寺崎 豊博 院長の独自取材記事
寺崎クリニック
(奈良市/近鉄奈良駅)
最終更新日:2023/06/30

近鉄奈良駅から南に徒歩15分程度、商店街を抜けたところにある「寺崎クリニック」。院長の寺崎豊博先生が、義父のクリニックを引き継ぐ形で2006年に開院した。奈良の歴史的町並みが残る「ならまち」で、長きにわたり地域住民の健康を支えている。泌尿器科を専門としながら生活習慣病の予防や在宅訪問診療にも注力。「患者さんを生涯見守っていきたい」という寺崎院長は、訪問看護ステーションやケアマネジャーなど、他職種のスタッフと密に連携を取って患者をサポートすることを重要視している。どんなことでも気軽に話してもらえる「かかりつけ医」でありたいという、優しくあたたかな寺崎院長。冗談を交えて楽しく会話する明るさも、患者に愛される理由の一つなのだろう。そんな寺崎院長が大切にしてきた想いや治療方針について、詳しく聞いた。
(取材日2022年6月21日)
先代から「ならまち」の高齢者を親身に支え続ける
これまでのクリニックの歴史をお聞かせください。

もともと私の義理の父が40年にわたって開業してきたクリニックを継承する形で、当院を開院いたしました。開院前、義父の求めもあって往診や診療の手伝いをしていたのですが、医師としての目が本当に確かだったことを今でも覚えています。義父は呼吸器が専門だったのですが、私だったらCTを使用しないと判断が難しいような病変も、胸部エックス線で診断していましたから。あの診断の的確さ、素晴らしさは真似ができないなと今でも思っています。そして、患者さんに心から信頼されていたところも、当時からとても尊敬していましたね。
先生は、医師としてどのような道を歩まれてきたのですか?
京都府立医科大学を卒業後、京都府立医科大学病院・舞鶴赤十字病院を中心に勤務医として経験を積んできました。幼い頃、小児科医の先生が優しくて、ずっと憧れの気持ちを抱いていたんです。それがきっかけとなって、医師をめざしました。ただ、医師というのは「志」だけでなれるものではないですね。志のために努力を積み重ねていくことで「医者になっていく」のだなと、そう感じています。今でも、休みの日を利用して講習会・ウェブ講習会などに参加し、さまざまな医療知識の習得に励んでいます。これも、きっと医師という仕事が好きだから続けていられるんだと思いますね。勉強を積みながら、義父が大切にしてきた医療をこれからも大切に引き継いでいきたいと考えています。
どのような患者さんが多く来院されていますか?

当院は、奈良の歴史的町並みが残されている「ならまち」に位置しています。伸びやかでおおらかで、とても良いところですよ。大阪や京都にも近いこともあってか、皆さん教養が深く、医療のこともたいへんよく理解されています。関西圏は高度な医療機関も多いですし、患者さんにとって一番良い医療を選べるよう、ともにサポートすることも私の大きな役目だと思っています。ただ、やはり若い人は都市部に出ていく傾向にあるため、高齢の患者さんが多いですね。高齢の一人暮らしの患者さんもいらっしゃるので、何かあった時にご家族と連絡を取り合える体制づくりを大切にしています。
専門の医師・他職種と密に連携した、包括的なサポート
診療されている科目について、詳しくお聞かせください。

