甲斐 睦章 院長の独自取材記事
かいクリニック
(宮崎市/宮崎神宮駅)
最終更新日:2022/08/26
宮崎神宮近く、ブラウンを基調としたシックな外観が周囲の景観に溶け込む「かいクリニック」。複数の大規模病院で人工関節手術やリウマチ治療などに携わってきた甲斐睦章(むつあき)院長が2013年に開院した。同院ではリウマチの先端治療と、手術をせずに機能改善をめざす保存療法を2本柱に展開。この7月に別棟を増築し、内科・呼吸器内科・循環器内科を新設すると同時に、本格的なリハビリテーション環境も整備した。「病院と遜色のない医療を提供したい」という甲斐院長の言葉の端々から地域医療を担う医師として、また専門的な医療を提供するクリニックとしての、強い使命感が伝わってきた。
(取材日2022年7月8日)
患者一人ひとりに寄り添う医療を
この道へ進まれたきっかけや開業までの経緯を教えてください。
中学・高校時代はバスケ部に所属し、私自身よく整形外科にお世話になった経験から、最初スポーツ整形外科の医師をめざすようになりました。九州大学整形外科学教室の関連病院をローテーションし、さまざまな整形外科疾患を学んできました。その中で尊敬する恩師と出会い、人工関節手術やリウマチ治療を専門とするようになりました。宮崎へ帰郷後の勤務医時代は多数の手術を執刀しましたが、手術に追われる日々にもっとゆっくりリウマチ患者さんと向き合いたいという気持ちが強くなったのが開業を意識するようになったきっかけです。病院では手術を受けるほどではない患者さんに対しては「近くの病院で診てもらいリハビリをしましょう」と言うしかできなかったので、そういう人たちにきちんとした治療の場を提供したいという思いもありました。実際に開業を決めたきっかけは、宮崎県人にとって特別な場所である宮崎神宮そばのこの土地を見つけたことです。
魅力的な場所ですし、医院の外観も素敵ですね。
実は医療経営のコンサルタントに「ここよりもっと集患できる場所があるのでは」と指摘されましたが、私はこの土地に出合わなければ開業を決めなかったくらい思い入れが強かったので、聞き入れませんでした(笑)。建物を建てる際は、「歴史的な場所なので周囲の美観を損ねないように」「その上でモダンなところも出せれば」などと設計士さんに相談しながら造ってもらいました。外装は神宮の森をイメージして木をふんだんに取り入れています。
専門としているリウマチの患者さんはどのような年齢層ですか。
リウマチの発症ピークは50~60代ですが、近年発症年齢も高齢化しています。一方で、20歳代の若い患者さんもおられます。地元はもちろん、日南や延岡、都城など遠方からも幅広く来られています。一般整形のほうは地元だけでなく、私が週に1度ほかの病院で手術を行っていることもあり、手術希望の方は遠くからも来られています。クチコミやかかりつけの内科の先生の紹介で来られる患者さんも多いですね。リウマチ治療や人工関節手術後の定期検診は長い付き合いになるので、勤務医時代から10年、20年と診ている患者さんは高齢になってきています。そのため患者さんの年代は幅広いです。
運動器障害の専門を教えてください。
整形外科の取り扱う運動器障害の範囲はとても広いのですが、私が専門としているのは股関節や膝関節の障害に対してお薬や注射、リハビリテーションなどを用いて行う保存的治療から人工関節の手術です。私は勤務医時代から股関節や膝の手術を多数行ってきましたので、その手術を受けた患者さんからのクチコミで来られる方も多いです。保存的治療の限界を知り、手術適応の限界を知り、手術適応の判断を適切に行うことがその患者さんにとってのADLやQOLを維持していくのにはとても大切です。
別棟を増設し、より幅広い医療の提供をめざす
診療科目の追加に伴い、別棟を建てられたのですね。
循環器内科や呼吸器内科といった内科を増やし、リハビリテーション設備を備えました。リウマチは内科のチェックも必要な病気です。高血圧や糖尿病などの合併症を含め、全身管理及び、リウマチで特に問題となる肺疾患の管理などを2人の内科医が担当します。増設にあたり、リハビリ施設も充実させました。理学療法士を4人配置し、腰痛や肩の痛み、運動器不安定症に対するリハビリテーションはもちろんのこと、最近では高いレベルでスポーツ競技を行っている高校生も来るようになりました。競技に復帰するまでのプログラムを私と理学療法士、現場の指導者と話し合いながら対応しています。
大きな病院と同等の医療とは、具体的にどのようなものですか?
