高尾 成久 院長の独自取材記事
八重垣レディースクリニック
(松江市/揖屋駅)
最終更新日:2025/07/14

東出雲インターチェンジを降りてすぐにある「八重垣レディースクリニック」。市内外からのアクセスに便利な場所に位置しながらも広い駐車場を確保した敷地は、周りに高い建物がなく空が広く感じられる開放的なロケーション。外観のデザイン・色合いからも温かみが伝わるこのクリニックで不妊治療をメインに月経困難症・子宮内膜症など幅広い悩みで訪れる人を支え続けるのは長年、不妊治療に携わってきた高尾成久院長。「体と経済面への負担が少なく、また効果の見込める提案を心がけています。不妊のことも月経の痛みのことも、我慢せずにご相談ください」と穏やかな笑顔で呼びかける高尾院長に、不妊治療に関することを中心に話を聞いた。
(取材日2021年2月22日/情報更新日2025年7月8日)
勤務医時代から長年実績を積んできた不妊治療が柱
先生が婦人科医になられたきっかけを教えてください。

今思えば、父の闘病する姿を間近で見ていたことが医療関係の仕事に就くことを意識し始めたきっかけだったように思います。産婦人科に興味を抱くようになったのは、鳥取大学医学部で医師をめざし学んだ最終年次の頃ですね。当時日本では生殖医療の創成期を迎えていました。そんな中、同大学の産婦人科は新しい分野を切り開いていくために精力的に取り組んでいましたから、その姿勢に心が動かされたのでしょう。そして、やはり新しい命の誕生の神秘にふれたことが私にとってはとても大きかったのだと思います。
どういった経緯で開業されたのでしょう。
私が産婦人科の研修医として勤務していた頃、派遣先の病院で生殖医療に取り組んでいるところは、そう多くありませんでした。ですが私の場合、産婦人科の手術やお産を担う傍ら、外来で不妊治療をご希望される方の診療の中で途切れることなく生殖医療に携わる機会は頂けていました。そのような中で「生殖医療に特化した診療がしてみたい」という思いが次第に強くなっていったんですね。とは言っても、病院では診療全般に力を入れるべきで、特定の分野だけに専念するわけにはいきませんので、不妊治療を主とした、現在のクリニックを開業した、というわけです。
不妊治療では妊娠何週目までこちらで診てもらえるのでしょうか?

出産予定日がわかる、妊娠9週~10週目までは当院で、その後は安心してお任せできる施設に紹介させていただいています。無事に赤ちゃんの顔を見るまで、「ここまでくれば安心」と言いきることはできませんが、流産など特に注意を払う必要がある妊娠初期を当院でフォローすることで、患者さんの不安を軽減できればと考えています。順調にいけば、妊娠5週目くらいには胎のうという赤ちゃんを育てる袋が出てきて、6週目に差しかかると心拍が確認でき、そして9週目に入ると体が2cmほど、鼓動もより強いものになってくれます。こういった過程をきちんとたどっていくかを、専門家としてしっかり見守らせていただきます。
年齢や原因など背景に応じて最適な不妊治療を
不妊治療について詳しく教えてください。

排卵が自然周期で生じているなら、「タイミング療法」を最初のステップとしています。卵管内での精子の寿命は約3日、さらに卵子の寿命は排卵後24時間ほどといわれており、私はよく「排卵日の前から1~2日間のタイミングが大切なんだよ」とご説明するのですが、その間の妊娠しやすい期間に夫婦生活を持つようにしていただくものです。排卵がうまく生じていない場合などは、排卵日に合わせて、内服薬や注射で排卵の働きを促し、この療法に臨んでもらうこともあります。この次のステップが「人工授精」で、これは活発な精子だけを集めて、卵管に届けるという方法です。この人工受精までが「一般不妊治療」といわれるものになります。
一般不妊治療の次のステップは?
タイミング療法も人工授精も4回を一つの目安に、当院の場合は35歳未満なら、タイミング療法を4回ほど、その後人工授精を4回ほど行って、結果が出なければ次のステップである体外受精へ進ませていただきます。年齢によっては、早いステップアップもお勧めしていますね。また、検査で不妊の原因がわからない方や、若い方でも卵管が詰まってしまっていたり、不妊期間が3年ほどと長く続いていたりする場合は、治療結果を見ながら早めのステップアップや、体外受精から始めるなど、その方に合わせたプランを考えていきます。その他、精子の活動性が極端に低い場合や、卵巣予備能検査(AMH検査)の結果から卵巣が備える妊娠する力が低いと判断された場合も同じく、どのようなステップで進めていくべきか慎重に見極めていきます。
不妊治療を始める目安が知りたいです。

