小林 経宏 院長の独自取材記事
小林医院
(大阪市鶴見区/今福鶴見駅)
最終更新日:2025/09/25

今福鶴見駅から鶴見通りを5分ほど歩くと、すっきりとしたきれいな外観が特徴の「小林医院」がある。待合室は広めのスペースが取られており、吹き抜けもあって開放的で心地良い。「ここに来る患者さんすべてを診たい」と語るのは小林経宏院長。専門は消化器外科だが、同院では一般的な内科・外科の診察が可能だ。さらに、手術が必要な場合には適切な医療機関を紹介し、手術後の経過観察や訪問診療も行っている。落ち着いた語り口や表情で近づきやすい雰囲気の小林先生。その背後にあるのは、患者の負担を少しでも和らげたいという、患者に対する愛情があるのだろう。今回は、医師をめざした経緯やこれまでの経験についてインタビューした。
(取材日2018年8月20日)
病気の祖父の付き添いによって医療の素晴らしさを知る
先生が医師をめざされたきっかけは何ですか?

祖父を通して医療とのつながりがあったからです。私は小さい頃、とても祖父にかわいがってもらっていました。そんな祖父も高齢になり、私が小学校の頃は入退院を繰り返していたんです。私も入院に何度も付き添い、そこで先生方の対応で祖父が安心したり、感謝したりしている場面を何度も見ました。そんな経験から、医師という仕事が人に感謝されるやりがいのある仕事だと感じ、自分も同じ道を歩みたいと思うようになったんです。私は医師の中でもジェネラリスト、つまり全身を診られる医師を目標としてきました。消化器外科では、一週間の半分が手術、もう半分は外来を担当するというように外科と内科を全般的に扱います。そういう環境が、自分の医師としての幅を広げることにつながったと思います。
この場所を開業の地として選ばれたのはどうしてですか?
鶴見は私が生まれ育ち、慣れ親しんだ場所です。自分が開業するならこの地域でやりたいとずっと思っていたので、ここで2011年に開業しました。当院は広い敷地ですが、これは内視鏡やCTなどの大きな医療機器を導入したかったので、それなりの広さの場所を選びました。当院を訪れる患者さんの症状はさまざまです。胃が痛い人もいれば、頭が痛い人もいる。そんな患者さんをできるだけすべて診てあげたいという思いでやっています。私の専門は消化器全般ですが、整形外科的なことにも一通り対応できます。消化器の検査としては、胃や大腸の内視鏡があります。最近導入したのは大腸のCTで、これなら内視鏡検査で痛みが出る人も負担が少ないです。検査時間も短くなるので患者さんにも喜ばれていますよ。
貴院では内科・外科全般を診察可能ということでしょうか。

そうですね。私は身近な病気を全般的に診るホームドクターでありたいと願っています。患者さんにとって、診療科が細分化されているのは病院へ行くのをためらう原因になるかもしれません。体調が悪くてもどこに行ったら良いのかわからないという声をお聞きすることもあります。それを相談できるのがホームドクターです。医療の案内役という意味合いもあり、当院で内科外科の一般的な治療ができるのはもちろんのこと、専門的な検査や治療が必要な方には適切な医療機関を紹介する役目もあります。最近はテレビやインターネットで医療に関する情報を気軽に得ることができます。ただ、それが患者さんの不安をあおってしまう場合もあるんです。なので、その方にとって何が大事なのか、適切なアドバイスを与える場として当院を活用していただければと思います。
救命救急センターでの勤務や留学で医療の幅を広げる
貴院では訪問診療も行っておられますね。

