春田 博之 院長の独自取材記事
芦屋こころとからだのクリニック
(芦屋市/芦屋駅)
最終更新日:2024/12/17

子どもから大人までさまざまな悩みに対応する「芦屋こころとからだのクリニック」。多くの人が通いやすいようにと選んだのが、JR神戸線・芦屋駅から徒歩5分の場所だ。春田博之院長が自身の感覚を頼りに学びを深めた漢方の理論をもとに、丁寧に診療にあたっている。診療内容は内科・小児科・脳神経内科のほか、アレルギー疾患、睡眠時無呼吸症候群、不登校や発達などに課題を抱える子どもの相談にも応じている。漢方の処方を主軸としているほか、子どもに対しては、「色」の印象で症状や心の状態を表現してもらうという試みも行っている。春田院長に、これまでの道のりや同院の診療の特徴について話を聞いた。
(取材日2024年11月27日)
自身の体の不調をきっかけに出会った漢方医学
まずは、開業されるまでの経緯からお聞かせください。

近畿大学医学部を卒業後、神戸市立中央市民病院を経て、近畿大学医学部大学院で博士号を取得しました。その後、馬場記念病院の神経内科医長を務めた後、内科医だった父からクリニックを継承し、大阪で開業しました。ただ、周辺環境の変化が大きく、自分自身が体調を崩してしまったんです。当時は西洋医学を主体にしていたので、いろいろな薬を飲んでみたのですが、悪化する一方で……。その時に漢方と出会ったのです。おおまかな処方を考えたら香りをかいで量を決めるというように、自分の体で感じながら漢方の処方を学んでいった経験が、今の診療に大きく生かされています。
大阪から現在の場所に来られた理由は何だったのでしょうか?
大阪のクリニックは、立地的に説明にとても苦労する場所にありました。もっと多くの方を診療していきたいという意欲が湧いてきたので、わかりやすく来てもらいやすい場所でなければと思ったんです。芦屋駅から徒歩5分と言えば全国レベルで伝わると考えたのが、この場所で開業を決めた理由です。とはいえ、選球眼の優れた地元の人たちに選んでもらうには、なかなか大変でした。ちょうどSNSが流行しだした頃だったので、SNSや動画共有サイトで発信を続けていくうちに遠方の方が来ていただけるようになり、最近になって地元の方にも知っていただけるように。高齢の患者さんもいますが、20~50代の女性と不登校のお子さんの相談が増えてきました。開業から10年でようやく炭火が赤くなってきたところですね。
診療の中では漢方をどのように活用されているのでしょうか。

最近は、抗精神病薬を飲みたくないという相談が多く、カウンセリングや認知行動療法なども取り入れながら、漢方薬でアシストする方法を提案しています。また、西洋医学をいろいろと試したけれど症状を繰り返しているという方には、漢方の理論を用いて根本の原因を探ります。お子さんにも漢方を使いますが、大人と違い余力がない分、抗生剤などを併用せざるを得ない場面もあります。せっかく現代に生きているので、西洋医学と漢方の“いいとこ取り”ができればと考えています。
言葉では伝えきれない思いを「色」で伝える
色彩と心理の関係に着目し、患者さんとのコミュニケーションに活用されているとか。

例えば、不登校のお子さんには、当院では「こころの地図」と呼んでいる、色の明度と彩度でグループ分けされたオリジナルの「トーン図」を使っています。家にいるときや学校にいるとき、授業中、休み時間と場面を変えて色を選んでもらうんです。心が重いときや体調が悪いときに選びがちな色を「休み時間」に挙げたときは友人関係に、反対に「家にいるとき」となれば両親がけんかしているのを見ているのがつらいなど、言語化するのが難しい感情や心の内を色を使って表現してもらうんです。人に伝えるだけでなく、客観的に自分の位置を知ることができるというメリットもあるのではないかと思っています。共通認識が持ちやすいことも、色を使うメリットですね。
色彩と心のつながりに着目したきっかけは何だったのでしょう。
自分の体調がとても悪かった時、あることに気づいたんです。さっきまで「青という色はすごくいいな」と思っていたのに、5分後には「もう青は見たくない、次は緑がいい」と感じたことがあって、その気持ちの変化をとても不思議に思いました。だんだん体も回復してきたところで、心と色彩の関連性について調べてみようと思ったのが始まりです。
院内にたくさん飾られている絵も、何か関係があるのでしょうか?

院内の絵は、すべて私が描いたものです。実は、本当は芸術系の大学に進学したかったのですが、厳しい父親に言われるがまま医師になりました。今の色彩を患者さんとのコミュニケーションに用いるスタイルは、自分が進みたかった芸術の道とも通ずるところがあると思っています。飾っている絵にも私の心境が表れているのですが、当院で行っている色彩を使ったコミュニケーションでも、同じように子どもたちの心の移り変わりを見ることができると考えています。
心と体は表裏一体。全身を診る医療を実践
お子さんと接する中で大切にされている思いをお聞かせください。

私自身、小学生の時に頭を強打した影響なのか、漢字が浮き出て見えるという症状に長年悩まされてきました。本を読むのが苦痛で、医学部の勉強をする時はどれだけつらかったか。周囲にはわかってもらえない、悩みを伝えようがないという経験をしてきたからこそ、当院に来る子どもたちに寄り添いたいと思っています。色を用いて気持ちを表現することで自分を客観視できるようになれば、人間関係のトラブルやすれ違いを減らせるヒントになるかもしれません。クリニックに来られた患者さんだけでなく、今後さらに社会に向けて発信していければと考えています。
今後の展望やさらなる目標などを教えてください。
漢方の理論も、色彩と心理の関係性についても、患者さんと接することが私自身の学びにつながり、新たな発見がエネルギーにもなっています。知れば知るほど無駄が省かれシンプルになっていくところも面白いとも感じています。まだまだ道半ばですし、あと10年続ければまた診療方法も大きく変わっていくだろうと思います。医師になる前は、芸術の道を志していた私が、今は医療に携わり、色彩を通じて患者さんの心を見つめています。心と体、西洋医学と東洋医学、一見ジャンルの異なる世界ではありますがうまく融合させながら、今後もさらなる探究を続けていきたいですね。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

クリニック名につけたように、心と体は表裏一体。お互いに影響し合っているので、どちらからもアプローチしながら、全身を診ることが大切だと考えています。視点を変えてみると、意外に簡単な理由が隠れていることもあるんです。いろいろ試したけれどなかなか解決しないということがあれば、ぜひ当院にご相談ください。