藤田 義典 院長の独自取材記事
藤田歯科医院
(豊中市/緑地公園駅)
最終更新日:2025/05/09

緑地公園駅より徒歩3分の場所にある「藤田歯科医院」。北欧風の温かみのある院内では、「歯医者が苦手な歯科医師」だと自認する藤田義典院長が診療を行う。子どもの頃から歯科医院に通うのが怖かったからこそ、患者の「嫌だ、怖い」といった感情に寄り添うことを大切にしているとか。「私も含めて歯医者が苦手という方は、歯を削られたり、抜かれたりという虫歯治療が苦手だと思うんです。だからこそ早め早めの対処が大切です」と笑顔を見せる藤田院長。予防歯科に力を注ぐ他、嚥下障害と構音障害の外来および訪問歯科診療にも積極的に取り組んでいる。取材では、地域の歯科医療に対する想いをたっぷり語ってもらった。
(再取材日2020年1月9日/更新日2025年3月13日)
歯科医院が苦手だからこそ、できる治療を
先生ご自身も歯科医院が苦手だそうですね。

そうなんです。多くの方と同じように、歯医者での受診が苦手です。痛いのはもちろん、ドリルの音や振動にも恐怖を感じます。口の中をのぞき込む先生の目も怖いですよね。歯科医師になるための実習では痛い思いもしましたし、皆さんの気持ちが自分のことのようによくわかります。なので、治療はできるだけ少ない回数で、なるべく痛くなく、できれば治療費も安くなどと考えるのを基本にしています。私自身がずっと歯医者が苦手だからこそ、できることがあると思っています。「嫌だ、怖い」といった感情に配慮し、診療を進めていきたいです。
歯科医院が苦手なのに、それを志したのはなぜですか?
昔から人と触れ合うのが好きで、リハビリテーションの仕事がしたかったんです。人の役に立つ仕事で社会貢献がしたいなと。私の天職ではないかと思っていましたが、入学したのは大阪大学歯学部です。「歯科医師でリハビリテーションに携わることはできるのか」と悩んだ時期もあった中で、顎口腔機能治療学に出合い、私の考え違いであったことに気づきました。ここに人の役に立つ技術や学びがあるなと。学生時代の実習などで施術が楽しいと感じ、実は歯科医師に向いているのだろうと確信しました。昔から歯科受診は苦手ですが、治療の戦略の中で、患者さんの要望をお聞きしながら考えることができるから治療自体は好きなんです。
顎口腔機能治療学について教えてください。

口は「話す・食べる・呼吸する」と生きていくために必要な機能を担っています。その全体的な機能を一連のものと捉えて研究していくのが顎口腔機能治療学です。例えば、先天的な口蓋裂のお子さんは、手術後であっても「パ」や「バ」といった破裂音が発音しづらく不明瞭になってしまうので、発話トレーニングなどが必要です。また、食べ物を上手に飲み込めない状態である嚥下障害についても、さまざまな経験を積みました。当院で今も力を注いでいる分野ですが、うまく食べられない状態になるので、高齢者のご家族からご相談を受けることが多いんです。好きな物を味わえば生活が豊かになりますし、言葉が通じれば会話を楽しんだり自分の要望を伝えたりできますよね。口腔機能の快復だけでなくその先の笑顔ある日常生活を支えたいと思っています。
訪問歯科診療に力を入れているのですね。
お呼びがかかるなら、できるだけ訪問診療に時間を割いていきたいと思っています。というのも、嚥下障害に悩む方は通院できない高齢者がほとんど。さらに、明瞭に発音できず、日常会話がしにくかったり、面と向かってなら通じても電話では聞き取ってもらえなかったりする構音障害は脳卒中や頭部外傷の方が大半で、こちらも訪問診療が必要です。「人の役に立ちたい」と歯科医師を志しましたので、その想いが嚥下障害と構音障害の訪問診療につながっています。
医科・歯科・介護が連携し、患者主体の医療をめざす
訪問診療ではスタッフ同士の連携も大切だと思います。

