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田中 昌一郎 院長の独自取材記事

あい・ホームクリニック豊島

(豊島区/大塚駅)

最終更新日:2020/08/13

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豊島区エリアを中心に板橋区・北区・文京区・新宿区で訪問診療を専門に行っている「あい・ホームクリニック豊島」。院長の田中昌一郎先生は、長年、大学病院に勤務し、糖尿病や腎臓病、膠原病をはじめ、幅広い疾患を診療。患者や家族の生活全体を支えるべく、24時間体制で対応している。「身体的なことだけでなく、精神的な苦痛や社会的な苦痛にも目を向け、支える。それが私たちがめざすトータルケアです」と話す田中院長に、訪問診療を始めるに至った経緯や想い、クリニックのコンセプト、診療を行う上で大切にしていることなどを聞いた。
(取材日2020年7月20日)

通院できなくなった患者を最後までサポートしたい

訪問診療専門のクリニックを始めようと思った理由を教えてください。

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当院で訪問診療を開始する前は、大学病院や市中病院で糖尿病や腎臓病、リウマチなど膠原病の患者さんを中心に診療をしていました。多くの患者さんを診る中で気がかりだったのは、認知症の進行や足腰が弱くなることなどで通院ができなくなる患者さんたちの存在でした。そういった方々は自宅近くの医療機関に紹介していたのですが、近所であっても通院が難しい方々がいてたいへん困っておいででした。私はそのような通院困難な方々のケアに携わりたいと考えて、訪問診療のクリニックを始めようと決めました。病院へ通院できない方だけでなく、通院は継続できるものの胃ろうからの経管栄養管理や人工呼吸器管理などで在宅療養生活での負担が大きく、病院だけではケアが十分に行き届かない方にも当院をご利用いただいております。当院と通院先の病院とが連携することで、ご本人やご家族の負担が軽減でき、より安心して在宅療養をお過ごしいただいています。

訪問診療を利用されているのは、どのような患者さんですか?

現在、4歳から105歳まで幅広い年齢の患者さんに当院をご利用いただいています。患者さんの年齢の平均値は80歳を超えており、高齢者が中心です。基本的に疾患を問わず受け入れているので、認知症、がん末期、ALSやパーキンソン病などの神経難病、脳梗塞や脳出血といった脳血管障害、COPDなどの呼吸器疾患、腎不全、心不全、血液疾患などさまざまな種類の病気を診させていただいています。医療処置としては、輸血、人工呼吸器管理、腹水や胸水の穿刺排液、ポンプを用いた医療用麻薬の持続投与によるがん性疼痛管理、胃ろう・腸ろうなどからの経管栄養管理、胃ろうカテーテルの交換、気管カニューレ交換、在宅酸素療法、褥瘡管理など広く対応しています。また検査は、採血検査や尿・便検査に加えて、超音波検査、心電図検査、血液ガス分析、各種培養検査などを行っています。

24時間体制でサポートしていらっしゃるとか。

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はい。患者さんからの電話はいつでも受けつけています。今朝も早朝5時前に患者さんから電話がありました。がんを患っている方で、痛みが強くなってしまったようなのですが、まだ薬の使い方に慣れておらず、どうしたらいいかわからなくなったそうです。電話口で薬の使い方を指示し、後に往診したところ、痛みは落ち着かれていました。不測の事態では患者さんもパニックになってしまうと思いますが、そんな時はぜひ私たちを思い出して頼ってもらえたらと思っています。

患者の人生全体を支えていく

先生が掲げるトータルケアとは、どのようなものですか?

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一人の患者さんの全体を診るということです。例えば、がん末期における緩和ケアでは「全人的苦痛」という概念が重要になります。全人的苦痛には身体的苦痛、精神的苦痛、社会的苦痛、スピリチュアルペインといった4つの側面があり、これらは互いに関連し影響し合っています。このため苦痛を改善するためには、身体的な痛みだけでなく、精神的な苦痛や社会的な苦痛にも目を向けて対応する必要があります。私は、このような考え方はがん末期だけでなく訪問診療全般に当てはまると考えています。すなわち、医療的なことだけでなく、精神的にも社会的にも患者さんやご家族を支えていく。それがトータルケアと考えています。トータルケアは当院だけで成し遂げることは難しいです。このためケアマネジャー、訪問看護師、訪問介護士や訪問薬局といった他職種の方々と密に連携しながらトータルケアに努めています。

訪問診療を行う上でどんなことを心がけていますか?

