柴田 哲生 院長の独自取材記事
こまざわレディースクリニック
(世田谷区/駒沢大学駅)
最終更新日:2021/10/12
駒沢大学駅から国道246号線を南へ、徒歩5分ほどのビル2階にある「こまざわレディースクリニック」。昭和大学病院で長年腹腔鏡手術など、豊富なオペ経験を持つ院長の柴田哲生先生は、優しくフランクなキャラクターで患者に親しまれている。10代の月経不順から更年期障害、尿失禁まで、あらゆる世代の女性患者の悩みに寄り添い、「女性の一生と付き合うクリニックでありたい」という。また、日本では誤解されがちなピルの効用やHPVワクチンについても正しい知識を伝えていきたいという気概も持つ。そのこだわりを聞いた。
(取材日2011年11月23日/再取材日2017年9月6日)
女性の一生の折々で頼りになる婦人科診療を
開業9年目を迎えられました。
2009年の開業から、街の便利な場所に構えることで「女性の一生とお付き合いできるクリニック」をめざしてきました。ですから、妊婦健診、子宮がん検診をはじめ、若い時期からある月経不順や月経痛、40代くらいから増える子宮筋腫、年齢を問わず増えている子宮内膜症、そして閉経前後の更年期障害、婦人科がん、また尿漏れといったお悩みに幅広く対応しています。世代による体調変化の折々で適切に診療のご相談に乗れればと思ってきました。実際、大学病院時代に私が執刀して手術させていただいた患者さんが今も定期チェックに訪れたり、通院されていた後に海外赴任などで外国住まいになられてからも帰国の折ごとに来院する患者さんもいらっしゃいます。体質や病気・症状に対する考え方も一人ひとりに異なり、他科以上にセンシティブなところのある診療科ですから、長いお付き合いの患者さんがやはり多いですね。
リラックスできる雰囲気の待合室ですね。
プライバシーに配慮して、広くゆったりした造りにしています。一人ずつ袖付きのチェアで、すりガラスの目隠しも随所にあるので、周りを気にせずお待ちいただけます。また、アロマの香りをほのかに流したり、点滴も間接照明のある部屋で受けられるなど、リラックス重視で考えています。患者さんの不安を少しでも軽くできればとの思いですね。医師は私だけで、基本的に代診はありませんし、受付スタッフも長く勤めるベテランで患者さんへの接し方が優しく行き届き、私もたいへん助かっています。私自身、患者さんが思っていてもうまく言葉にできていないことがあるかもしれないと思いながら、常に診療にあたっています。
母校の昭和大学との関係も深いですね。
開業してからも専任講師をずっと務めてきましたので、大学医局の仲間たちとは交流を続けています。より精密な検査や手術が必要な場合にも、大学病院や専門医療機関へのご紹介がスムーズかと思います。日常的には私のほうで拝見しながら、より高度な対応を要すればポイントポイントで適切に紹介しますので、その意味でも患者さんには安心して長くかかっていただけていますね。それとは別に、お忙しい患者さんの助けになればと、スマートフォンによる遠隔診療も始めました。専用アプリを通じて、月・水曜の午後2~3時、土曜の午後3~5時の診療枠に予約を入れ、その時間にアクセスいただく仕組みです。状態が落ち着いて安定されている患者さんが適応になります。このように、少しでも患者さんが楽に受診できたり、選択肢が増えて診療に前向きになられれば良いですね。
日本では誤解の多いピルの服用指導で快適な月経生活を
月経痛軽減のためのピル治療を積極的に取り入れていると聞きました。
生活習慣の見直しや漢方薬の服用なども一定の効果はありますが、ピルによる治療は効果が非常に高いといわれ、そのほかにも体に良い効果が数多く期待でき、悪影響はほとんどないことから、特に強くお勧めしています。日本では避妊薬としてなぜか怖いイメージを持たれがちですが、欧米では出産可能な世代の女性の6割が使用している国もあるほど、普及しています。月経痛は、市販の鎮痛薬を用量をきちんと守っていて収まればよいですが、痛みが甚大で我慢できない時に自己判断で用法・用量を超えて服用してしまうと危険です。また、痛みが強すぎて、会社や学校を休んでしまったり、救急車で運ばれたりすることもしばしばあります。月経痛は和らげることができますので、悩まず気軽にご相談いただきたいですね。
月経痛の痛みの原因は、何ですか?