高齢の患者さんの中には筋力や関節機能の低下がみられるロコモティブ症候群の方がおり、リハビリの重要性を強く感じていました。手術をせずともリハビリで改善をめざせる人たちのための場所を提供するというのが別棟建設の大きな目的の一つでもありました。大きな病院ほど長く待たずに、大きな病院と同等の医療が受けられる、そんなクリニックをめざしています。
診察に際して気をつけていることは?
病気の症状だけでなく、その患者さんの背景も含めて患者さんが何に困っているのかということを把握するようにしています。なので、最初の診療では、一人暮らしか、介護者がいるのか、どうやって通院しているのかなど、日常生活について詳しく聞き取りをします。リハビリを勧めるにしても、ここまでタクシーで来ないといけないのなら患者さんの負担になるため、「近くの医院でリハビリを受けてください」と言うこともありますね。その患者さんが本当に困っていることを聞き出すような会話を心がけて、一人ひとりに合わせたオーダーメイド治療を提案します。
生物学的製剤をはじめとしたリウマチの先端治療も提案
リウマチの先端治療について教えてください。
リウマチの基本薬はメトトレキサートという飲み薬です。しかし、この薬で抑えきれない患者さんに使われるようになったのが生物学的製剤やJAK阻害薬です。これらの薬剤により飛躍的に進歩しました。従来、リウマチは症状を抑える治療が中心でしたが、今では生物学的製剤やJAK阻害剤によって多くの患者さんを寛解に導くことが可能になりました。寛解とは薬を止めることはできませんが症状がなくなり、日常生活が無理なくできるようになった状態です。ただどんなに素晴らしい治療が登場してもリウマチは早期発見・治療が大前提。早く発見できれば従来の治療でも改善の余地は大いにあると考えています。それでも不十分な人には、生物学的製剤やJAK阻害薬といった先端の治療をご提案しています。一方でこれらの薬剤による副作用や感染症などには注意が必要です。内科医、看護師、薬剤師がチームとなり、より良い治療の提供をめざします。
病診連携はどうされていますか?
近隣クリニックとは診診連携という形で紹介し合っていますし、症状に応じて大きな病院との病診連携もしています。あとこれからは大きな病院の術後の患者さんへのサポートの枠を広げたいと考えています。術後リハビリが必要な患者さんを受け入れられるよう、近隣の病院にもお声かけしていきたいです。当院で手術が必要な患者さんは、紹介先の病院で私が執刀することも可能で手術後はまた当院でリハビリなど術後フォローをしていきます。当院のリハビリルームは広々としていて眺めもいいですし、リフレッシュもできるのではないかと思います。
先生自身は普段どのようにリフレッシュしていますか?
ゴルフや、近くの公園でのジョギングです。ジョグは公園を3周くらい回るのですが、後半はヘトヘトで本当にきついですね(笑)。もともとの趣味はバイクなんですが、最近は時間がなくて遠出ができなくて。でも9月の連休に大イベントがあるんです。還暦を迎える私へのお祝いに兄弟4人北海道でツーリングする予定です。
読者へのメッセージをお願いします。
以前、リウマチは治らない疾患といわれていましたが、今はさまざまな治療法が登場し、治癒が期待できるようになりました。ただしそれには早期診断・早期治療が大切。関節の腫れや痛みなど気になる症状がある方で、家族や親戚にリウマチを患った人がいる場合は、早めに専門家の診察を受けていただきたいです。また、すでにリウマチの治療中で病気の状態が思わしくない方もどうか諦めないでください。当院ではその人の状態に応じて装具の作製やリハビリテーション、手術などを適切に組み合わせて治療を行い、症状の改善を図っています。リウマチに限らず一般的な整形外科の疾患、内科疾患など、気になることがあればなんでも気軽にご相談にいらしてください。