私たちが最も大切にしていることは患者さんやご家族の意思や想いを尊重することです。お一人お一人異なる考え方や状況を理解し、その人らしい人生を過ごせるように努めています。2つ目に心がけているのは他職種の方々との連携です。より良い在宅療養を成立させるためには他職種の方々との連携や協力が不可欠です。必要に応じて看護や介護のサービスを導入することや、他職種の方々と情報交換を行うことで患者さんの「困った」を解決し生活を支えます。そして、3つ目に心がけているのはご家族のケアです。介護されている同居のご家族には自覚のないまま疲弊や過剰な負担が生じていることがあります。私たちは早期にご家族の「無理している」を見つけ出し、新たな介護サービスの導入、ショートステイや、介護者の休憩目的の入院であるレスパイト入院などを適宜ご利用いただくことでご家族に過剰な負担が生じないように常に気をつけています。

訪問診療を始めて良かったと感じることは?

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病院に勤務していた頃と比べ、より深く患者さんやそのご家族と関わることができるようになったことが最も良かったと感じます。各家庭には患者さんのお人柄が自然とにじみ出ており、自宅というご本人にとって安心できる環境で診察を行うためなのか、人生のいろいろなお話を伺う機会も多く、患者さんが自分の本当の家族や親戚のように感じられることが多くなりました。一人ひとりの異なるご希望やご家庭の状況に対応することは、医療行為とは直接関係のない苦労を伴うこともありますが、病気ではなく病に悩む「人」を診ていることが実感できる日々を過ごせることは医師として大きな喜びです。訪問診療を始めてから、病院勤務では決して得られなかった多くのことを学ばせていただいていると思います。

ご家族とのコミュニケーションも重要なところですね。

ご指摘のようにご家族とのコミュニケーションはたいへん重要です。患者さんの中には、医師や看護師に対しては遠慮して本当のことをお話しくださらない方もいらっしゃいます。しかしご家族の方は実際に苦しんでいる様子をご覧になっていますので、患者さんのいないところでお話を伺うことで診療に役立つ情報が得られる場合もあります。また、がん末期の患者さんの中にはご本人に詳しい病状が告知されていないことがあります。この場合、治療方針の多くはご家族と相談することになります。先に述べたように、ご家族の過剰負担を早期に発見するためにも、ご家族と密にコミュニケーションをとることは大切です。

患者や家族の想いに「寄り添う」ことが信条

医師をめざすようになったきっかけを教えてください。

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中学・高校時代、陸上競技の部活でケガのため病院にお世話になることが度々ありました。医師を志したのは、そういった経験に由来しています。医学部に入った時点では整形外科を志望していました。ただ実際に学んでいくうちに、全身を診られる医師になりたいと考えるようになり、内科を志すようになりました。先ほどお伝えしたように、勤務医時代は糖尿病の患者さんを多く診てきましたが、糖尿病は薬を出して終わりではなく、生活に多少なりとも介入して、食事や運動についての指導が必要となります。そういった経験が生活全体を見る訪問診療に役立っているように思います。

お忙しい毎日とは思いますが、ご趣味などはありますか?

365日24時間体制で対応していますので、遠出はできません。本を読むのが好きなので、新刊を手当たり次第に読んでいます。24時間、診療が中心となるため、なるべく視野が狭くならないように幅広いジャンルの本を読むように心がけています。

最後に、今後の展望をお願いいたします。

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患者さんやご家族の想いに「寄り添う」ことを信条に、在宅療養生活を過ごす方々をこれからも支えていきたいと思います。訪問診療ではケアマネジャー、訪問看護、訪問介護や訪問薬局などの他職種との連携が不可欠です。これらの方々と密に連携しながら質の高い医療を提供できるように日々努めてまいります。安心してご自宅でお過ごしいただけるように、医療の問題だけでなく、介護問題などさまざまな「困った」にも対処いたします。

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