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倉田眞行 所長の独自取材記事

川崎医療生活協同組合 京町診療所

(川崎市川崎区/川崎駅)

最終更新日:2021/10/12

倉田眞行所長 川崎医療生活協同組合 京町診療所 main

川崎市川崎区にある「川崎医療生活協同組合 京町診療所」。近隣には新旧問わず多くの住宅があるが、人口に比して医院が少ないことから周辺住民に切望されて1998年に開業した診療所である。内科、小児科、整形外科があり、家族ぐるみで3世代にわたり来院している患者もいるという。今回取材に応じてくれたのは、内科を担当する倉田眞行所長。診療所の母体である川崎協同病院に勤務していた時代から、数多くの喘息患者を診察してきた経験を持つベテランドクターである。現在は内科の外来診察と平行して訪問診療もおこなっており、多忙な毎日を送っている倉田先生。患者だけでなく、すべての周辺住民に対する健康を気遣う、誠実な思いをお聞きすることができた。

(取材日2015年4月22日)

プライマリケアができる、患者に身近な診療所でありたい

こちらの診療所は、どういった患者さんが多いのでしょうか?

倉田眞行所長 川崎医療生活協同組合 京町診療所1

年齢層は幅広いですね。開業時から来院されている方が多いので、ご高齢の患者さんも多いですが、小児科もありますから小さなお子さんも来ます。ご家族ぐるみ3世代で通院されている患者さんもいらっしゃいます。この周辺には古くからの開業医院もあるのですが、先生たちも高齢になって引退している方もいます。そこに通っていた方がここに来ているという現状もありますので、患者さんの数はかなり多いと思います。ですから患者さんの症状はさまざまですが、エリアの傾向として、喘息の患者さんが多いことが上げられます。川崎公害の被害により慢性喘息になった方は、60代から90代までいらっしゃいますから、やはり傾向としては高齢者の方が多いかもしれませんね。

一時期に比べれば、排気ガスなど公害に由来した喘息は減っているのではありませんか?

確かに公害に対する規制が非常に厳しくなっているので、排気ガスや工場の廃棄物による喘息は減っているかもしれません。また、喘息の治療自体も非常によくなっていて、昔のように人工呼吸器を使わなければいけない人はずいぶん減っていると感じています。けれども喘息の患者さんが減っているわけではありません。その理由の一つは、タイヤで削られた道路の粉塵によって引き起こされる喘息の患者さんが増えていること。産業道路を見ると、トラックの轍だらけということも少なくありません。これも公害の1つで、残念ながらこの周辺の地域病とも言えるでしょう。風邪のような症状であっても、実は喘息だったという患者さんも、少なくないんですよ。

患者さんを診るときは、どのようなことを心がけていらっしゃいますか?

倉田眞行所長 川崎医療生活協同組合 京町診療所2

どんな患者さんでも必ず診察をするようにしています。最近は聴診器を持たない若い医師が少なくないんです。でも私は薬をもらいに来ただけの患者さんでも、脈をとったり、触診をしたりと、患者さんと触れあうようにしています。これは非常に大事で、人は触ることで心が安らぎ、安心感からいろんなことをしゃべってくれます。モニターや検査のデータだけを見て、病気の説明をしてもだめなのです。顔を見て、触れて、「こういう病気なんですよ」って言うと、「なるほど、そうですか」と納得してくれる。そして検査だけではわからない細かな症状を話してくれる。その会話から、危険な兆候があったらすぐに大きな病院で検査をしてもらうように手配することができますし、重症化する危険性のある病気を未然に防ぐこともできる。私たちにできることは限られていますが、大きな病院で治療する必要があれば、できるだけ早く入院させるなり、病院へ送るといった措置をとる必要があります。プライマリケアができる診療所として患者さんの身近にいることが、私たちの役割です。ですから私は、診察を重視しているんです。

地域に密着し、患者と家族に寄り添う医療を提供したい

こちらでは訪問診療にも力を入れていらっしゃるそうですね。

倉田眞行所長 川崎医療生活協同組合 京町診療所3

母体である協同病院を中心に、3つの診療所が連携して訪問診療が必要な患者さんをケアしています。もともとは協同病院に入院していた患者さんや、そのご家族が「最後は自宅で」と希望されていて、そういう人たちのためにはじめた取り組みでした。ここでは高齢者だけでなく、少数ですが末期のがん患者さんも診ています。どういうふうに死期を迎えさせてあげればいいのかということを、当診療所の医師、看護師はもちろん、訪問介護ステーションや訪問支援センターのスタッフ全員で考えています。その人にとって、あるいはその家族にとって、1番いい最後を迎えてほしい。地域の診療所として、地域の皆さんのために心のケアもしていきたいと考えているのです。この取り組みは開業時からずっと続けていることですし、地域には高齢者も増えているので、今後も取り組んでいくつもりです。将来的に、訪問診療を考えている方のご相談もお受けしています。

