井内 寛之 院長の独自取材記事
いうち耳鼻咽喉科
(鹿児島市/坂之上駅)
最終更新日:2024/10/15
2024年4月に坂之上駅の住宅街に開業した「いうち耳鼻咽喉科」。院長の井内寛之先生は、鹿児島大学病院や霧島市立医師会医療センターで頭頸部のがんの手術をはじめ、数多くの臨床や研究、後進の指導に取り組んできた医師だ。この地で長年診療を行ってきた耳鼻咽喉科の患者を引き継ぐ、先進の機器とスタッフのチームワークを生かし、さらなる診療の充実をめざしている。「地域の方が気軽に相談できる医院にしたい」と優しい笑顔を見せる井内院長のもとには、特にアレルギー性鼻炎など、身近な疾患を抱える子どもの患者が多く訪れている。井内院長に、医院のめざす姿や注力している治療、診療への想いを聞いた。
(取材日2024年9月4日)
地域の患者が安心して気軽に相談できる医院をめざす
地域の様子や患者層について教えてください。
この辺りは海が近く自然が豊かな所です。鹿児島国際大学が近くにあるので、若い方などの人通りが多い印象ですね。患者層は幼児から小学生のお子さんが中心で、その親御さんも一緒に受診されています。近隣の方はもちろん、少し南に下った喜入地区から来られる方もいらっしゃいます。症状としては、アレルギー性鼻炎の方が多く、そのほかに中耳炎や鼻風邪・喉風邪などの身近な疾患、またインフルエンザなどの感染症の方もいらっしゃいます。現在当院は医師である私のほか、看護師が11人と事務系のスタッフが5人の総勢16人の体制で診療にあたっています。
井内院長が耳鼻咽喉科の医師をめざした理由とご経歴を伺います。
耳鼻咽喉科の道に進んだのは、手術をしたいというのが大きな動機です。さらに耳鼻咽喉科は、例えばアレルギーやめまいなどの領域においては検査や薬物治療も重要で、外科的・内科的治療の両方を担えることに大きな魅力を感じたのです。鹿児島大学医学部に進学し、実習で舌がん切除後の再建手術を見た時には「こんな高度な手術に取り組んでいくのか」と身が引き締まる思いでしたね。卒業後は鹿児島大学病院の耳鼻咽喉科・頭頸部外科に入局し、頭頸部のがんや甲状腺・耳下腺の腫瘍、鼻の手術を多数経験しました。難易度の高い手術に取り組めるというやりがいを感じながらも、合併症などで一筋縄ではいかない局面もありました。その後、助教に就任して後進の指導にもあたりました。2022年からは霧島市立医師会医療センターの耳鼻咽喉科・頭頸部外科の医長を務め、特に鼻と扁桃の手術の研鑽を積みました。
開業の経緯と医院のめざす姿を教えてください。
もともとこの場所には長く診療されていた島耳鼻咽喉科がありました。島院長の後を、数年の間ご息女が引き継がれていたのですが、ご主人が私の母校である鹿児島大学の同級生だったこともあり、継承のお声がけをいただいたのです。私もいつかは大学病院などで得た知見を生かして地域に貢献したい想いがあったので、良いタイミングで決断できました。幸い島耳鼻咽喉科のほとんどのスタッフの方々が引き続き支えてくださっているので、連携がとてもスムーズに取れています。また、ありがたいことに、以前の患者さんにも変わらずにお越しいただいています。今回の開業と同時に内視鏡やエコーなどの先進の機器も揃えていますので、ずっと通っていたただいている方はもちろん、初めての方にも気軽に足を運んでいただきたいです。何よりも地域の皆さんが安心して気軽に相談ができるような医院にしたいと思っています。
アレルギー性鼻炎に悩む子どもの症状改善に注力
アレルギー性鼻炎の患者が多いそうですね。
アレルギー性鼻炎の有病率は年々増加しています。ハウスダスト・ダニ・花粉などが原因で、くしゃみや鼻水が止まらず生活に支障が出ているお子さんがとても多く、私としても一層力を入れていかねばと感じています。当院の検査では、食物アレルギーや花粉症などの41項目の原因アレルゲンを一度に調べることができる機器を新たに導入しています。指先にスタンプを押すようなイメージで極細の針をちくっと刺し、血液を数滴採取すれば検査が行えますので、お子さんのアレルギーが気になるものの採血のための注射が苦手、という方にも抵抗が少ないと思います。また、30分程度で結果がわかるので受診したその日から結果に見合った治療を開始することも可能です。
舌下免疫療法にも注力されていると伺いました。
はい。アレルゲンを体内に少量ずつ取り込むことで、原因物質に慣らし、根本的な体質改善がめざせる治療法です。今までは注射による免疫療法が主流で、痛みを伴う上に何度も通院しなければならなかったのですが、こちらはご自宅でべろの下に1日に1回お薬を入れる方法です。治療導入期が終われば月1回程度の通院で継続が可能で、患者さんも取り組みやすいのではないかと考えています。また、飲み薬にプラスしてこの舌下免疫療法を行うことで、症状の軽減も期待できます。3~5年の間毎日続ける必要があるものの、お子さんの大切な将来に対し積極的に治療されたい方にとっては非常に意義があるのでは、と考えています。ちなみに、ダニアレルギーの場合はいつでも開始できますが、スギ花粉症の場合は花粉が飛んでいない時期に始めます。また、運動や入浴など血液循環が良くなる前後は避けたほうが良いので、寝る前に飲むことをお勧めしています。
アレルギー性鼻炎の患者が気をつたほうが良いことはありますか?
