網代 洋一 院長の独自取材記事
にいじゅく組合診療所
(葛飾区/亀有駅)
最終更新日:2026/07/15
東京・葛飾にある「にいじゅく組合診療所」は、戦後の混乱期に互助目的で創設された生活協同組合が前身だ。ダークグレーの外観は住宅や学校が建ち並ぶエリアに溶け込み、今も建物の外壁に残る「新宿組合診療所」の銀文字には昭和から平成、そして令和と、地域とともに歩んできた歴史を感じる。内科全般およびプライマリケアを担う一方、網代洋一院長が長年研鑽を積んできた循環器内科領域や睡眠時無呼吸症候群(SAS)においては、特に専門的な治療を行う。より充実した地域医療の実現に向け、予防医療と早期発見に力を入れることはもちろんオンライン診療も取り入れ、通いやすい体制づくりを実施。そんな網代院長に、診療所の特徴や今後の目標について伺った。
(取材日2026年3月6日)
地域住民の健康を支えつつ、専門的な医療も提供
「にいじゅく組合診療所」は、開設から80年近い歴史があるそうですね。

当診療所は終戦後間もない頃に私の祖母がこの葛飾新宿の地に創設した「新宿消費生活協同組合」が前身です。1947年に利根川流域を襲ったカスリーン台風で、葛飾一帯が水浸しになり、医療機関もほとんどつぶれ住民の生活が危機にさらされたため、その翌年に生協の医療部門として診療を始めたそうです。やがて生協本体の活動は縮小し、現在は当診療所のみが残っています。父が支えてきたこの葛飾新宿地域のプライマリケアを担う診療所として、幅広い年齢の患者さんに対し、総合的な医療サービスの提供をめざしています。
こちらではどのような医療の実現をめざしていますか。
一番大事にするのは、地域医療の一端を担い、皆さんの健康を支えることです。体と心の健康が社会的にも良い状態である「ウェルビーイング」の実現に向けて貢献し続けたいです。私は長く循環器を専門として、不整脈や心不全、睡眠時無呼吸症候群などの治療に携わってきました。専門的な経験を、地域の皆さんをはじめ、当診療所のことを頼って来てくれるすべての方々に提供するため、予防接種をはじめとする予防医療、生活習慣の改善や漢方薬の相談、心臓病やがんの早期発見に向けた検査の実施など、必要とされる医療の提供に努めています。
地域医療に尽力されているんですね。

地域医療における当診療所の役割は、プライマリケアの一言に集約できます。かかりつけ医、ホームドクターが担う医療というとイメージしやすいでしょうか。私としてはどんな患者さんも診るという心構えでいます。些細なことでも相談できる医療の入り口となり、専門病院・大規模病院との隙間を埋める医療がプライマリケアだと捉えているからです。また、誰もが安心して通えるよう、発熱のある患者さんは専用の別棟で対応します。ご高齢の方、糖尿病などの全身疾患から重症化リスクの高い方に関しては、発熱後12時間以内であれば新型コロナウイルス・インフルエンザ・溶連菌などのPCR検査を保険診療で行うことも可能です。必要な薬は院内処方でお渡しできますし、新型コロナの抗ウイルス薬も一部ご用意しています。
循環器疾患や睡眠時無呼吸症候群の治療に力を入れる
病気の早期発見に注力されているのですね。

私の専門分野である心臓病はもちろん、健診を中心にがんの早期発見にも注力しています。また当院では、先進の高性能な心臓超音波検査機器を導入し、心臓弁膜症の早期発見や評価に加え、ストレイン解析によって心筋機能をより詳細に評価できます。症状が出る前の前心不全状態からの治療の重要性も踏まえ、前心不全状態の早期発見にも努めています。頸動脈超音波検査では、血管の柔らかさから動脈硬化の評価が可能です。また、急性心筋梗塞など重篤な心疾患の早期発見のためトロポニンTやDダイマーを約15分で測定できる検査機器を備え、さらにはワルファリン服用患者に必要なプロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)検査も院内で実施しています。そのほか、マイクロRNAを使ったがんの早期検出をめざす研究が進められており、その動向にも注目しています。
心電図検査についてはいかがでしょう?
標準的な24時間のホルター心電図検査のほか、最長2週間の長時間ホルター心電図検査や、症状が起きた時に記録できるイベント心電計を実施できる環境を整え、不整脈発見に努めています。曜日や時間を問わずに検査機器を返却できるように、入り口の前に返却ポストも設けました。心臓の病気で特に気をつけるべき病気の一つは、脳梗塞を引き起こしかねない「心房細動」という不整脈です。恐ろしいことに心房細動の半数は無症状のため、早期発見が重要です。今後は、心電図のAI解析支援による「心臓年齢」の評価も導入予定です。
睡眠時無呼吸症候群の注意点を教えてください。

