小柳 久美子 副院長の独自取材記事
KOYANAGI真柄CLINIC
(新潟市南区/関屋駅)
最終更新日:2024/05/29

新潟市南区鷲ノ木地区の「KOYANAGI真柄(まがら)CLINIC」は、大正時代、同地区に「真柄医院」を開業した曽祖父を持つ小柳久美子副院長が、夫の小柳亮院長とともに、2012年に開業した。「地域の患者に安心・安全な医療を提供する」という理念のもと、循環器内科が専門の院長と呼吸器内科が専門の副院長が、外来診療・訪問診療・予防医療を3本柱に診療を行っている。多くの患者が受診し、主訴も多岐にわたるが、セルフ会計など積極的にDXを活用して混雑緩和を図り、内科領域以外の悩みにも可能な範囲で対応するなど、患者の利便性を追求している。小柳副院長は、「開業から12年、達成度は?」との問いに、「120点です。患者さんからの感謝の言葉が何よりうれしいです」と、満面の笑みで胸を張った。
(取材日2024年5月2日)
医師の少ない地域で住民の健康を支えるために
大正時代から続く開業医の家庭に生まれたそうですね。

1915年に、曽祖父が当院から車で数分の距離にある場所に内科の「真柄医院」を開業し、父が3代目院長でした。子どもの頃は、2代目の祖父が診察する隣で遊び、夜中でも電話があれば往診に出かける姿を見て育ちました。患者さんから「先生いなさるかね」と電話があれば、「今、往診に行っています。かけ直しますので、お電話番号を教えてください」と、小学校低学年にして事務員さながらの応対をしていました。でも、幼い頃から医師をめざしていたというわけではないんです。高校の時の進路希望調査に、考古学者や書道家の次に医師と書いたくらいでしたから。それでも最終的に医師の道に進んだのは、医療が身近な環境で、患者さんのために粉骨砕身する祖父や父の姿を当たり前に見て育ったからでしょうね。
どのような患者さんが受診されていますか?
診療科目は内科・循環器内科・呼吸器内科なので、胸の痛み、脈の乱れといった循環器症状や、咳や喉の痛み、息苦しさなど呼吸器症状、それに伴う発熱、頭痛がほとんどです。もともと院長が循環器内科が専門で、私の専門は呼吸器内科なので、受付事務員が主訴を確認して症状に応じて分担が決まりますが、かかりつけの患者さんは、受付でどちらに診察してほしいかご要望を伺います。医療機関が少ない土地ですから、曽祖父の頃は外科やお産から眼科までなんでも診察していたそうです。現在も遠方まで行くのは大変だからと、内科以外の主訴で受診する方もおられるので、かかりつけ医として可能な範囲で相談を受けています。
開業に至る経緯をお聞かせください。

母校の金沢医科大学での初期研修は多くの診療科を短期間で回る方式でしたが、じっくり深く学ぶほうが向いていると思い、卒業後は新潟大学医学部付属病院第二内科に進みました。肺や気管支だけでなく全身の症状まで総合的に診察したり、ご家族の喫煙歴など患者さんの背景にまで関与したりするのが、祖父や父と地域の患者さんとの関わりに近いものを感じ、呼吸器内科を専門に決めました。その後、県内外の病院の呼吸器内科で診療経験を積み、千葉大学免疫学講座でアレルギーの研究をした後、東京で循環器内科の医師をしていた夫と結婚。アレルギーと喘息を専門とする東京の半蔵門病院で勤務するうちに、より多くの患者さんと関われる地域医療への想いが湧いてきて、新潟に帰りたくなったんです。都会育ちの夫も、実は父親が新潟出身で、「医師不足の土地での地域医療には無限の可能性がある」と、鷲ノ木地区での開業には大賛成でした。
外来診療・訪問診療・予防医療の3本柱で医療を提供
診療の際に心がけていることを教えてください。

