中野 崇 院長の独自取材記事
豊橋キッズデンタルクリニック
(豊橋市/豊橋駅)
最終更新日:2025/10/23
豊橋市向山町の高台にある「豊橋キッズデンタルクリニック」は、県立商業高校や向山緑地に囲まれた奥まった一角、複合施設・向山フォレスタ内にある。施設の2階には診療室があり、1階では親子で参加できるオープンスクールを実施。まるで保育園のようなカラフルで楽し気な内装には、大人でもワクワクさせられる。院長の中野崇(たかし)先生は、大学の非常勤講師として活動もあり、明確でわかりやすい説明に努めている。一方で子どもたちには先生というより友達のように接する物腰やわらかな歯科医師だ。「口から始まる健康増進」をモットーとする中野院長に、注力する口腔機能発達をはじめとした小児歯科医療について話を聞いた。
(取材日2025年1月15日/情報更新日2025年10月17日)
歯科を通して社会の健康増進へ寄与したい
楽しそうな歯科医院ですね。どうしてこの場所に開業されたのですか?

当院は小児歯科専門なので、初めての歯科医院が楽しい場所になってほしいという思いで、カラフルな内装にしました。私の実家はここから歩いて15分くらいの場所にあり、父が一般歯科の歯科医院を開業しています。父は82歳ですが、週に2回ほど当院にも手伝いに来てくれるんですよ。親子で地元地域の歯科医療に携わることができて幸せです。2014年の開業時のコンセプトは、0歳から通えるような環境の歯科医院をつくり、教育や健康増進を中心にしながら、患者さん親子の歯に対する知識を高めること。2階で小児歯科診療をまず始め、1階で教育と健康増進のできるオープンスクールを開始しました。ゆくゆくは地域に向けた公衆衛生的な活動もしていきたいというのが、今の目標です。
教育や健康増進が診療の柱となったきっかけは?
大学病院では15年間、研究・臨床・教育を行ってきたのですが、患者さんと接する中で、症状とそれに関連するあらゆる原因についてお話をすると、「そうなんですね!」と驚かれることが多くて。もともと私は「歯科を通して社会の健康増進に寄与したい」という思いがあったので、そのためには開業して、一般の方が健康になるための知識を伝えていきたいと開業を決意しました。開業後も常に勉強の日々を送っていますが、そこが楽しいです。社会が求める医療や新しい医療に敏感になり、臨床に生かしていくスタンスが大切と考えています。スタッフ全員が健康増進という柱のもと診療に取り組み、また、口腔内環境と生活環境の関わりやその大切さについて情報をお伝えしながら患者さんをサポートしています。
先生は0歳から小児歯科へ通うことを推奨されているのですね。

「歯が生えてから」と思われる方も多いでしょうが、ミルクや母乳を飲むなど、人は生まれてすぐから口を使うわけで、その時点で歯科医師がお伝えするべきことはあります。定期的に通ってもらうためには、歯科医師を通じ、どれだけ患者さんが「気づき」を得られるかが大切。そのために私は、「今、口の中がどうなっているか」「その状態が続くと、将来どうなってしまうか」「リスクを減らすためにやること」という、「現状・長期予測・短期目標」の3つをセットでお話しするように心がけています。「将来悪くならないために、今どうすべきか」ということを親御さんにご理解いただけると、自律的に通ってくださると思い、注力しています。
0歳~3歳児だからこそできる口腔機能発達のサポート
患者さんの相談や悩みにはどのようなものがありますか?