月経期間中に月経に随伴して起こる病的症状を月経困難症といいます。月経困難症には月経痛が最も多く認められます。最も多いのが特に病的な原因のない機能性月経困難症です。月経時に作られる内因性生理活性物質であるプロスタグラジンの影響といわれています。筋組織である子宮の収縮が異常に強くなり、こむらがえりのような状態になっていると想像してください。また、プロスタグラジン自体に痛みを起こしやすくする作用があり、それが頭痛、腰痛や嘔気、疲労感を引き起こすこともあります。そのほかに子宮内膜症、子宮腺筋症や子宮筋腫などの病気が原因の器質性月経困難症があります。月経痛がだんだん強くなってきた場合には子宮内膜症などを疑います。
ピルというのは、どのように使うのですか?
ピルとは卵胞ホルモン・黄体ホルモンという女性ホルモンの合剤です。主にホルモン量の少ない低用量ピルを用います。初潮を迎えていれば10代でも使用可能で、ピルを飲んでも妊娠しにくくなることはありません。妊娠を望む場合は、ピルを中止すればすぐに妊娠は可能になります。避妊や月経痛の軽減以外に、月経周期を整えたり、イライラやむくみなど月経前症候群の改善、月経量の減少、ニキビや肌荒れの改善が期待できます。さらに長期に服用した場合は骨粗しょう症の減少や、卵巣がんや子宮体がんなどの悪性腫瘍も減少するといわれています。ただ、血液を固まりやすくする性質があるため、血栓症を起こさないように注意する必要があります。ですから、きちんと医師の指導の下で使ってもらいたいのです。すでに多くの患者さんが月経前や月経の時期をピルで快適に過ごされています。
HPVワクチン接種や早期の検診で子宮のがん予防を
月経痛軽減のためのピル服用は、年齢は問いませんか?
先ほどもお伝えしたように、副作用については血栓症に注意が必要です。喫煙、糖尿病、高血圧などが血栓症のリスク因子ですが、ローリスクの方は血栓を起こすことはほとんどありません。ローリスクの方で20代30代からずっと使い続けている人は50歳まで問題なく使えます。ただ、40代でピルを使いはじめる事は、血栓症のリスクを考え、当院ではお勧めしていません。その場合にお勧めなのは、黄体ホルモンを分泌する、LNG-IUS(避妊リング)という子宮内に装着する器具です。子宮内に入れると局所で効果を発揮し、5年間効果が持続します。装着と抜去は医師が行います。過多月経に対して保険適応があり、月経痛にも高い効果が期待できます。
子宮がん検診も推奨されているそうですね。
子宮頚がんは20代~30代の若い世代に増えています。早期発見できれば治癒が見込めますが、進行すると命を落とす危険や、子宮全摘や放射線治療で卵巣機能を失うなど、出産ができなくなる可能性もあります。できれば20歳を過ぎたら年に一度は検診を受けていただきたいですね。子宮頸がん検診は痛みがほとんどなく、短時間で終わりますので、安心して受診してください。当院は世田谷区の子宮がん検診も積極的に行っています。また、子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)の予防ワクチンも推奨しています。
ワクチンについては誤解も多いかと思いますが、読者に伝えたいメッセージはありますか?
HPV予防ワクチンは、2010年に公費助成が開始され、多くの女児が接種したところ、失神や慢性疼痛の例が報告されました。しかし、この因果関係ははっきりしておらず、また、欧米ではこのワクチンの効果が証明されてもいます。HPVは150種ほどの型があり、そのうちの15種ががんを起こします。HPVワクチンにはそのうち2つの型のHPVに効果を示す2価ワクチンと、それに加え尖圭コンジローマという性感染症の原因となる2つの型にも効く4価ワクチンの2種類があります。性行為などで誰もが罹りうるウイルスなので、できれば初体験の前にワクチン接種を受けていただきたいのです。3回接種が必要ですが、ワクチンで70%程度の減少が期待できるといわれています。検診やワクチンを上手に利用して、予防・早期発見につなげていけたらと思いますので、気になることがありましたら気軽に相談してください。