柴崎 泰延 院長、菅 桃子 先生の独自取材記事
しばさきクリニック
(大阪市鶴見区/横堤駅)
最終更新日:2024/12/05

大阪メトロ長堀鶴見緑地線・横堤駅より徒歩5分ほどの場所にある「しばさきクリニック」。地元での開業をめざし、大学病院などで研鑚を積んできた柴崎泰延院長が2007年に開業、2013年に現在の場所に移転した。日本循環器学会循環器専門医である柴崎院長の診療に、日本腎臓学会腎臓専門医の菅桃子(かん・ももこ)先生が加わったことで、見落としのない精度の高い治療を追究しながら、地域の健康を支えている。これまでの経験や診療で大切にしていること、今後の展望などを柴崎院長と菅先生に聞いた。
(取材日2024年10月31日)
事故防止や快適な空間づくりにこだわった透析室
まずは、これまでのご経歴を教えてください。

【柴崎院長】関西医科大学を卒業後、同大学付属病院の第二内科学講座に入局。医師を志した時から、いわゆる「町のかかりつけ医」をイメージし開業を見据えていたので、循環器・腎臓・糖尿病をメインとする内科を選択しました。いろいろな科をローテーションする中で頼もしい先輩に出会ったことも大きいですね。研修医時代は循環器を中心に魅力的な先輩方からたくさんのことを教えていただき医師としての礎となり、たいへん感謝しています。大学院で透析患者さんの心臓肥大や心筋の線維化の研究をしている時に、透析治療に魅力を感じたのが、今現在も透析治療に携わっているきっかけだと思います。腎不全患者さんにはなくてはならない治療であり、どんどん進歩している治療で、循環器合併症も多くそれを丁寧にフォローすることが患者さんの予後の改善につながるのにも、やりがいを感じ、この分野に進みました。
開業された経緯や院内の工夫を教えてください。
【柴崎院長】もともと鶴見区の出身で、開業するなら地元でと考えていました。勤務医をしている時に鶴見区で開業する場所を探し、2007年11月に鶴見区緑のテナントで開業しました。患者さんも増えて手狭となり現在の場所に出会い移転したのが2013年です。3階の透析室は、出入り口が一つ、更衣室も同じフロアにあり、必ず受付で顔を見られる動線にしています。目の届かないところで患者さんが倒れていたという事故を防ぐことに加え、スタッフの移動の負担を減らすためワンフロアで完結型にこだわりました。また、天井を高くして間接照明を入れ、空調が直接当たらない場所にベッドを置くなど、長時間に及ぶ透析治療中も快適に過ごせるよう工夫しています。
地元で開業されたことでのメリットや地域との連携についてお聞かせください。

【柴崎院長】生まれ育った街なので土地勘があります。患者さんのご自宅から近い紹介先を選んだり、ちょっとした会話の中でも近隣の様子がわかったりと、スムーズに進められるのは地元で開業するメリットではないでしょうか。また、基幹病院を含めさまざまな連携医療機関があるので、症状に合わせて紹介できることが心強いですね。開業前に勤務していた病院は救急治療の体制が整っていて、当院の患者さんも速やかに受け入れていただけるので、とても助かっています。
2人の医師が相談し合い、多角的な視点で診療に臨む
菅先生が勤務されるようになった経緯を教えてください。