例えば、エアコンをつけると鼻水・くしゃみ・咳が出てしまう方がいらしたら、エアコンの中のダニやカビも疑われるため、フィルターや内部の掃除をしていただくとよいでしょう。また、ペットを飼っている家庭で、症状が改善しにくいお子さんがいらしたら、犬・猫のアレルギーがないかを一度検査したほうがよいかと思います。また、お薬を服用しづらい妊娠中の女性の方には、鼻うがいと呼ばれる鼻洗浄の方法もあります。そのほか、なるべく眠気がでないようなお薬を選ぶなど、患者さんの生活スタイルなどを踏まえたご提案もできますので、ご相談いただければと思います。
小児の診療は子どもの気持ちを尊重、無理強いはしない
睡眠時無呼吸症候群の治療についてはいかがでしょう。
睡眠中の無呼吸により体内の酸素の低下状態が続くと、心筋梗塞など深刻な病気につながる恐れもありますし、お子さんの場合は成長面にも悪影響を及ぼします。例えば、日中に強い眠気を感じる、家族から「いびきがうるさい」「息が止まっている」と言われたという方は、一度検査を受けていただきたいですね。肥満が原因の場合が多いですが、お子さんは扁桃やアデノイドの肥大が影響している場合もあります。その場合は、当院での問診の後、ご自宅で寝ている間に指先センサー・呼吸センサーをつける簡単な検査を一晩行っていただきます。頻回に無呼吸が起こっている場合は、空気を鼻から送り込み気道を広げて無呼吸を防ぐためのCPAPという装置の使用をご提案しています。扁桃の大きさが原因の場合には、手術を提案することも。CPAP療法は継続して行うものなので、患者さんが納得して前向きに取り組めるよう、お気持ちをよく伺うなど会話を重視しています。
診療で大切にしていることを教えてください。
わかりやすく納得いただける説明を心がけています。例えば「副鼻腔炎」ではなく「蓄膿症」と説明するなど、なるべく患者さんが聞き慣れている言葉を使うようにしています。また、耳の中の内視鏡画像をモニターに写して、ご自身にも症状を確認していただきます。さらに、お子さんの治療の際は、お子さんのお気持ちを尊重して丁寧に診察を進めています。暴れるお子さんを押さえて耳掃除をするのは危ないですし、怖がってお口を開けたがらない場合には無理強いはせず、親御さんに症状をよく伺いながら臨機応変に対応しています。また、耳の診察時に看護師がお顔を傾けたりする際には、お子さんがびっくりしないよう必ず事前にお声がけするようにしています。
最後に、地域の方々にメッセージをお願いします。
学校の健診などで、アレルギー性鼻炎の症状があるものの受診ができていないお子さんを拝見する度に、何とかして差し上げたいと常々感じています。お伝えしたように、検査は想像より簡易なものですし、すぐ結果を把握して早期に治療を始めたい方は、ぜひ一度ご相談いただきたいです。特にお子さんに対しては、勤めているスタッフもお母さんが多いですし、私自身も3人の子どもの父親ですので、お悩みに寄り添っていきたいと思っています。今後も気軽に相談できる雰囲気を大切にし、地域の皆さんに信頼される医院をめざしていきたいですね。