中山 百合 院長の独自取材記事
砧ゆり眼科医院
(世田谷区/祖師ヶ谷大蔵駅)
最終更新日:2025/10/06
砧4丁目で眼科医療に約10年貢献した後、少し離れた砧3丁目に移転リニューアルした「砧ゆり眼科医院」。訪れる人の目を楽しませるヒーリングアートは一層明るく活気のある雰囲気に様変わりし、構造も誰もが受診しやすいものとなった。中山百合院長は子どもの気持ちになって考え、親の悩みも丁寧に受け止める心温かな医師。「ずっとこの仕事を続けたい」という思いが芽生えた小児眼科を中心に、幅広い年齢の患者と日々向き合っている。そんな院長に新たな医院の特徴や診療内容、今読者に伝えたいことなどを聞いた。
(取材日2024年5月29日/情報更新日2025年9月30日)
安心して通いやすく、見て探す楽しみもある医院へ
リニューアルを経て変わったところを教えてください。

場所はほとんど変わっていませんが、立地は良くなり、現在はバス停の近くの世田谷通り沿いで診療しています。また、私がかつて勤務していた国立成育医療研究センターが目の前にあるため、午前は国立成育医療研究センターを受診し午後は当院にいらっしゃる方や、国立成育医療研究センターに勤務する患者さんにとっても便利になったのではないでしょうか。構造的な変化としては、車いすや電動カートも乗れるエレベーターを備えた医療ビルに移転したことで、完全バリアフリーになりました。今まで受診を諦めていた方も含め、より幅広い患者さんが足を運びやすくなったと思います。
前の医院の時からヒーリングアートにこだわりがあったそうですが、新しい医院にもありますか?
はい、以前は信州のアルプスの山々や植物がメインモチーフでしたが、今回のコンセプトは元気な動物がいる森。当院のロゴマークにも使われているうさぎをはじめ、サルや猫、モグラなどいろいろな動物がいますので、ぜひ探しに来てください。そして探すためには目を使う必要があります。ちょっとおこがましいかもしれませんが、ヒーリングアートには「見て探してわかる目のありがたみ」を伝え、「見えている楽しさ」を共有したいというメッセージも込めているんです。見ていて「かわいい」「好き」などと感情が動くものがあれば会話のきっかけにもなりますので、お子さんも大人の方も楽しんでいただければ幸いです。
改めて、診療方針や目標を伺います。

変わらず、基本に忠実な治療を行ってまいります。国立成育医療研究センターとの連携も一層強化し、患者さんが安心して経過観察を受けられる医院にしたいですね。というのも、勤務医時代、近所に小児眼科に詳しい眼科の開業医が少なく、地域に戻れないという患者さんの悩みをよく耳にしたからです。そうした経験から、患者さんが何をフォローしてほしいかを私なりに理解し、状況に応じて柔軟な対応を心がけています。一方で長くしっかり治療を続けるには、患者さんに病状や治療の意味を理解してもらった上で取り組むことが不可欠だと感じます。だからこそ、当院が患者さんの抱える疑問や不安を解消できる場所になれたらいいですね。引き続き、「小児眼科の一丁目一番地」である斜視・弱視治療に注力するとともに、子どもの近視にも注目しています。子どもの近視が増えている今、経済的・身体的な負担に配慮した方法で、進行の抑制をめざすのがモットーです。
情報をうのみにせず、まずは専門家に相談を
力を入れていることの一つである、近視抑制についてお聞かせください。