先生はどのような経緯で、医師を志したのでしょうか。

実は私は教員をめざしていて、普通の大学で教育心理学を専攻していたんです。ところがいろいろと学ぶうちに、今の教育システムに疑問を持ってしまったんですね。このまま教員になることはできないと。それでも、何か人の役に立ちたいと思っていて、その選択肢の1つが医師だったので、医学部に入学して一から勉強をしました。以前は心理学を専攻していたこともあり、心療内科医になりたかったのです。心療内科は内科の一部なので、内科の知識をきちんと持った上で、不調の原因を探らなければならない。そこでまず、内科医として経験を積みました。その後川崎協同病院に勤務することになったのですが、呼吸器科の患者が非常に多かったんです。その頃から、喘息をはじめとした呼吸器の患者さんを多数診るようになり、現在に至っています。

エリアの特徴として、喘息の患者さんが多いと先ほどもおっしゃっていましたね。

倉田眞行所長 川崎医療生活協同組合 京町診療所4

当時は本当に、想像を絶する忙しさでした。その頃、このあたりには呼吸器科の医院があまりなかったんです。その頃すでに大きな問題になっていた公害病の患者さんを診ていたのは、協同病院の医師が中心だったと思います。ですから呼吸器科の患者さん、特に喘息の重症患者が非常に多かったんです。外来の待合室で倒れてしまう人や、心肺が停止してしまって、救急室に搬送して人工呼吸器を付けなければいけない人もいました。まるで救命救急センターのような状況になってしまうこともあったんです。今から思えば、その頃本当に医師としての自覚を持ったのだと思います。自分が一生懸命やらなければ、不幸な目にあう人がいるという、責任を痛感した時代でした。

3回きちんと食事ができる生活サイクルが元気の秘訣

どのようなときに、医師としてのやりがいを感じますか。

倉田眞行所長 川崎医療生活協同組合 京町診療所5

地域の皆さんが、笑顔で普通に日常生活を送れることが、何よりもうれしいですし、やりがいでもあります。ここは町の診療所ですから、特別なことや難しいことをするわけではありません。自分の持っているすべての知識を出し切って治療する。そして助かれば、それで満足です。協同病院にいた頃のことですが、ぜんそくの発作を起こした19歳の男の子がいました。大きな発作で、かなり危険な状態だったので、つきっきりで治療をしました。結果的には無事退院したんですが、私には一言もあいさつがなかったんです。若い看護師たちには、あいさつしていったんですけどね(笑)。でもそれで良い、それが普通なんです。私たちは人を助けることが使命であって、「ありがとうございます」と言われるためにやっているわけじゃない。患者さんから感謝の言葉なんてなくてもいい。ただ元気でいてくれればいいんです。どこか別の病院に送って入院していた患者さんと、町ですれ違うこともあります。そんなとき「先生、元気でいますよ」と、声をかけてもらうだけで十分なんです。

お忙しい毎日だと思いますが、休日などはどのように過ごされているのでしょう。

ツーリングが趣味なので、1人でオートバイに乗って出かけることですかね。以前は思いついたらふらりと伊豆に行って、海鮮寿司を食べて帰ってくるというようなこともしていたのですが(笑)、今は通勤でオートバイを使っていることもあり、頻繁にツーリングに行くことはなくなりました。それでも、年に1度はオートバイで旅行をしますね。行き先は、たいてい北陸です。地元の居酒屋でおいしいものを食べて、ゆっくりしてきます。それが心と体のリフレッシュですね。高校時代にアメリカンフットボールをしていたので、若い頃は運動もしていましたけれど、今は忙しいので、休日はできるだけ体を休めるようにしています(笑)。

では最後に、読者へのメッセージをお願いします。

倉田眞行所長 川崎医療生活協同組合 京町診療所6

患者さんにいつも言っていることですが、医師として思っているのは「元気でいてください」、それだけです。そのためには、まず食事。お年を召された方には、必ず「きちんと3度食べてください。それが健康の秘訣だよ」と言います。年をとると、朝と昼の食事が一緒になってしまって、2食の人も多いんです。それは、朝起きるのが遅いからです。ですから「朝早く起きて朝食をきちんと食べる。それから散歩でも何でもいいから、少し体を動かして、お昼も、夕飯もちゃんと食べるように」ってね。別に自分で作らなくてもいいんです。何しろ3回きちんと食べなさいと。3回食べるためには、朝は早く起きて、夜は早く寝なければいけない。きちんとした生活サイクルを作らなければならないんです。そうすれば元気に、健康な毎日を送ることができるんです。これはお年寄りに限ったことではありません。若い方でもそうです。ともかく元気でいてください、それが私がいつも思っていることです。

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