女性にありがちなつらい症状の中に隠れている
甲状腺の病気
おおこうち内科クリニック
(稲沢市/森上駅)
最終更新日:2025/04/15


- 保険診療
甲状腺の病気といってもピンとこない人も多いだろう。特徴的な自覚症状が少なく一般的にわかりにくいために、病気であっても診断にたどり着けていない人が多いという。動悸やむくみ、イライラ、不眠、気分の落ち込み、不妊など女性によくある症状ばかりで、見過ごされがちだ。日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本甲状腺学会評議員で「おおこうち内科クリニック」理事長である安田康紀先生は、「甲状腺の病気は国内で約500~700万人いるとされていますが、健診で甲状腺機能を調べることは少なく、症状も多彩なので、自分で甲状腺の病気とは気づいていない人が多いのです」と話す。漢方など、薬を飲んでいてもなかなか改善しないなと思うことはないだろうか? そんなときは専門のクリニックで甲状腺機能を調べてもらうのも一つの方法だ。
(取材日2025年3月24日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q甲状腺の症状と受診するべきタイミングを教えてください。
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A
甲状腺疾患は目に見える症状が首の腫れぐらいで、専門外の医師では診断が難しい病気です。当院でも、首の腫れを健診などで指摘されて、来院される方が多いですね。甲状腺の病気には甲状腺機能が高い病気と、低い病気があり、症状が異なります。甲状腺機能が高いと、動悸や多汗、イライラする、一方低いと、むくみや眠気、気分の落ち込みなど体の機能が下がるイメージ。代表的な病気では前者がバセドウ病、後者が橋本病となります。いずれも症状が多彩で更年期障害や精神疾患に似通っているので、病気の中に隠れている病気ともいえますし、中には婦人科や精神科などのさまざまな診療科を受診し、最後に当院にたどり着くという方もおられます。
- Q甲状腺の治療をせずにいると、どうなるのですか?
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A
甲状腺機能が低下するとコレステロール値が高値となることがあります。その場合、原因は甲状腺にあるので脂質異常症の治療や食事の管理を頑張ってもコレステロール値を下げることは困難です。反対に甲状腺機能が高くなるバセドウ病では心不全につながるような重症の不整脈や甲状腺眼症と呼ばれる眼球の突出・視力低下、また骨密度の低下を来すこともあります。さらに、治療が不十分な状態で感染やストレスを受けると、甲状腺クリーゼと呼ばれる多臓器不全を起こして命に関わることもあります。甲状腺は代謝を調節し、心臓や目の周りの組織、骨の成長など、全身の臓器に影響を及ぼしますから、早期発見と早期治療が必要な病気なのです。
- Qこちらのクリニックでは、どのような治療を行っていますか?
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A
薬物療法が基本ですが、触診で甲状腺の腫大が疑われる場合は超音波検査(エコー検査)をし、甲状腺の大きさなどを判別します。詳しい検査が必要になれば細胞診も当院で可能です。また、がんの疑いで手術が必要と考えられた場合、連携する病院に迅速に紹介します。薬物療法も注意する点があり、甲状腺機能が高い病気の中にも、一過性に機能が高いだけで様子を見れば下がる病気もあるため、機能を下げるための薬を使ってはいけない場合もあり、専門の医師でないと判断が難しいことも少なくありません。頻度は低いですが、甲状腺機能を下げる目的の薬には命に関わる副作用もあるため、不必要な薬を使うことにならないよう、慎重な判断をしています。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診で気になる症状や既往歴をヒアリング
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甲状腺の病気の症状は多岐にわたるため、問診ではどんな些細な症状であってもしっかりと聞き取る。どのような症状がいつから続いているのか、甲状腺機能に異常を来す可能性のある薬剤を内服していないかについて詳細に確認。また、甲状腺の病気には遺伝の要素もあるため、家族に甲状腺の病気にかかった人がいないかもチェックする。
- 2触診や血液検査、エコー検査などを行う
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まずは触診と血液検査を行う。触診で問題ないと診断されても、心配な人は希望すればエコー検査も受けられる。血液検査は約30分で結果が判別でき、エコー検査の画像を見ながら、血液検査の結果と併せて診断。エコー検査でがんが疑われる場合は、後日、細胞診をするが、その場合も点滴に用いるような細い針を使って専門の医師が痛みのないよう配慮して行う。細胞診の結果は、病理検査に出すため3回目の受診で聞くことができる。
- 3検査の結果を踏まえ、治療方針を決定
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基本的に確定診断がつけば、その日に薬を処方する。薬物療法の場合、病気によっては、最初は約2週間おきに通院して副作用がないかを確認。その後は1、2ヵ月おきに通院する。薬の内容や量は、様子を見ながら調整していくが、特に副作用が心配な方には次回の受診まで院長自ら電話で患者本人に確認することもあり、安全性に配慮された治療を受けることができる。
- 4定期的に通院し、様子を確認
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甲状腺の病気は慢性疾患なので、基本的に定期的な通院が必要。治療がうまくいっていても、数ヵ月または数年後に再発することや、喫煙やヨウ素を多く含む海藻類の過剰摂取などでも悪化することもあるので、自己判断で通院を中断せず、定期的な診察を受けることが大切だ。
- 5服薬以外の治療法が必要になる場合
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バセドウ病では長期間、薬を服用しても改善が見込めない場合や、副作用が出るなどして薬物療法ができない場合は、次のステップとして、放射性ヨウ素内用療法という放射線療法や手術療法がある。放射性ヨウ素内用療法は、ヨウ素に放射性物質をつけたカプセルを飲んで、甲状腺の細胞を壊して機能の低下を図るという治療法。また、がんの場合は第一選択として摘出手術を提案。小さい場合は、転移がなければ経過観察する場合もある。