【菅先生】私も院長と同じく関西医科大学の出身で、先ほど話に挙がった頼もしい先輩の一人から声をかけていただき、2020年に当院に来ることになりました。それまでは大学病院や救命救急センター、地域の基幹病院などにいたので、初めてのクリニックでの勤務は、より患者さんに近い感覚があります。私は腎臓内科の専門ですが、ちょっとした体の悩みなどを相談されることもあり、ありがたいなと感じています。
【柴崎院長】腎臓疾患の患者さんの場合、腎臓内科を扱っている医院が少ないので、基幹病院などを紹介され、半日ほどかけて通院するのが通常の流れです。その点地域で菅先生が担っている役割は大きく、実際、近隣医院からの紹介も増えてきました。女性らしい視点で細かいところまで診てくれているので、特に女性の患者さんで菅先生を希望される方は多いですね。
2人体制になったことで生まれた強みは何でしょうか。
【柴崎院長】私は循環器、菅先生は腎臓を専門としているので、同じ患者さんを診るのでも視点が異なります。例えば、菅先生が診ている患者さんがたまたま私の外来に来られて、違う病気の可能性を指摘するということもあるでしょうし、必要だと判断した場合は、私から菅先生の診察を受けるように勧めます。担当制ではないので、患者さん自ら「今日は相談したいことがあるから」と症状に合わせて医師を選ぶ方もいますね。
【菅先生】どの分野でもいえることですが、医師一人ではなかなか判断ができない場面も多くあります。そんなときに院長と協力できる今の環境は、私自身の安心にもつながっています。迷ったらすぐに確認し、相談できる相手がいることは心強いですね。また、私は女性の医師として、女性ホルモンの変動による症状や子育てをされている方の気持ちは理解できるので、院長に相談しにくいことを聞く役割もあるのかなと思っています。
診療する中で大切にしていることは?

【柴崎院長】患者さんは自分の家族だと思って接しています。医師として言うべきことはしっかり伝えた上で「自分の親ならこうします」「これだけは絶対にしてほしい」と本音で話すようにしています。スタッフには敬語など言葉の使い方を指導しています。透析の患者さんは週に3回来られるので親しい関係性になりがちですが、日によって体調も変わりますから、不快な思いや、特別扱いされていると感じたりしないよう、話し方や対応に配慮を忘れないようにしています。
【菅先生】見落としがないようしっかりと診ることは大前提です。そして、患者さんと同じ目線で話し、患者さんの声を拾い上げること。私は腎臓専門医ですが、日本透析医学会透析専門医でもあるので、透析の専門家として患者さんが自覚を持って治療に向き合えるようにすることも重視しています。食事療法や毎日の血圧測定など基本的なことを地道に行い、患者さんと二人三脚で進めていきます。
スタッフ皆のチーム力で、より良い医療の提供をめざす
クリニックとしての今後の展望をお聞かせください。

【柴崎院長】開業時は医師はひとりでスタッフも少人数でしたが、少しずつ同じモチベーションのスタッフが集まってくれて、菅先生も加わってくれ大きな力になってくれたこと、経理を担当している妻の支えもあり、ようやく組織が出来上がってきたところです。自分たちの課題を見つけてやるべきことをやってくれるスタッフたちがそろいました。私だけの1本柱ではなく、何本も柱を立て、同じところを見て進んでいければ、患者さんのためになるのではと考えています。また、今夏から腹膜透析を開始しました。腎不全のうち5%ほどが腹膜透析を行っているといわれるので、受けられる場所がなく困っていた患者さんにも来ていただけるようになりました。医院としての幅を広げるためにも、今後も積極的に受け入れていきたいと考えています。
菅先生はいかがですか?
【菅先生】腎臓は「物言わぬ臓器」ともいわれ、見落とされがちな部位の一つです。年齢のせいだと諦めていたり、尿検査で指摘されていたのに放置していたりして、かなり進行してから来られる方も多いと感じています。もっと早い段階から介入できれば、透析にならずに済んだのに……ということもあるので、当院で腎臓内科を診ていることを知っていただき、気軽に来てもらえればと思っています。また、例えば腎炎を患っている女性の方で、ホルモンの影響で倦怠感や頭痛の症状が出てきたという場合、腎臓の薬とけんかしないように漢方を出すなどの選択も可能です。女性に寄り添った診療を続けていきたいですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

【菅先生】透析治療は何年ものお付き合いになるので、長期間安心して通っていただけるような環境をつくりたいと考えています。地域の皆さんに当院のことを知っていただき、気軽に足を運んでほしいと思います。
【柴崎院長】循環器、腎臓ばかりでなく内科の専門性も高いので一般内科として生活習慣病などの患者さんにもたくさん受診していただいています。透析を行っている方はそれに付随した合併症がどんどん出てきます。動脈硬化などは必ず起こってくるものなので、循環器専門医が診ることは重要です。加えて、腎臓専門医も在籍しているので、できるだけ透析にならないよう予防・対策にも力を注ぎ、スタッフ一丸となってより良い医療の提供をめざしてきたいです。