私はもともと、泌尿器科を専門として力を入れてきました。「診断から治療、その後もずっと同じ科で診られる」というのが、この科のとても良いところなんです。例えば内科だと、手術になると一旦外科に移りますよね。泌尿器科はそういう風に治療の流れが途絶されることがないんです。患者さんを最初から最後まで治療できることに魅力を感じていましたし、その治療方法は、当院が大切にしている治療方針にも通じていますね。他には、脂質異常症や高血圧などのいわゆる生活習慣病も診療しています。動脈硬化の病変を予防する治療にも力を入れており、健康診断の結果を見て薬の必要性なども判断しています。もちろん、判断が難しい病変については専門の医師と連携し、適切な治療を受けてもらえる体制を整えていますのでご安心ください。
在宅訪問診療にもたいへん力を入れているとお聞きしました。
もともとは、当院に通院くださっていた患者さんで、骨折や病気などの理由で通院できなくなった方に対して在宅診療を始めました。動くことが困難になってしまった場合、まず介護認定の準備・手配を行います。その後、ご家族にこれからの計画を説明してから、治療やリハビリテーションを進めていきます。がん患者さんの訪問診療の場合は、抗がん剤の副作用に対するフォローも重要。「食欲がない」とか「熱が出た」などの細かな症状や不安へのケアが必要ですね。そのためにも、訪問看護ステーションやケアマネジャーさんと一緒になって患者さんをサポートすることがとても大切だと感じています。今では、そういった外部機関の方から患者さんをご紹介いただき、訪問診療に伺うことも多くなりました。
患者さんを支えるためには、他職種や外部機関の方との連携がとても重要なんですね。

その通りです。在宅訪問診療では、連携が中心にあります。例えば、「患者さんのご家族の想い」など、医師には直接伝わりにくいけれど重要なことってたくさんあります。それをつないでくれるのが訪問介護ステーションだとかケアマネジャーさんなんですね。当院では、そんな他職種の皆さんとリアルタイムでつながれる医療コミュニケーションツールを導入しています。医師・薬剤師・ケアマネジャーなど、患者さんに関わるスタッフ同士で情報を共有し、見守れる仕組みになっているんですよ。例えば、血圧や処方薬などをはじめ、足の状態が弱っていて歩きにくいだとか、細かいことも伝え合うようにしています。そうすることで、患者さんとそのご家族に行き届いたサポートができると考えています。
何でも気軽に相談できる「かかりつけ医」をめざして
これから、どのようなクリニックにしていきたいとお考えですか?

これまでと変わらず、通院してくださる患者さんのことを、生涯大切に見守っていきたいですね。そして、ご自身のことだけではなくて、友達とか家族のことなど、何でも相談してもらえるような「かかりつけ医」でありたいと思っています。訪問診療をご利用いただいた患者さんのお子さんが、「自分も当院にかかりたい」と通院してくださるケースが結構あるんです。そうやって、ご家族やお知り合いを通じたご縁で診療が広げられたら、とても幸せだなと感じます。そして、先ほども述べましたが、良い治療を提供するためには、信頼できる訪問看護やケアマネジャーさんにサポートしてもらえる体制づくりも重要ですね。そんな、人と人とのつながりを大切にする診療をずっと続けていきたいです。
休日はどのようにお過ごしですか?
ウェブ講習会や勉強会などに参加したり、医学雑誌を読むことにあてています。新しい知識を習得することは本当に楽しいですし、いつまでたっても飽きませんね。あと、奈良ならではなのですが、「鹿サポーターズクラブ」というボランディア活動に参加しています。奈良公園内の鹿をパトロールしたり、鹿の角きりのお手伝いなどをするんですよ。海外の観光客の方たちにご案内したりもします。コロナ禍になって行けていないので、落ち着いたら再開できたらいいなと思っています。
最後に、患者さんへメッセージをお願いします。

高齢の患者さんには、自分を高齢者と思いすぎないでほしいと、よく伝えているんです。「あれもできなくなった、これもできなくなった」と嘆く方もいらっしゃいますが、「それをどう補っていくか、私と一緒に考えましょう!」と言いたいですね。例えば、「歩きやすいように、しっかりしたサポーターを作りましょう」とか。「コーラス始めてみない?」とか。できないことに目を向けるのではなく、いかに楽しく暮らせるようにできるか、工夫しながら一緒に探していけたらなと思っています。あとは、新型コロナウイルス感染症に関する情報をはじめ、患者さんにとって何が正しいかを取捨選択できるお手伝いがしたいですね。地域の情報センターのような役割ができたらなと思っています。「地元の気さくなおっちゃん」だと思って、ぜひ気軽に会いに来てくださいね。