鷲尾 有司 院長の独自取材記事
わしお耳鼻咽喉科
(西宮市/西宮北口駅)
最終更新日:2021/10/12
阪急西宮北口駅・JR甲子園口駅から阪急バスに乗車。熊野町停留所のすぐ目の前にあるのが「わしお耳鼻咽喉科」だ。院内には内視鏡下鼻内副鼻腔手術にも対応できる設備を整え、小さな子ども連れでも安心して通院できるように、おむつ替えシートやキッズコーナーが設置されている。院長の鷲尾有司(わしお・ゆうし)先生は、日本アレルギー学会アレルギー専門医の資格を持ち、鼻炎、喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーと多岐にわたることも多い子どものアレルギーを総合的に診療。正確で新しい情報を患者に提供し、病気に対する正しい知識を持ってもらう診療をモットーに、患者と日々向き合う鷲尾院長に話を聞いた。
(取材日2019年3月4日)
正しく新しい情報を正確に伝えることを心がける
どんな患者さんが来られますか?
赤ちゃんからご高齢の方まで、当院には幅広い年齢層の患者さんが来られます。特にこの辺りはファミリー世帯が多い地域ということもあり、患者さんの大半はお子さんとそのご家族の方ですね。中でも私の専門であるアレルギー疾患は、生まれてすぐの頃から大人になるまで、長く付き合っていかなければならない疾患です。アレルギーのことを正しく理解してもらうのと同時に、お子さんの成長を一緒に見守りながら、患者さんに寄り添う医療をモットーにしています。
患者さんと接する際に心がけておられることを教えてください。
診療は患者さんが来られたとき、椅子に座る前から始まっているといわれています。正しい診断をするための手がかりとして、症状や検査結果だけを重視するのではなく、患者さんが診察室に入られる様子などもしっかり観察するようにしています。また最近は、インターネットが普及して、病気や治療についてのさまざまな情報が簡単に手に入るようになりました。ですがその一方で、情報の質や信憑性も問題になっており、情報過多によって不安に陥ってしまっている親御さんも多いように感じます。診療の際は不安に感じていることはないかしっかりお聞きして、私が知り得る限りの新しく正しい医療情報をわかりやすくお伝えするように意識しています。
患者さんの目線に合わせた診療を重視されておられるのですね。
病名としてよく使われる「風邪」ですが、咳や鼻水が出るといった症状を「風邪」とおっしゃる方もいれば、熱がある、体がだるいなどの体調不良を表す用語として「風邪」とおっしゃる方もいます。中には軽いインフルエンザを「風邪」と表現する方もいて、「風邪」と言っても人によって意味合いはさまざまですし、患者さんがイメージする「風邪」と、医師が医学的な診断に基づいて用いる「風邪」との間にもズレがあります。問診を行う際は、患者さんが訴える「風邪」にはさまざまなニュアンスが含まれていることを意識して、こちらが説明する際も難しい医学用語を使うのではなく、患者さんが理解しやすい表現を用いて、明確でわかりやすい説明を心がけるようにしています。
できるだけ薬に頼らず、子どもの治す力を伸ばす治療を
開放的な雰囲気のクリニックですね。
患者さんにとってクリニックは、できれば行きたくないところですよね。特に耳鼻科は、お子さんにとって怖いところだと思うので、通院がストレスにならないように、医療機関らしくないデザインを意識しました。診察室には大きな窓を設けており、室内からでも季節の変化や気候の状態がわかるんですよ。明るく開放的な場所で診療することで、私にとっても患者さんにとっても、健康に良い影響を与えるように思います。
診療を通じて、感じていることがありましたらお聞かせください。
抗生剤は感染症によく効くといったイメージがあるため、風邪の治療で抗生剤の処方を希望される親御さんも少なくありません。ですが、風邪はウイルスが引き起こす疾患なので、細菌を抑えるための抗生剤を飲んでも効果は期待できないんです。ただそこで「効かないから処方しない」と言ってしまっては、抗生剤に安心を求めていた親御さんを不安にさせてしまうだけなので、親御さんには治療薬の正しい知識をわかりやすく説明して、お子さんが自分の力で病気を治すのをサポートするような、できるだけ薬に依存しない治療法を提案するようにしています。親御さんの不安を払拭しながら、お子さんの健康を一緒に考えていく医療を提供することも医師の大切な役目だと考えています。
お薬の処方で心がけていることはありますか?