近視抑制には、太陽光に1日2時間当たるのが良いとされています。コロナ禍では家に閉じこもり、オンライン学習をしたり長時間ゲームをしたりする期間が続きました。その結果、世界的に近視の子どもが増加し、今の小児眼科界のトピックにもなっています。現代の生活を考えると、近視自体に激しく落ち込む必要はないと思います。それよりも、情報に振り回されて過剰に危機感を持つご家庭が増えていることが心配です。見聞きした対策をやみくもに始め、疲労し、結局何をすべきかわからなくなっている親御さんと向き合い、お気持ちを受け止めながらその子にとってより良い提案をしたいですね。そのためには、親御さんの努力が半減しないよう、家庭状況や近視のレベル、ご自宅で無理なくサポートできる範囲なども踏まえて適切なアドバイスに努めています。
保護者はどんなことを意識すると良いでしょうか?
親御さんが日々ふれている情報は、正しく理解し受け止められる量をはるかに超えています。子どもに対して「目が良くなってほしい」「健全に発達してほしい」と願うからこそ、目の前の情報をうのみにしてしまうのだと思いますが、そんな時は一度、医療機関にご相談ください。当院でなくても構いませんので、ぜひそこでご自身が見聞きした情報が医学的根拠のあるものかを確認することが非常に大切です。対策を始めたものの結果が伴わず、お子さんを追い詰める事態に陥らないためにも、慎重にご検討いただきたく思います。
子どもの眼科診療ならではの特徴はありますか?

子どもは大人と違い、まず椅子に座るまでが一苦労です。他にも診療室に泣きながら入ってきたり、前を向いていられなかったりと、その目を見せてもらうだけでもコミュニケーションの難しさがあります。そうした場面において役立ったのが、自分の子育て経験でした。今はもう大きくなりましたが、幼児の頃は医療機関の中に入るだけでも大変で、本当に苦労しましたね。それだけに、医療機関では子どもは基本的に泣いて嫌がるものだと思っていますので、保護者の方はどうか不安に感じないで来ていただきたいです。
先生が感じる小児眼科のやりがいを教えてください。
一人ひとりの個性や発達を理解し、スタッフとともにお子さんと親御さんを励ましながら治療を行っていくことですね。また、重い病気を抱えた子を献身的にサポートする親御さんの姿を見ていると、同じ母親として畏敬の念を覚えるとともに、襟を正すといいますか、「もっと私も眼科医として頑張らないと!」という気持ちになります。小児眼科の診療にはこうした場面があることが、大人との違いかもしれません。最近は、昔治療した子が大きくなり、進学の報告をしてくれることもあります。患者さんの成長過程を見守れるのはうれしいですし、「この子の目の中に自分のした仕事があるはず」と思えるのも魅力です。
子どもは伸び伸び、親は不安を口に出せる空間を大切に
大人の診療で取り組んでいるものはありますか?

緑内障の早期発見と治療です。働き世代は忙しく自分のことを後回しにしがちなので、今まで検診結果を見て見ぬふりをしていたけれど、ようやく受診に踏みきった時には進行していたという方も多いんです。緑内障に痛みやかゆみなどはありませんが、症状の進行により失ってしまった視野は取り戻せません。早期発見が大切ですので、ご自身やお子さん、家族のためにも受診の時間をつくっていただければと思います。検査をして異常がなかった場合はそれはそれで良いことですし、定期的に受けてはっきりさせるのも大切ですよ。
高齢の患者さんに対してはいかがでしょうか?
移転により通院の利便性が向上し、白内障の手術を躊躇していた方が踏みきるケースが増えています。現代の白内障手術の時間は15分ほどで、健康的なシニアライフを送るには「よく見えること」が前提条件と考えられています。また手術のタイミングも単に年齢で決まるわけではなく、若年層の白内障も含め、見えにくくなったら手術をするのがスタンダード。ただしその中で近視や遠視の程度、ライフスタイルなどによって診断が変わるため、当院ではヒアリングをした上で適した時期をお伝えしています。そして手術を受ける場合は患者さんのご自宅の近くで手術を行える医療機関を紹介するとともに、当院で術後の経過観察も承っていますので、お悩みの場合はご相談ください。
今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。

待ち時間の削減やより充実した急患対応のため、将来は二診制にする予定です。特にお子さんは、風邪などで診療が先延ばしになることも少なくありません。診療室はもう1部屋用意してありますので、院内のDX化も進めながら快適な診療体制を整えていきます。あとは、お子さんに「子どものための場所」と感じてもらい、伸び伸びと過ごせるような眼科でありたいですね。また親御さんにとっても相談しやすい医院をめざしており、「これは目の病気なのか、子どものキャラクターなのかわからない」といったお悩みにも応じています。不安は新たな不安の種となりますので、お悩みを解決して笑顔で帰っていただけるのが一番です。些細なことでもお話しいただければ、私やスタッフがしっかりと受け止めますよ。