お子さんについての心配事で一番多いのが、「食べる」に関するものです。そのため、食べる・飲む・表情をつくる・呼吸する・会話するなどさまざまな口の機能に関する習慣や悩みに対するサポートを行っています。例えば、好き嫌いが多い、口に詰め込みすぎる、時間がかかる、ベチャベチャ食べるなどですね。その場合はお弁当を持ってきてもらい、食べているところを見させてもらいます。ビデオで撮影しながら、噛みちぎりができるか、ひと口の量は多くないか、食具の選び方、食べるときの姿勢などあらゆる面をチェックしてアドバイスをしていくのです。他にも、指しゃぶりをやめられない、卒乳ができない、よだれが止まらないなど、皆さんさまざまな悩みを抱えていますので、お母さんとの会話の中で困り事を察し、ヒントを探ったりしながら診療を進めています。
口腔機能の発達に注目されているのですね。
2018年に認められたばかりなので、あまり聞きなじみがないかと思いますが、「口腔機能発達不全症」という病名があり、食べる・飲み込む・話す・鼻で呼吸するという口腔機能が十分に発達していない状態を指します。治療法としては、口腔筋機能療法(MFT)をしたり、生活上の良くない習慣を修正したりするなど。当院では、この治療に特化してオープンスクールの施設を1階に設けました。0歳から3歳児が親子で参加し、楽しく学び、体験ができる場所です。指しゃぶりや口呼吸などの習慣は、簡単に修正できるものではなく、親子で地道に取り組む必要があり、親御さんがまずその癖にできるだけ早い時期に気づくことが大切。歯科衛生士、管理栄養士、保育士が中心となって、気づきやトレーニングのお手伝いをし、さまざまなアドバイスをしています。
オープンスクールではどんなことをしているのですか?

週に2回開催し、0歳~1歳、2~3歳のクラスに分け、それぞれ6組までのグループ参加で、10分の講和とアクティビティーを体験します。例えば、0歳から3歳児の摂食嚥下機能は、噛みちぎり、適切なひと口量の調整ができて、一定回数の咀嚼ができるというのが目標です。それと併せて、食事のペースづくりやコップ飲み、連続飲みができるようになっていきますが、口唇閉鎖ができなかったり舌の動かし方がぎこちなかったりすると、正しく飲んだり食べたりができず、口腔機能の発達に影響が出てしまうのです。きゅうりをいろいろな切り方で食べてもらって、どの切り方が食べやすいかを見たり、実際に幼児におにぎりを握らせるなど、さまざまな体験を通して、正しい発達をサポートしています。0歳から3歳という時期だからこそできる教育や支援なのです。
食べる、飲むについで姿勢の問題にも取り組む
矯正の分野にも積極的に取り組んでいらっしゃいますね。どんな相談が多いですか?

前歯が生えそろう7歳児の5人に4人の割合で不正咬合が増えています。鼻が詰まっているために口がいつも開いていて、それによって口の筋肉のバランスが崩れて歯並びが悪くなるというパターンが一番多いですね。確かに歯並びが悪いので形態を整えるために矯正が必要なのですが、大人の歯に生え替わっていく過程で原因を突き止めて根本的な部分に対処することが実は重要なのです。私は、お子さんはいつも鼻詰まりがあるか、睡眠時にいびきをかいていないかなどを確認して、必要があれば耳鼻咽喉科や呼吸器内科を紹介しています。アレルギーや睡眠時の無呼吸などが疑われることを紹介状に書いて検査をしてもらうことで、不正咬合の要因に対処しています。
今後、力を入れていきたいことはありますか?
食べる、飲むなど口腔機能の発達の悩みの次に多いのが、姿勢についての悩み。勉強中に椅子に座っている時の姿勢やスマホを見ている時の姿勢などは、お口の機能にも影響があります。そのため今後は、この関連性についてもっと勉強していきたいと思っています。正しい姿勢へ導く手段として遊びや運動などがあると思いますが、要因や原因を考えながら椅子の選び方や道具の使い方など細かくアプローチができればと思っています。スタッフと一緒に勉強して新しい情報を提供していきたいですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

生活を整え口腔内環境を改善に導くことが、全身の健康へつながる場合があるということの重要性を知ってほしいですね。例えば歯科医院では歯磨き指導をよく行いますが、本来ならば汚れを取るのではなく「汚さないこと」が一番。炭水化物中心の食事だと歯は汚れやすく、野菜もバランス良く取れば汚れにくいのですが、「うちの子は野菜が苦手なんです」という場合には、その対処法をご提案しています。また、せっかく来院していただくならば、その際はぜひ質問してください。日頃から気になることや世の中で販売されている便利なグッズについての相談など、何でもいいんです。「こんな情報が欲しかった」というニーズに応えられるよう日々、勉強に努め、お子さんのお口のことで疑問や悩みがあった時に気軽に相談できる小児歯科をめざしていきます。
自由診療費用の目安
自由診療とは矯正治療/約16万5千円~ ※治療内容により変動あり