当院の診療理念は、「地域の患者さんに安心・安全な医療を提供する」。これは、曽祖父が「真柄医院」を開業した時の理念を踏襲したものです。具体的に実現するために、「外来診療・訪問診療・予防医療」を3本柱とした医療を展開しています。個人的には、当院に来院された患者さんが、「ああ、生きていて良かった、この人生を選んで良かったんだ」と、自己肯定感を得て、満足してお帰りいただけることをめざして、日々診療を行っています。
週に4日も訪問診療を実施しているんですね。
「もしも通院できなくなったら」と、不安に思われて、訪問診療に積極的な当院を選んでくださる患者さんも多いようです。午前と午後の外来の間の2時間を訪問診療の時間として確保しています。さらに、本当は木曜の午後は休診なんですが、時間のかかる処置が必要な患者さんなどは、その時間をあてて対応しています。電話があると夜中も往診に向かう祖父の姿を当たり前のものとして育ったので、患者さんのために時間を惜しまないのは、私にとって当然のことなんです。
予防医療についてお聞かせください。

体の不調を感じたら、早めに受診していただきたいですが、そもそも病気にならないに越したことはありません。例えば、病気の予防や重症化を防ぐための予防接種では、インフルエンザ、新型コロナウイルス、肺炎球菌、日本脳炎、二種混合、子宮頸がんなど、各種ワクチンに対応しています。また、漢方でいう未病の段階で対応するなど、大事に至らないようにして差し上げるのも医師の責務だと思います。万が一、病気になっても早期発見・早期治療につなげることも大切ですから、検診にも力を入れています。当院では新潟市の特定健診を実施しており、心電図、心臓超音波、ホルター心電図、呼吸機能検査、胸部エックス線検査、胃がん検診、大腸がん検診、前立腺がん検診、肝炎ウイルス検診、睡眠時無呼吸症候群の簡易検査も可能です。
行政や福祉も巻き込みチーム医療を展開したい
設備面でのこだわりはありますか?

患者さんが受診しやすい環境づくりにはこだわっています。院内はバリアフリーで、80台の駐車場は間隔も広く、駐車が苦手な方も安心です。雪深い土地ですが、除雪機も備えています。主に院長が除雪作業を行い、たまに私もやらせてもらいますが、ストレス解消になるんですよ。待合室はゆったりした設計にして、国際空港で使用するような椅子をご用意し、快適に過ごせるために内装やインテリアにもこだわりました。また、大型モニターを設置し、お名前をお呼びする代わりに番号表示でのご案内にしたり、スマホでの事前問診、セルフ会計システムを導入し、スムーズでスピーディーな受診ができる工夫をしています。でも、失敗談もあります。担当医師を選択できるタッチパネルを設置したところ、患者さんが戸惑って混乱を招いたので、それは受付事務員が用いるツールとして活用することにしました。
患者さんが多いと、スムーズな診療にはスタッフの存在も大きいですね。
本当に、スタッフには助けられています。クリニックを運営していくためにスタッフの存在は欠かせませんが、それだけではありません。受付の「どうされました?」の一言でほっとするように、声かけや対応が患者さんの支えにもなると思うんです。当院の理念を共有し、ホスピタリティーあふれる医療を一体感を持って行っていきたいと考え、毎月、スタッフ全員と個別面談を行っています。その時に、きちんと褒めるところは褒めます。慌ただしい中、普段は言いそびれてしまうけれど、こちらがちゃんと認めていることがわかれば、モチベーションも高まると思うんです。また、新型コロナウイルス感染症に取り急ぎ対応するために、スタッフの休憩室を発熱患者さんの専用診察室にあてたので、新たにスタッフ専用休憩室を増築するなど、ハード面も改善しています。これからも、当院で働いていて良かったと思ってもらえるように、善処していきたいです。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

医師不足の土地で地域の皆さんのお役に立ちたいと、曽祖父の頃から続く志を受け継ぎ、日々診療にあたっており、多くの患者さんに受診していただいています。患者さんが増えるにつれ、患者さんを中心に、地域も巻き込んだチームとしての医療を展開していきたいと考えるようになりました。系列の「すみれ訪問看護ステーション」の訪問看護師の力を借りたり、介護が必要ならケアマネジャーに相談したり、地域包括支援センターを活用したり、必要に応じて近隣の中核病院と連携したり……と、医療機関や行政も含めたチームとして患者さんを支える体制づくりに尽力していきたい。そして、地域の皆さんには、健康で困ったことがあれば、どんなことでも気軽に相談にいらしていただきたいですね。来院した後、安心して笑顔でお帰りになる姿を見ること、感謝のお言葉をいただくことが、何よりの励みです。