「咳止めでは病気は治りませんよ」というと、皆さん意外な顔をされます。咳が出たら咳止めじゃないの?と思うかもしれませんが、対症療法で咳が落ち着いても、一時的に症状が抑えられただけで病気が治ったわけではないのです。しばらくするとまた咳が出てしまうこともあるし、原因にアプローチしない限り止まらない咳もあります。薬を処方する上で大事なことは、その薬の使用が結果的に患者さんにとってメリットがあるということです。体調や体質、病気の性質などをしっかり見極めた上で、その人の状態に合った薬の処方をするように努めています。
アレルギーを総合的な視点で診る
日帰り手術に対応されていますね。
病状によっては外科的な手術が必要な場合もありますが、地域の耳鼻咽喉科クリニックで手術を行っているところはそれほど多くはありません。手術を受けたくても時間的な制約などにより大規模病院の受診が難しく、つらい症状を我慢したまま過ごしておられる方もいらっしゃると思います。そこで、クリニックと大学病院の隙間を少しでも埋めたいと考え、当院では日帰り手術に取り組める設備を整えました。現在、一番多いのは鼻ポリープ(鼻茸)や蓄膿症に対する内視鏡下鼻内副鼻腔手術ですが、ほかにも慢性穿孔性中耳炎に対する鼓膜閉鎖手術、声帯ポリープ、ポリープ様声帯に対する音声改善のための手術も行っています。もっとも、日帰り手術では難しい症例の場合は、適した病院を紹介するようにしています。
アレルギーの治療も積極的に行っておられますね。
近年、アレルギーに苦しむ方が増えており、当院にも鼻詰まりや花粉症などのアレルギー症状を抱えた患者さんも多く受診されています。アレルギー性鼻炎があるということは、気管支喘息、小児喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、食物アレルギーなど、ほかのアレルギー症状がこれから出てくる可能性も十分考えられますから、アレルギーの専門治療を行う当院では、耳鼻咽喉科だから鼻の症状だけを診るというのではなく、総合的なアレルギーの治療を基本スタンスとしています。アレルギーは何科を受診すればいいのかわからないという方も多いと思いますが、心配な症状がある方はまずは一度ご相談ください。
複数の診療科の併行受診ではどんなことが問題となりますか?
実際にお子さんのアレルギー疾患で、耳鼻科、小児科、皮膚科、内科など、いくつものクリニックを並行して受診されている方もいて、親御さんの負担は大変なものだと思います。アレルギーに対する見解に大きな違いはないと思いますが、それぞれの診療科の先生によって説明の仕方は異なりますので、親御さんは混乱しますよね。アレルギー治療で最も重要なことは、患者さんにアレルギー疾患について正しい知識をもってもらうことです。さまざまな治療法があることをきちんと伝えた上で、アレルギーとどのように向き合っていくか、アプローチの仕方を一緒に探っていきます。お子さんがアレルギーの場合、保護者の方もアレルギー体質である確率が高いので、ご両親にもアレルギー検査を受けてもらうなど、病気に対する理解を深めた上で、その子の体質や重症度に合わせた治療法を提案しています。
今後、力を入れたいことがあれば教えてください。
私の大学院時代からの研究テーマであるアレルギーの免疫療法、以前は減感作療法と呼んでいた治療を、今後も積極的に取り入れていきたいと考えています。これはアレルギーの原因物質に体を慣らしていくもので、アレルゲンを含む治療薬を皮下に注射する皮下免疫療法以外に、治療薬を舌の裏側に投与する舌下免疫療法が選択できるようになりました。現在のところ、スギ花粉とダニに対するものだけですが、適応できるかどうか検査した上で、患者さんの続けやすい治療法を提案していきたいと思います。今後も、患者さんの声を拾い上げていきながら、地域の健康維持に貢献するとともに、スタッフが楽しく働けて、患者さんにとっても快適な場所であるクリニックにしたいですね。