薬を飲んでも症状が治まらない人へ
花粉症治療のさらなる選択肢
わしお耳鼻咽喉科
(西宮市/西宮北口駅)
最終更新日:2025/01/20


- 保険診療
スギやヒノキなどの花粉が主な原因となり、くしゃみや鼻水などの症状を引き起こす花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)。発症する人の割合は年々増加し、今や国民病の一つとまで呼ばれて多くの人の悩みの種となっている。症状を止めようと飲み薬や点眼・点鼻薬などを試してみても、なかなか治らずに不満を感じている人は多い。こうした花粉症に対して正しい情報の提供に努め、さまざまなアプローチを用意して治療の選択肢を提示してくれるのが「わしお耳鼻咽喉科」の鷲尾有司院長だ。なぜ薬を飲んでも症状が改善しないのか、他にどのような治療法があるのか、日本アレルギー学会アレルギー専門医でもある鷲尾院長に素朴な疑問を投げかけてみた。
(取材日2024年5月17日)
目次
対症療法か免疫療法か、それぞれのメリットとデメリットを知ることから治療を始めよう
- Q薬を飲んでも症状が治まらないときはどうしたらよいのでしょう。
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A
▲アレルギーの専門家であり、耳鼻咽喉科の専門家でもある鷲尾院長
あらゆる病気に共通する基本として、治療がうまくいかない場合は、まず正しい診断や処方が適切に行われているかどうか、必ず見直してみる必要があります。もう一つのポイントは、例えば、花粉の量が多ければ症状が強く、少なければ症状が弱いため、薬の作用も花粉の飛散量に大きく影響されるというのが大前提です。同じ薬でも「あの人には合っていて、自分には合わない」といった現象は、生活環境が異なれば当然のこと。体質との相性以上に、外的要素による影響が強いことを知っておいてください。こうした知識を皆さんにお伝えすることも、担当医師が果たすべき重要な責務と私は考えています。
- Q薬の他に、どのような治療の選択肢がありますか?
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A
▲院内にある手作りパンフレット
花粉症治療は、取りあえず症状を止めるための対症療法と、根本的な体質改善をめざすアレルゲン免疫療法に大別されます。対症療法には薬やレーザー治療、抗体注射などがあり、根治をめざす治療法としては舌下免疫療法や皮下免疫療法があります。小児の患者さんや花粉症以外のアレルギーがある方、薬による既存の治療ではなかなか症状改善が図れない方、本気で治そうという意識のある方には、やはり免疫療法をお勧めします。当院ではこれらの治療のすべてに対応しており、さまざまな選択肢を提示可能です。それぞれの目的やメリットとデメリット、治療の適応や注意点などを丁寧にご説明しますので、ご自身に合った治療法をお選びください。
- Q花粉症のレーザー治療について教えてください。
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A
▲検査機器も充実している院内
レーザー治療の鼻粘膜焼灼術は、レーザー照射で鼻粘膜の表面を一時的に壊し、アレルギー反応を起こさないように変性させるのが目的です。飲み薬や点鼻薬では困難な、慢性的な鼻詰まりに適した治療です。治療は日帰りで受けられ、所要時間は麻酔を含めて30分程度。服薬による日中の眠気などの心配もありません。薬の効果に満足できない小学校高学年以上のお子さんや、薬を飲めない妊婦さんにもお勧めしています。逆にデメリットは、時間がたてば元の状態に戻ってしまう恐れがあること。また、イネ科など雑草系の花粉が集中する環境には弱く、花粉の量に左右される点では対症療法に過ぎません。花粉症の薬と同様根本的な解決策ではありません。
- Q近年は舌下免疫療法がポピュラーなようですね。
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A
▲患者に合わせた治療を行う
アレルギーの根本治療をめざし、原因物質であるアレルゲンを体内に投与することで徐々に体質の改善を図るのが免疫療法です。中でも舌下免疫療法は1日1回、薬を舌の下にしばらく含んで飲み込むだけ。通院回数や苦痛が少ないことから注目を集め、今では一般にも広く知られるようになりました。ただし、3〜5年続けなければいけません。まだあまり予後のデータが出そろっていない部分もありますが、根気強く続けていくことが大切です。舌下免疫療法は、当院でも花粉症根本治療として有用であると認識しており、もう一つの皮下免疫療法とともに治療の選択肢として患者さんにご提案しています。
- Q皮下免疫療法とはどのような治療ですか?
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A
▲通院頻度や苦痛が少ない舌下免疫療法にも注力する
アレルゲンを体に入れる点では舌下免疫療法と同様ですが、注射を使って投与するのが皮下免疫療法です。数あるアレルギー治療の中でも歴史が古く、根治を目標とした治療とされていますが、その反面、アナフィラキシーなどの注意も必要なため、提供する医師の少ないことが最大の問題点となっています。当院では、注射は週1回からスタートし、7〜8ヵ月してから2週間に1回、1年後から月1回と徐々に間隔を開けていきます。注射薬の投与量も医師のさじ加減一つ。そこも扱う医師が少ない原因でしょう。私は大学病院で臨床や研究に長く携わっていましたが、皮下免疫療法に対応できるスキルはアレルギー専門医にとって重要なものだと考えています。