は、高い圧がかかると壊れてしまいます。高血圧が原因の慢性腎臓病は非常に多いです。放置すれば腎不全に陥り、人工透析になりかねません。他にも、ストレスなどが原因で瞬間的に血圧が急上昇すると、大動脈が解離して突然死することがあります。
- Q高血圧と診断されたら一生薬を飲み続けなければいけないですか?
-
A
非常によくあるご質問です。はっきり申し上げて、誰もが血圧の薬を一生飲み続ける必要はありません。降圧薬には睡眠薬や便秘薬のような習慣性はないので、患者さんの体質が改善し、降圧薬を飲んだ状態で110/70mmHg程度になれば、薬を減量するか、中止することが可能です。生活習慣の改善によって降圧薬が必要なくなる患者さんはたくさんおられます。ただ、遺伝的素因のある方や、すでに血管が正常なやわらかさに戻らない状態にまで硬くなっていると、生涯にわたり降圧薬が必要なケースもあります。高血圧の治療は患者さん個々の病状に合うように進めなければいけません。長い目で見た「テーラーメイド医療」が必要なのです。
- Q最近では若い世代の高血圧の患者さんも増えているそうですね。
-
A
血圧は動脈硬化の進行に伴って高くなるので、高齢者ほど高血圧は増加します。また、肥満、糖尿病、脂質異常症や高血圧の遺伝的素因がある方は30代から高血圧になりやすいです。特に女性は更年期で血圧が急上昇することも多いですね。こういった高血圧は本態性高血圧と呼ばれ、最近は若い世代にも増えています。根本的な治療法は動脈硬化の予防です。一方、高血圧の約10%は動脈硬化と無関係に起こる二次性高血圧です。若い世代に発症する腎血管性高血圧は、腎動脈が狭くなり腎臓への血流が低下することでレニンという昇圧ホルモンが過剰に分泌される病気です。二次性高血圧は手術などで原因を取り除ければ降圧薬の必要はなくなるでしょう。