そうですね。時代の流れでもありますが、歯科だけで完結するのではなく、医科と歯科、介護がしっかり連携していくことが重要です。それぞれの専門性を生かしながら、患者さん一人ひとりに合った医療サービスを提供していくことが大切だと思います。歯と全身の健康は密接な関わりがありますので、医科の先生や介護スタッフと長く訪問診療に力を注いできましたが、もっと患者さん主体の医療を展開していかなければならないと感じています。
患者主体とは具体的にどういうことでしょう?
例えば、嚥下障害ではうまく食べられない状態になりますが、患者さんはどの病院に行けばいいかわからないと思うんです。というのも、「食べる」というプロセスは、食べ物を認知して、食べたいなと思う情動が起こり、手を動かして口に食べ物を入れますよね。そして、こぼれ落ちないように唇を閉じて、口を動かして咀嚼します。最後に、喉の筋肉をスムーズに動かして飲み込んでいきますが、このように意外と複雑なんです。認知症で食べ物と認知できない場合や、脳卒中や頭部外傷で運動機能に問題がある場合もあります。患者さんがどのプロセスに障害が起こっているかがわかれば良いのですが、そうでなければ行き先に困ってしまいます。臓器単位ではなく、疾患単位で病院ができたらいいなと思いますね。
歯科医院では、嚥下障害にどのような対処をしていくのですか。

当院ではまず、内視鏡で咽頭部を診る嚥下内視鏡検査や、新しく導入したVF(嚥下造影検査)で問題を把握していきます。VFとは、造影剤を混ぜた食べ物を実際に食べてもらいながら、エックス線で飲み込む機能を評価する検査のこと。検査で咀嚼や舌や喉の動きの連動に問題があるとわかったら、専用器具やストローを使う、ベッドの上でもできるトレーニングに取り組んでもらいます。嚥下障害の治療は時間がかかる場合も多いので、根気良く誠実に患者さんをサポートすることを大切にしています。今はまだ嚥下障害を診られない歯科医院が多いものの、嚥下障害に関する歯科医師向けの講習会などが多く開催されるようになりました。将来すべての歯科医院で対応できるようになれば、患者さんにとっても良いことだと思います。
医科と連携した嚥下障害への取り組みはあるのでしょうか?
例えば、終末期の患者さんが主治医から「肺炎を起こすから、食べたら駄目」と言われても、ご家族は「最後にひと口でも好きなものを食べてほしい」と思うことってありますよね。そのような場合、歯科医師が唾液の飲み方など口の機能を再度確認し、アドバイスすることもあります。医師と看護師が同席した上で、ほんの少量だけ味わってもらうんです。これこそが、本当の連携かなと。従来の歯科は生命に関わることはほとんどなく、生活に即した医療でしたが、少しずつ変化していると感じています。
痛みや症状に向き合い、予防歯科にも注力
長年、予防歯科にも力を注いでいるとお聞きしました。

歯科にとって一番大事なのは虫歯予防です。世の中で予防歯科が大事だといわれているからではなく、「歯医者が苦手」だからこそ、そう思うんです(笑)。どんなに丁寧な治療を心がけても、歯科が苦手な人にとっては嫌ですよね。ですが、子どもの頃からしっかり予防していれば、年齢を経ても虫歯の罹患率は低くなるはず。残っている歯の本数が多い高齢者は健康な方が多いこともわかってきています。患者さんには虫歯や歯周病が進行する前に対処できるよう、歯石除去やクリーニングなどの定期的なメンテナンスをお願いしています。
どのような患者さんが多いですか?
午前中は高齢者をはじめ、学齢前のお子さんやそのお母さんが中心です。午後は小学生以上のお子さんからそのお母さん、高校生や大学生に、高齢者といった具合です。比較的、会社員の方は少ないですね。ちなみに、訪問歯科診療は当院から原則16km以内の豊中市や池田市、大阪市内の北部や高槻市の一部、川西市についても川西能勢口駅近辺までは保険診療の適用内となります。
今後の展望や読者へのメッセージをお願いします。

予防歯科は大切ですが、それだけでは歯科医療は成り立ちません。治療に関する最新の知見や技術を身につけてこそ、予防が可能になると思います。ですから当院も知識や技術をアップデートし、今後求められる歯科医療の形を予測して、予防を含め、患者さんのニーズに応え続けたいです。いうならば私は明日より一歩先、「明後日の方向を向いた歯医者」でありたいんですよ。ただ、今目の前にいる患者さんに本気で向き合い、地域の健康を支えるという部分は変えません。非常勤の先生に診療に入っていただくこともあり、スタッフ全員でより良い医療を届けられるよう努めています。不安な点は気兼ねなく相談してくださいね。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント/33万円~
小児矯正/14万3000円〜、部分矯正/25万3000円〜、成人矯正/85万8000円〜
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。