谷口 聡 理事長の独自取材記事
たにぐちファミリークリニック
(三郷市/新三郷駅)
最終更新日:2025/01/22

三郷という地域に密着し、患者やその家族のかかりつけとして親身に診療を行う「たにぐちファミリークリニック」。一般的な風邪症状から谷口聡理事長の専門性を生かした胃内視鏡検査や粉瘤の治療、さらに水曜は在宅医療まで多様なニーズに対応しており、2025年1月には新たに整形外科も開設した。理事長業務がありつつもさまざまな検査・治療を自ら担当し、在宅の患者からの緊急連絡も自らが受けるなど、いかなる場合でも患者ファーストの姿勢を崩さない谷口理事長。幼少期や勤務医時代に見聞きした経験が原動力となり、多忙な日々もさほど苦に感じていないようだ。休日も天体観測や音楽鑑賞などアクティブに過ごす谷口理事長に、同院の強み法人名の由来、診療で心がけていることなどを聞いた。
(取材日2024年7月1日/情報更新日2025年1月20日)
地域住民を温かく包み込み、求められる医療に取り組む
医院の特徴や患者さんの傾向を伺います。

当院は内科や消化器内科、外科を中心に幅広い診療に対応しており、一通りの検査や治療が可能です。私が過去に勤めていた三愛会総合病院や三郷中央総合病院などとの連携体制も整っていますので、些細なことでも不調を感じたらまずはお越しいただきたいと考えています。診療は医院での外来と、患者さんのご自宅や施設で行う在宅医療の2本柱。都内に通勤する若い方と団地に暮らすご高齢者の二極化が進んでいるこの地域で、患者さんはやはりご高齢の方がメインですね。三愛会総合病院が当院から近いこともあり、もともと顔見知りの患者さんも多くいらっしゃいます。10年ほど前からは歩行が難しくなった方や施設に入所した方が在宅医療を希望されるケースが増えており、水曜は訪問診療の日としているのも特徴です。
医院名と「エレソル」という法人名の由来も気になります。
医院名は、「幅広い世代が通える」というコンセプトがわかりやすく伝わるようファミリークリニックという名前にしました。そして法人名のエレソルは、象のエレファントの「エレ」と、ラテン語で太陽を意味する「ソル」を組み合わせた造語です。象は多世代で集団生活を送り、助け合いながら生きています。そんな象のようにみんなが寄り添い、当院が地域を温かく照らしながら、患者さんを2世代、3世代にわたって診たいという思いを込めて名付けました。実際に親子でご来院される患者さんもおり、地域のかかりつけとして多くの方の健康をサポートできていることをうれしく思います。
先進の設備も積極的に導入されているそうですね。

私が新しいもの好きということもあり、受付周りから検査体制、診療に至るまであらゆる部分で医療のDX化を進めています。2023年にはより精度の高い診断のためにCTを設置し、2024の2月にはウェブ予約システムも導入しました。これまでの長い待ち時間が大幅に短縮され、患者さんにも喜んでいただけています。また、こちらの予約システムでは問診もある程度済ませることができ、院内でまた一から問診票に記入する手間がありません。今後は自動会計システムなども取り入れ、さらに受診の利便性を高めていきたいですね。在宅医療においては、人工呼吸器をつけている患者さんの血中の酸素・二酸化炭素量などを調べられる血液ガス分析装置も購入しました。人工呼吸器を設定する際、感覚のみに頼らず根拠に基づいて操作できるようにと導入した機器で、保有している医院は少ないと思います。
患者の幸せを第一に、経験を生かした検査・治療を提供
同院の胃内視鏡検査の特徴について教えてください。

