いびきは病気のサインかも?
睡眠時無呼吸症候群の危険性について
にいじゅく組合診療所
(葛飾区/亀有駅)
最終更新日:2025/04/23


- 保険診療
睡眠中に呼吸が止まったり大きないびきをかいたりしても、本人がそれに気づくことは少ないだろう。睡眠時無呼吸症候群の怖さの一つは、この「自分では気づきにくい」という点だ。しかしその影響は徐々に表れ、夜中にトイレの回数が増えたり、起きた時に頭痛を感じたり、日中に強い眠気が生じることもある。居眠りを「怠けている」と周囲に誤解されれば、社会生活にも影響を及ぼすことだろう。さらに睡眠時の無呼吸や低呼吸は血圧を上げ、血管にダメージを与えて、動脈硬化やその先の脳梗塞・心筋梗塞を引き起こしかねない。今回は「にいじゅく組合診療所」の網代洋一(あじろ・よういち)院長に、睡眠時無呼吸症候群についてさまざまな角度から話を聞いた。
(取材日2025年4月7日)
目次
睡眠の質を下げ、重い病気を引き寄せる睡眠時無呼吸症候群。早めの治療で生き生きとした生活を取り戻す
- Q睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気ですか?
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A
▲自分では気づきにくく、家族からの指摘で来院することが多い
寝ている間に10秒以上呼吸が止まる「無呼吸」、もしくは呼吸が止まりかける「低呼吸」を繰り返すような病気を睡眠時無呼吸症候群といいます。睡眠時のいびきや呼吸の乱れはご自身では気づきにくく、家族からの指摘で来院される方が多いですね。夜間の頻尿や日中の眠気を生じることも多く、「居眠りばかりで怠けている」と学校や職場で注意されて検査を受けたら睡眠時無呼吸症候群だったという方も。よく眠ったはずなのに起床時に頭痛や疲れを感じる場合も要注意です。機序は違えどお子さんでもご高齢の方でも発症する可能性がありますし、ご自身が気づいていないだけで「実は睡眠時無呼吸症候群だった」というケースはとても多いんですよ。
- Q放置するとどのようなリスクがありますか?
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A
▲症状を放置することで重篤な疾患につながることも
呼吸が止まると血圧が上がり、心臓に負担がかかります。高血圧は血管にダメージを与えますから、それが蓄積されると動脈硬化につながり、さらには脳梗塞や心筋梗塞の原因となりかねません。睡眠時無呼吸症候群を放置することで、命に関わるような心臓病、血管病を引き寄せてしまっているんですね。睡眠時無呼吸症候群を5年間放置すると、心筋梗塞や狭心症のリスクは3倍、脳梗塞のリスクは4倍に増えるともいわれています。また日中の眠気によって授業中に集中力が低下して成績が落ちてしまったり、自動車事故を始めとする産業事故を起こして、取り返しのつかない事態に陥ってしまったりすることも考えられます。
- Q注意すべき体質などがあれば教えてください。
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A
▲睡眠時無呼吸症候群について長年研鑽を積んだ網代院長
一般的な健康診断で睡眠時無呼吸症候群は検査しませんが、もし高血圧や糖尿病を指摘されたら、同時に睡眠時無呼吸症候群も疑ってください。無呼吸は高血圧の要因にもなりますし、肥満は糖尿病と無呼吸のどちらの要因にもなり得ます。実際、高血圧症を患う方の3人に1人、糖尿病を患う方の5人に1人は睡眠時無呼吸症候群であるといわれているんですよ。特に薬を3種類以上服用しているような重度な高血圧症の方は約80%が睡眠時無呼吸症候群と言われます。動脈硬化のリスクを上げないためにも、一度睡眠時無呼吸症候群の検査を受けることをお勧めします。
- Q睡眠時無呼吸症候群では、どのような検査や治療を行うのですか?
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A
▲心臓病やがんの早期発見に注力
検査は2段階で、まずはご自宅で一晩指と鼻にセンサーを装着して睡眠の状態を調べます。その結果が一定の基準を超えていた場合は、設備の整った病院で1泊検査を実施。その結果によって睡眠時無呼吸症候群の確定診断を行います。治療としては、機械で鼻から気道へ圧をかけるCPAP療法(持続気道陽圧療法)と、連携する歯科医院でマウスピースを作製して睡眠中の上顎と下顎の位置を調整する方法が2本柱です。そのほか呼吸中枢に問題がある場合は薬物治療を併用することがあります。症状によっては手術を検討する場合もあります。なお、お子さんは扁桃腺の切除で改善が見込めることも多いので、対応可能な病院をご紹介してします。
- QCPAP療法は長くかかるのでしょうか?
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A
▲患者の症状に合わせて、適切な治療法を提案している
日中の眠気などは比較的早期に改善が期待できます。同時に長い目で見た動脈硬化やその先の脳梗塞・心筋梗塞の予防も重要です。血管のダメージをこれ以上悪化させないためには、地道に治療を続ける必要があります。CPAPは毎日の使用が望ましいのは確かですが、あまり堅苦しく考えないでください。普段きちんと装着できている方ならば、何日か中断しても睡眠そのものの質が向上しているはずです。導入期は月に1回、安定期は2ヵ月に1回の診療で、私もしっかりとサポートいたします。2024年には睡眠時無呼吸症候群でのオンライン診療が可能になりました。無理なく長く、一緒に治療に取り組んでいきましょう。