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倉田 篤 院長の独自取材記事

熊谷医院

(川崎市川崎区/小田栄駅)

最終更新日:2026/08/07

倉田篤院長 熊谷医院 main

川崎区小田の住宅街で、100年近く地域住民の健康を見守ってきた「熊谷医院」。2026年1月に閉院した同院が、同年5月に新「熊谷医院」として開業した。院長を務めるのは、大和成和病院の心臓外科執刀医として現場に立ち続け、病院長として循環器専門病院への改革をけん引してきた倉田篤先生だ。義父、妻、義兄が診療を行っていた「熊谷医院」で非常勤の医師として勤務した経験もあり、病院での手術につなげたこともある。一度は閉院となった「熊谷医院」をなぜ引き継ごうと決めたのか、また新たな「熊谷医院」の診療内容や体制について、倉田院長に話を聞いた。

(取材日2026年7月2日)

義父、妻、義兄の思いを引き継ぐ、新「熊谷医院」

最初に「熊谷医院」の歴史を教えてください。

倉田篤院長 熊谷医院1

戦時中の診療所の頃までさかのぼると始まりは定かでないほどです。戦後に義父が2代目として「熊谷医院」を継ぎ、その後義父の病気を契機に、次女である妻が医院を継ぎました。妻が循環器内科医で、後に義兄が加わったことで、「熊谷医院」は内科、耳鼻科、小児科で診療を開始しました。

ご親族で地域医療を支えてこられたのですね。一度閉院したと聞いています。

2026年1月に一度閉院いたしました。義父の後を妻と義兄が力を合わせて支えてきたのですが、2023年に妻が逝去し、2025年に義兄が病気で亡くなりました。「熊谷医院」は医療法人として存続が困難になり、さまざまな方法を模索しましたが、医療法人は2026年1月に解散することになりました。

先生は、なぜ「熊谷医院」を引き継ごうと決意されたのですか?

倉田篤院長 熊谷医院2

私は心臓血管外科医として大和成和病院で院長を務めておりました。妻と義兄が長く営んできた熊谷医院がなくなるという事実を目の当たりにし、かなりの葛藤があったのですが、「今、自分に何ができるだろう……」と考え、「熊谷医院」を継承することとなりました。

未病を早期に見つけて適切な治療につなぐ

先生の専門である循環器疾患について、どのような診療をしていきたいとお考えですか?

倉田篤院長 熊谷医院3

私は2000年頃より、執刀医として冠動脈バイパス手術や僧帽弁形成術に数多く携わってきました。生命に関わる循環器疾患を早期に発見するためには、未病の段階から丁寧に診療を行う診療所の役割の大切さを強く感じておりました。循環器疾患の治療に至るまでには段階があり、その入り口となるのは生活習慣病の予防と適切な療養です。診療所の機能としては、まだ「病気」と言えない「未病」の段階から対処することで、将来の病気の予防につなげることです。実際に、糖尿病や高血圧の患者さんの中には、心臓弁膜症の兆候が見られたり、心不全を発症したり、また腎臓に影響が出ている方も多い印象です。一度手術を受けた方に関しても、その後の再発を予防することが重要ですね。「心臓血管外科」と聞くとあまりなじみがないかもしれませんが、その大本をたどると、このような生活習慣病の管理から予防や治療が始まるのです。

病診連携についてもお聞かせください。

当院の近くには、川崎市立川崎病院、川崎幸病院、済生会横浜市東部病院、日本鋼管病院、AOI国際病院など、循環器内科や心臓血管外科に力を入れている病院があります。川崎に暮らす方々をきちんと専門的な循環器診療におつなぎすること。それが私の使命だと考えています。

以前と同じく内科や小児科にも対応されていますか?

倉田篤院長 熊谷医院4

はい。私も内科や小児科を診ていますし、週に何日かは日本小児科学会小児科専門医の診療日も設けています。この辺りには小学校がいくつもあり、夕方になると学校帰りのお子さんが多くいらっしゃいますね。大人も子どもも、発熱のある方は一般の待合室を通らない動線となっていますのでご安心ください。また、集中治療室や呼吸器外科での診療経験を生かし、アレルギー疾患の治療にも力を入れていきたいと考えています。実は私も幼少期より喘息の症状がありまして、妻が私の主治医だったんですよ。また、当院は川崎市の特定健診や乳幼児健診、各種ワクチンにも対応しています。

「先生、来てくれてありがとう」その言葉が原動力

約4ヵ月ぶりにこの場所での診療再開となりましたが、どのような方が通われていますか?

倉田篤院長 熊谷医院5

多くが以前「熊谷医院」に通われていた患者さんです。先日、患者さんから「先生、来てくれてありがとう」というお言葉を頂き、とてもうれしくありがたく、開業時の苦労が吹き飛ぶようでした。このエリアでいかに「熊谷医院」が頼りにされてきたのかを実感するとともに、義父、妻、義兄が築いてきた地域との信頼関係をしっかりと引き継がねばと身が引き締まる思いです。

スタッフの皆さんについてもご紹介ください。

義父や義兄の代から勤務するベテランぞろいで、患者さんの持病や家族構成についてもよく理解しています。今回の改装で、それまでひと続きになっていた診療室や処置室が、現代の基準にのっとって壁で区切られました。かつてのように院内全体を見渡せなくなったのですが、それをカバーすべく、スタッフたちがこまめな声がけなどスムーズな情報伝達のために工夫してくれています。改装前との違いに戸惑う患者さんがいればさっと寄り添い、患者さんもまた数ヵ月ぶりに顔なじみのスタッフに会って「あなたも、いてくださったのね」とホッと笑顔になられたりもするんですよ。

以前のカルテはそのまま残っているのですか?

倉田篤院長 熊谷医院6

以前のカルテは、管理義務の観点から患者さんにお知らせした上で私が保管しており、この先は電子カルテに移行していきます。患者さん側も、私が以前の症状まで把握していることを期待されていますし、既往歴や常用薬を知ることは適切な診断にも役立ちます。かつてのカルテに自分の字を見つけたりすることも。4ヵ月ほどの間は空きましたが、ここからまた「熊谷医院」が患者さんの人生に寄り添っていくのだと思うと感慨深いですね。

最後に、地域の方々へのメッセージをお願いします。

循環器疾患に携わる医師として前向きに突っ走り、時代の変化も目の当たりにしながら、たたき上げで知識や技術を習得してきました。周りの仲間や義兄に助けられ、妻とともに病気に向き合った数年間も貴重な時間だったと感じています。義父、妻、義兄の意志をつなぐため、人生最後のチャレンジと思って開業を決意したものの、まだまだ不安でいっぱいです。患者さんから頂く温かな言葉が、今の私の原動力となっています。この場所で力を尽くし、豊かな町づくりの一端を担っていければ本望です。