「妊娠を望んでいるものの、1年間かなわない」というのが不妊症の定義といわれています。それを一つの目安に、夫婦生活を持てているにも関わらず、1年を超えて妊娠につながらない場合、「何らかの原因があるのかも」と考えてほしいです。しかし、あくまで目安ですから、生理が2~3ヵ月に一度しか来ない、まったく来ないといった、別にご心配なことがある場合は、1年を待たずに受診し、検査を受けた上で必要な治療に臨んでいただければと思います。あと、年齢も一つの目安。30歳未満なら結婚されて1年ほどで、35歳以上なら半年したら、40歳以上ならもっと早めに相談をと呼びかけています。
2022年から不妊治療が保険適用になりましたね。
保険適用の範囲が広がり、一般不妊治療に加えて、人工授精や体外受精、AMH検査なども対象となり、より治療を受けやすくなりました。経済面での負担が軽減されて、以前よりも若いご夫婦からの相談も増えてきたと感じています。一方で、治療には月に数回の継続的な通院が必要だったりと、パートナー間はもちろん、家族や職場などの周りの方のサポートが不可欠です。お子さんを望むご夫婦が安心して治療に臨める環境を、地域で一緒に作っていきたいと思っています。
月経困難症など婦人科症状・疾患にも幅広く対応
プレ妊活の方に向けた情報があれば教えてほしいです。

当院では、妊娠を望むカップルやご夫婦に対して、体のコンディションを調べる「プレコンセプションチェック」も行っています。検査からご自身の状態を知り、健康な生活を送ることで妊娠につなげていけたらと思っています。他にも、2025年7月から新たに、看護師による「妊活(不妊治療)相談」を開始しました。不妊治療の初診やプレコンセプションチェックの場合、ご夫婦そろっての受診が必要となりますが、妊活相談はお一人でお越しいただいても大丈夫です。妊活や不妊治療に関する不安や疑問、悩みなどを気軽に相談していただける場所にできればと思っています。
若い方の月経の悩みもご相談に乗っていただけるとか。
はい。月経のお悩みで多いものに月経困難症があるのですが、その背景に子宮内膜症があることも少なくありません。子宮内膜症は生理痛の他、排便時の違和感や性交痛などを引き起こすつらいもの。低用量ピルを処方して症状の緩和をめざしていきます。初経以降は処方できる薬ですので、一人で我慢せずに早めにご相談いただきたいです。若い時に月経困難症で受診された際には子宮内膜症がなくとも、結婚・妊娠期に発症したといったケースもあるので注意していただきたいです。ちなみに月経前症候群については、低用量ピルの応用ができないかという観点で研究が進み、期待されています。一昔前は、月経は「毎月あるもので痛みはあって当たり前」とされていましたが、今はうまくコントロールを図る時代になりました。その他、婦人科疾患に関するお悩みや、市の子宮がん検診・子宮頸がんワクチンなどにも対応しています。何か不安なことがあれば気軽にご相談ください。
高尾先生が治療の中で心がけていることを教えてください。

その方に合った治療をご提案することですね。悩まれている期間や原因はもちろん、生活スタイルや生き方も、一人ひとり異なります。例えば不妊治療なら、ステップの中のどこから始めればいいか、どこでステップを切り替えたほうがいいかは本当にケースバイケースです。タイミング療法で妊娠が望める人に、体外受精を提案するべきではありませんし、逆に、体外受精を視野に入れたほうがいい人には、早めにタイミング療法からそちらに切り替えていただく必要があります。その見極めはとても難しく、悩ましいところですが、当院に来てくださったからには、その期待に応えたいと強く思います。そのために、その方にとって最も効果が見込め、そして心身や人生にとって負担が少ない治療ができるよう、日々努めています。
自由診療費用の目安
自由診療とは人工授精/1万7000円~、顕微授精/37万円~、体外受精/32万円~、卵巣予備能検査(AMH検査)/5000円、排卵誘発剤(経口クロミフェン)/110円/錠、排卵誘発剤(注射 hMGまたはFSH製剤)/1640円〜1780円/本、排卵誘発剤(注射 hCG製剤)/2200円〜2800円/本、プレコンセプションチェック/2万6000円〜
※不妊治療やAMH検査、排卵誘発剤は原則保険適用となりますが、年齢や回数などによって一部制限があります。詳しくはご相談ください。