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西村 昌雄 院長の独自取材記事

西村ハートクリニック

(上尾市/上尾駅)

最終更新日:2023/01/17

西村昌雄院長 西村ハートクリニック main

通院が困難な患者に心から安心できる医療を届けたいと、上尾市で在宅医療の土台を築いてきた「西村ハートクリニック」。常に患者目線で課題の改善に尽力してきたという西村昌雄院長は、行き場のなくなった重症患者のために在宅医療のクリニックを開院。さらに老々介護などさまざまな事情により介護難民となってしまった患者のためにと、2017年には医療と介護が連携したサービスつき高齢者向け住宅をも開設。「なければ作る、自分がやる」という行動の原動力は、患者への真摯な想い。そんな心(ハート)がこもった同院ならではの在宅医療について、西村院長にじっくり聞いた。

(取材日2022年9月30日)

在宅医療の老舗ならではの心と心の通い合う医療と実績

まず、先生が在宅医療を始めたきっかけについて教えてください。

西村昌雄院長 西村ハートクリニック1

上尾中央総合病院に勤務していた2000年頃、私が専門とする循環器科では、心不全で入院していた患者さまの多くが退院後に自宅で酸素吸入をしていました。最低でも月に1度は通院していただくことになっていたのですが、実際に病院まで来てくれる患者さまは徐々に少なくなってきました。理由を尋ねたところ、「酸素吸入をしても息苦しくて病院に行けません。先生、どうかうちまで来てもらえませんか?」と多くの方から言われました。その切実な声に応えるため、1ヵ月に1度、私が患者さまの自宅を訪問するようになったのが、私にとって在宅医療の一歩でした。病院とは異なり、検査機器のない現場で、聴診器一本で病気と勝負できたのは、第一線の臨床医としてそれまでに習得した内科診断学と医療技術のおかげであると感謝しています。当時の私にとって、在宅医療は医学の本質そのもので、ここに私の医療人生を集大成すべきと考えました。

在宅医療に初期から取り組んでいたので、その存在が広く世に知られ、多くの人から頼りにされていますね。

2006年4月、厚生労働省が在宅医療支援診療所の制度を設置したことにより、上尾中央総合病院などの病院は在宅医療を行うことができなくなりました。その頃私1人で150人の循環器在宅患者を診ていましたので、その大半を近隣の医療機関や介護施設に紹介せざるを得ませんでしたが、重症患者さまの行き場を見つけることができませんでした。この状況をどうにかしたいとの思いから、2007年に在宅医療専門のクリニックとして当院を開院する運びとなりました。当時、上尾市には当院の他に在宅医療専門のクリニックはなかったため、あちこちの病院やケアマネジャー、訪問ステーションなどの介護関係者から在宅医療の依頼が殺到し、私1人ではとても手が回らなくなり、医師である娘夫婦にも手伝ってもらうことにしました。開院当初は循環器科がメインでしたが、今では約20人の医師が在籍し、幅広い在宅診療に対応しています。

診療理念について教えてください。

西村昌雄院長 西村ハートクリニック2

長期的な医療ケアが必要な患者さまが本当に求めている医療について追究した結果、私たちが出した答えは「家族の愛情に包まれ、住み慣れた自宅での療養こそが、患者さまに真の安らぎと生きがいをもたらすものである」ということでした。医師の都合ではなく、常に患者さまの立場で考え、心から安心できる質の高い在宅医療を提供したい。退院後も入院時と変わらない医療を自宅で受けていただきたい。当院では「在宅医療は在宅入院である」という想いのもと、医師の心と患者さまの心が通い合う診療をめざしています。クリニック名を「西村ハートクリニック」としたのは、このような想いからで、「ハート」という言葉には「心」と循環器科の「心臓」の意味が込められています。

どんな時でも駆けつけるための、365日24時間体制

こちらのクリニックの診療体制について教えてください。

西村昌雄院長 西村ハートクリニック3

常勤の医師が私と娘夫婦の3人、ほかに非常勤の医師が20人ほどいます。そのうち12人は東京大学の循環器内科、呼吸器内科、消化器内科などから来ていただいており、東海大学、獨協大学からは教授が来てくれています。内科系をほぼ網羅する、さまざまな分野において高度な専門性を持つ先生方に来ていただき、幅広い診療に対応しています。他に薬剤師や看護師、介護支援専門員、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士が在籍し、入院時と変わらない医療の提供をめざしています。