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸がたびたび止まる病気です。注意点は、とにかく気づきづらいこと。よく寝たはずなのに朝は調子が悪いとか、夜中に頻繁にトイレに起きるのは、病気のサインかもしれません。3種類以上の降圧薬が処方されている高血圧の方は、7~8割が睡眠時無呼吸症候群とも言われており、特に注意が必要です。小柄な日本人は痩せていても発症しやすく、肥満や加齢で喉を支える筋肉が衰えるとさらに悪化しやすいです。治療としては機械で鼻から気道へ圧をかけるCPAP治療と、連携する歯科医院でマウスピースを作製して睡眠中の顎の位置を調整する方法があります。重症の睡眠時無呼吸症候群は、知らぬ間に動脈硬化を進行させて脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こしかねませんから、放置せずきちんと治療することが重要です。
睡眠時無呼吸症候群の相談から二次検査まで、すべてオンラインで受診することも可能だと伺いました。
2026年6月より、ご相談もその後にご自宅で行う検査も、さらに疑わしい場合の二次検査も、すべてオンラインで対応できるようになります。本来ならば対面で症状を伺い、二次検査も病院で1泊検査を受けていただくほうが精度は高いです。ですがこれまで「睡眠時無呼吸症候群では……」と不安でも忙しくてなかなか受診ができなかった方には、ぜひオンライン診療を活用してほしいです。CPAP治療となった場合の管理もオンラインで対応可能ですし、生活習慣病の治療や管理栄養士による栄養指導など、睡眠時無呼吸症候群と合わせた幅広い健康相談・健康管理も行っています。
診療所というチームで患者の健康をサポート
大学病院などで経験を積まれた先生が、診療所に移られた経緯をお聞かせください。

実は、父や母からこの診療所を継いでほしいとは言われたことはなかったんです。私は地域医療と研究という、全く方向の異なる2つの道に興味がありました。ですが、病気に苦しむ患者さんと接する中で、「もっと早く医療介入できていたら、この患者さんは元気な人生を送っていたのだろう」と、悔しく思うことがしばしばあったのです。そのようなことが度重なり、だんだんと予防医療や病気の早期発見を地域医療で実現していきたいとの思いが大きくなっていきました。それが理由の一つです。
診療の際に心がけていることはありますか?
医学的に最良と思われる治療であっても、患者さん本人の考えや経済状況、またご家族の意向などにより、患者さんやご家族にとって最良と思われる治療と乖離があることがしばしばあります。治療方針を決定する際は、それらの事情を伺い配慮するよう意識しています。いわゆる「シェアード・ディシジョン・メイキング(共同意思決定)」ですね。医療を押しつけるのではなく、患者さんご自身が理解して選択できるよう、医療の専門家として説明やアドバイスを行い、意思決定のお手伝いをするつもりで接しています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

当院は、発熱の外来から健診、漢方の相談までと幅広く対応する「町のかかりつけ医」です。また循環器疾患や睡眠時無呼吸症候群は私の専門分野ですから、少しでも気になる症状があったり、病院での治療後のフォローアップについてもご相談ください。多様な症状に対応できるよう検査環境を整え、検査機器の返却ポスト設置や、睡眠時無呼吸症候群のオンライン診療対応など、患者さんにとって利便性の良い環境を整備しています。患者さんと接する際に肝に銘じているのは、初めの主訴がすべてではないということ。患者さんとスタッフとの何気ない会話から意外な病気が見つかることもあります。まさに「患者さんからの学び」であり、それが私たちの糧になっています。だからこそ医師とスタッフが一つのチームとなり患者さんの健康をサポートし、寄り添う姿勢を大切にしていきたいですね。