当院では鼻からスコープを挿入する経鼻内視鏡を採用しており、経口の場合にも同様のカメラを用いて検査を行っています。スコープはうどんくらいの細さなので、通常の経口内視鏡では異物感があり、吐き気を催してしまう患者さんもだいぶ楽に感じていただけると思います。眠っている状態で検査を行えるよう鎮静剤を使用する方法もありますが、合併症のリスクがゼロではないため安全性に配慮し、鎮静剤を使わない検査をお勧めしています。また、私は勤務医の頃から消化器外科の医師として胃内視鏡検査に携わってきた経験があり、当院での検査も私が担当しています。検査におけるこだわりは、がんの見落としを極力防止するために高性能の内視鏡システムを活用していること。こちらは多種類の光源を当てて患部を詳細に観察できる機能も備えた装置です。
ほかにも注力している治療はありますか?
内視鏡検査と同じく、外科診療を行っていたときに多数手がけた粉瘤の手術にも注力しています。粉瘤の患者さんは決して少なくないのですが見過ごされやすい側面があり、つぶれたり破裂したりしてからいらっしゃる患者さんもよく見受けられます。小さいうちに切除したほうが傷痕も小さいもので済みますので、粉瘤に気づいたらお早めに受診いただきたいですね。個人的にもできるだけ傷痕が小さい治療をめざしており、術前にはどの程度切除が可能なのかを正しく診断するために超音波検査を実施しています。そしてすぐに切除するのが難しそうな場合は抗生物質で粉瘤の縮小を図り、数ヵ月後に切除に臨むなど適切に対応。適応の患者さんには、傷痕を5mmほどに抑えることをめざす方法での手術も行っています。基本的には院内ですべての処置を完結でき、非常に大きな粉瘤であっても提携先の病院で手術を受けられるようご案内が可能です。
診療で大切にしていることをお聞きします。

病気を治療することも大切ですが、それ以上に「患者さんがハッピーであるか」という観点を重視しています。「数値が悪いから改善しよう」ではなく「どうしたらこの方が幸せになれるのか」を初めに考え、そのために必要な医療を組み立てていくという順番です。望まない医療であればこちら側が一歩引き、真に求められる医療を模索するのが私のやり方で、患者さんとの丁寧なコミュニケーションは欠かせません。医学的な観点からどうしても必要なことは粘り強くご説明し、医療的には可能でも患者さんの幸せにつながらないのであればしないこともある。あんばいが難しいときもありますが、常に気を配っているところですね。
全人的な医療を行える外科医師に憧れて医学の世界へ
先生が医師を志したきっかけを教えてください。

子どもの頃に見た医療系の漫画やドラマに影響され、「外科医師ってかっこいいな」と憧れたのがきっかけです。加えて家族の面倒は家族で見る、という昔ながらの文化の中で育ち、往診の先生が家に来る姿もよく見ていましたので、自分も一通り何でもできる医師になろうと思いました。大学を卒業後はプライマリケア、とりわけ全人的な医療をめざすべく、呼吸器・心臓血管・小児外科・内分泌など幅広い診療を経験できる外科に入局しました。そこでいろいろな患者さんと出会いながら、多様な治療に対応できるよう基本を勉強していったのを覚えています。
中でも印象に残っているご経験はありますか?
勤務医時代、まだ30代と若いものの、末期の胃がんを患っていた患者さんを診療したことですね。その方には小さなお子さんもおり、よく父子で病室にも訪れていましたが、残念ながらついに助かりませんでした。当時の光景が本当につらく切なくて、今でもずっと「こうした人たちを一人でも多く減らしたい」という気持ちで診療にあたっています。現在はピロリ菌検診が普及したことで早期に除菌が図れるケースが増えました。とはいえ胃がんの患者数もまだまだ多い状況です。だからこそ啓発活動や在宅の患者さんへの抗がん剤治療などに取り組んでおり、普段の診療時もピロリ菌の検査を受けていない方には積極的にお声がけをしています。
今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。

まだアイデアの段階ではありますが、今後は近隣地域に分院をつくり、粉瘤の治療などに一層注力したいと考えています。医療と介護の連携強化やサービスの充実という点で、介護施設との連携もできたらいいですね。これらはより多くの患者さんに対応するために考えていることで、実現に向けて少しずつでも法人を大きくしていく予定です。そして当院は、分野を問わず気軽に相談できるクリニックとして皆さんをお待ちしております。特に粉瘤は悪化する前の受診が重要なため、朝起きたときにできものを見つけた場合は一度ご連絡いただければと思います。胃内視鏡検査も健康診断の意味合いで定期的に受けている方もおりますので、ご興味があれば遠慮せずお申し出ください。些細な事であっても、お悩みを抱えている多くの方の力になれれば幸いです。