今は外来にも対応しているのですね。

外来は火曜から土曜まで、内科、循環器内科、呼吸器内科、神経内科、腎臓内科などに対応しています。また、在宅医療を始めた時、食事による誤嚥性肺炎が余りにも多いことに気づきました。当初は胃ろうで対応しましたが、しばらくすると唾液による誤嚥性肺炎を発症することがわかりました。そこで、口腔内を患者さまご自身、あるいはご家族が歯磨きをするだけでは不十分なため、歯科医師や歯科衛生士による専門的な診療、口腔ケアを導入しようとしましたが、私ども内科医の要望を十分理解して連携してくれる歯科医師を求めることができなく、当グループで歯科クリニックを開設した次第です。歯牙の欠損を治療をすることで、食事摂取の再開が見込める、口腔マッサージ等で誤嚥の減少が期待できる、さらに口腔ケアで誤嚥性肺炎の減少がめざせるなど、歯科導入により患者さまのQOLは大きく改善が見込めています。

患者の急変時の対応が注目を集めていますね。

西村昌雄院長 西村ハートクリニック4

当院では上尾を中心とする半径16km内のさいたま北部・桶川・北本・伊奈町・白岡・蓮田までを訪問エリアとしていますが、患者さまから診療要請があった場合は、休日だろうが真夜中だろうが、すべて対応しています。2021年1月から12月の集計では、当院の緊急往診回数実績は7282件でした。急変時はご家族も不安なことと思います。当院では患者さま本人だけでなく、ご家族の気持ちにも寄り添い、少しでも不安を取り除けるよう努力しています。

医療・介護・看護の連携で、患者の家族を包括的にケア

看取りについてどのように対応されていますか?

西村昌雄院長 西村ハートクリニック5

看取りは、人生の終焉です。在宅医療の終着地点です。私どもはこの最期の時を見据えたシナリオを描きながら、患者さまとご家族との信頼関係を構築しなければなりません。どのご家族も、患者さまには1日でも長く生きてもらいたいと思っていらっしゃいます。患者さまとご家族の身になり、寄り添える診療を行うのが在宅医療のあるべき姿です。決して安易な気持ちで対応はできません。住み慣れたご自宅で、ご家族と最期の時を存分に共有し、思い残すことなく、ご家族に見守られながら最期を迎えたいと願う患者さまの気持ちに在宅医療でお応えできるよう尽力しています。急変時の要請を断らないのはもちろん、容体が気になる時は1日に何度も様子を見に伺うこともあります。自宅にいながら入院しているような安心感を提供できるよう、万全の体制構築に努めています。

来春、検査を主とする施設がオープンするそうですね。

当院の在宅医療ではポータブルの超音波検査や血液検査に対応していますが、MRIやCT検査が必要な時は外部に依頼しています。ただ、それだと1ヵ月待ちなどになってしまうため、検査の結果が出る頃には手遅れになってしまうリスクも出てきてしまいます。また、患者さまの状態やご家庭によっては、検査のための受診すら困難なケースもあります。どうすれば迅速に検査を受けられるだろうかと考えた結果、だったら自分で検査センターを造ればいいと思い至りました。今、当院から駅の反対側の春日というところに、3階建ての検査センターを建設中です。現時点で埼玉県に数台しかない新鋭の320列CTやMRI、超音波検査機器、骨密度測定装置などをそろえています。これらの機器の組み合わせにより、病気の早期発見と早期治療に貢献できることを願っております。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

西村昌雄院長 西村ハートクリニック6

在宅医療では、医療・介護・看護が三位一体となって患者さま、ご家族を支えないと、成功しないと思われます。私どもは患者さまのみを対象とするのではなく、ご家族を含め総合的に医療・介護・看護体制を構築することが肝要と考えています。医師は患者さまの病気を診るだけではなく、医療と介護・看護の包括システムを患者さま・ご家族に構築する必要があります。このネットワークを患者さま・ご家族にどのように提供できるかを見極めて、納得の上、在宅医療導入を決定する必要があります。在宅医療に携わる医師の観点から、在宅医療機関の選定方法は、年間の緊急往診回数と在宅看取り件数に集約されると考えています。病気のことで先々が不安の方、ご相談をお待ちしています。

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