当院では、末期がんの患者さんも診ています。痛みもあるし、食事も制限されて苦しい状況です。そんな患者さんは、病院のベッドよりも自宅の慣れ親しんだ環境のほうが負担も少ないと思います。ご家族の協力が不可欠ですが、それまでの生活スタイルをできるだけ維持しながら療養できるように私たちがサポートしています。好きな食べ物を食べたり、好きな時間に寝て好きなテレビを見たり。そんな自由があるのは自宅ならではです。当院では、訪問診療でも点滴や高カロリー輸液を使い、できるだけ病院と変わらない医療を提供できるように努めています。
以前、救命救急センターや海外への留学も経験されているとお聞きしました。
救急病院では、当直の医師が一人しかいない状況も度々ありました。それでも救急車に乗って患者さんがどんどん病院に運ばれてきます。おなかが痛いという症状から脳卒中、心筋梗塞のような緊急な症状までさまざま。そんな中では自分は消化器の専門だからなんていう言い訳は通用しません。目の前にいる患者さんを助けるという決意で治療に専念し、そんな環境が私の治療の幅を広げてくれたように感じます。留学は、カナダのアルバータ大学に3年半ほど行ってきました。そこは研究目的だったので臨床は経験していません。当時の私は膵臓の細胞を移植するという研究を行っており、その分野で注目されている施設がアルバータ州にあったんですね。それで教授の勧めに応じて留学しました。
留学先で外国の医療を経験して感じたことはありますか?

海外の医療制度を見ていると、日本の医療制度が本当に優れていると痛感します。特に国民健康保険の有無ですね。北米では、体調が悪くて病院に行くと、まずどんな保険に入っているのかを聞かれます。そして、その保険でカバーできる治療しか行ってくれません。例えば胃がんが見つかったとしても、手術が保険対応外だと薬しか出してくれない場合もあり得ます。なので医療格差が起こるんです。日本では、検査や診断をして、どんな治療が適しているかのアドバイスを受けられます。国民健康保険があるので、患者さんの金銭面での負担も少なく手術ができます。この制度が優れているということは、海外の医療を経験したからこそ気づけるのかもしれません。
医療の最初と最後を担う医院として活用してほしい
今後さらに力を入れていきたい分野は何ですか?

当院では2本柱で今後も患者さんのためになる医療を提供していきたいと考えています。1本目は、何だかわからないけど調子が悪いという患者さんが、適切な医療を受けられるための窓口となることです。病院で勤務していた頃は、開業医の先生方が症状を診断し、手術が必要な患者さんを判断して私のもとへ紹介してくださっていました。今は私がその役割を担っています。病気を発見して、当院で治療可能なのかどうかを診断する。専門性の高い症状なら適切な治療が受けられる医療機関を紹介する。この部分を徹底したいですね。患者さんが当院を訪れるということは、それだけ信頼してくださっているからだと思います。その信頼に応えていきたいと考えています。
もう1つの柱は何でしょうか?
大きな病院で手術を受けた場合、その後の経過観察やサポートは当院が担当します。中には末期がんを患っており、完治が難しい患者さんもいます。そんな場合は、いかに快適な環境で病気と向き合えるかが重要になってきます。そのために当院で行っているのが訪問診療です。患者さんの要望を聞き、好きな物を食べたり、やりたいことをやれる環境を整えたりできるように、当院としてもサポートしていきたいと思います。一人ひとり違う要望や希望に沿った形で丁寧に対応していきたいですね。
最後に地域の皆さんへのメッセージをお願いします。

近年は病院の診療科が細分化されているので、体調に不安があってもどこの病院に行けばよいかわからないという方も多いと思います。当院では、そんな患者さんの不安を解消できるようにアドバイスしています。いわば旅行代理店のようなものだと考えてください。どこかへ旅行したいけれど、具体的なプランが決まらない場合は旅行代理店で相談しますよね。そんな感覚で当院へ足を運んでいただければ、その方にふさわしい医療をこちらから提案します。当院でできることは当院で治療し、必要があれば専門病院に紹介します。テレビやインターネットの情報は、患者さん一人ひとりにぴったりと合っていない場合もあります。その患者さんの状況で的確な診断ができるのは実際に診察や検査を行う医師だけなので、お気軽にご相談ください。