整形外科医が語る
交通事故後のむち打ちでやってはいけないこと
細井整形外科
(神戸市東灘区/青木駅)
最終更新日:2025/03/24


- 保険診療
交通事故に遭った後、首や肩、腰に痛みなどの不調が出ることがある。いわゆるむち打ちといわれる症状で、最初は気にならないぐらいでも、時間がたつにつれて痛みが強くなったりさまざまな不調が出てきたりすることも珍しくない。「細井整形外科」の細井憲(ほそい・あきら)理事長は「むち打ちを疑うつらい症状があるのに放置していると、症状が悪化し、治療が長引く可能性があります。また、むち打ちがある場合、やってはいけないこともあります。症状を自覚したら早めに整形外科を受診してほしいですね」と話す。むち打ちの具体的な症状や原因とともに、むち打ち症状がある場合にやってはいけないこと、整形外科受診を勧める理由、交通事故後の受診で気をつけておきたいことなどを細井理事長に聞いた。
(取材日2025年2月21日)
目次
交通事故後にむち打ちかもと思ったら、首に負担をかけない行動と整形外科で早急に痛みの原因の特定を
- Q交通事故後によくあるむち打ちとはどういった症状でしょうか?
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A
▲むち打ちと言われる症状は首に出ることが多い
世間一般でむち打ちといわれる症状は首に出ることが多く、正式な診断名は頸部捻挫、もしくは頸椎捻挫です。原因は首の椎間関節の捻挫、大きな力が加わって筋肉が急に伸ばされたことによる筋肉の損傷であることが多いですね。痛みや、しびれなど神経痛が続くようであれば頚椎の状態をみるために、MRIなどの検査が必要となることもあります。症状は軽い方だと、首を動かした時に痛い、ちょっと肩が張った感じがするなど。そのような首周辺の症状に加え、頭痛や吐き気、ふらつき、めまい、肩凝り、肩から手のしびれ感を訴える方もいらっしゃいます。特に中年女性では、多彩な症状を感じる方が多い印象です。
- Qむち打ちかもと思った時にやってはいけないことは何でしょうか?
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A
▲負担がかかる行動は避け、安静にすることが大切と話す細井理事長
重いものを持つ、首が動きにくいからといって無理に動かしてみる、などの首に負担がかかる行動ですね。また、整骨院や接骨院などで、音が鳴るような施術を決して受けないようにしてください。症状が悪化して、治療が長引く可能性があります。むち打ちは首の捻挫です。足首を捻挫して痛い時にあまり歩かないようにするのと一緒で、事故後1~2週間は安静にするのが大事。そして、むち打ちは、事故当日は首に重たい感じがするぐらいだったのが、2~3日経過してからはっきりした痛みとなってくることも少なくありません。むち打ちかもと思ったら、なるべく早く医師の診断を受けるようにしてほしいですね。
- Qむち打ちになったときの治療の流れや治療法を教えてください。
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A
▲希望に応じて、運動器リハビリテーションにも対応している
まず診察で、首が前後左右に問題なく動くか、しびれ感や筋力低下がないか、押すと痛い部分はどこかを診ていきます。手がだるい、力が入りにくいという場合は握力検査もします。その後、痛みの原因を特定するためエックス線検査を行います。治療は消炎鎮痛剤や消炎鎮痛成分が入った湿布の処方が一般的で、筋肉の緊張を和らげるための筋弛緩剤を処方することもあります。ただ、筋弛緩剤は眠気が出る場合があり、運転の予定がある方は飲めません。仕事中にも飲みづらいので、希望に応じてトリガーポイント注射をします。薬物療法と並行して機器による消炎鎮痛処置を行うほか、運動器リハビリテーションを追加する場合もあります。
- Q交通事故に遭った場合には何科を受診したらいいのでしょうか?
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A
▲適切な治療には、痛みの部位を特定する必要がある
何科を受診するかは、症状がある部位によります。頭を打って痛みがある場合は、脳神経外科になりますね。頭を打っていると、首にも影響が出てくることがほとんど。脳神経外科でCTを撮って頭に異常がなかった場合は、その後、整形外科の受診を勧められることが多いでしょう。整骨院などに行かれる方もいらっしゃると思いますが、適切な治療には痛みの部位の特定が必要で、それは整形外科の得意分野。診療やエックス線検査から、痛みが筋肉由来か神経の損傷が考えられるのかを探っていきます。また、交通事故の場合、自賠責保険・任意保険を利用するには診断書が必要です。診断書は医師しか書けないことにも注意してください。
- Q交通事故後、整形外科を受診する際に気をつけておくことは?
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A
▲受診時に、状況を説明できるようメモを残しておくこともお勧め
まず初診日が事故日から開きすぎると、症状と事故の因果関係を問われることがあるので、症状がある場合は事故日から少なくとも1週間以内に来院してほしいですね。受診の際には、事故が起こった日時や場所、事故の内容、自覚症状などを話せるようにしておいてください。診断書を作る際に必要となります。記憶が混乱することもあると思うので、メモに残しておくこともお勧めです。また、自賠責保険・任意保険適用の場合の治療費は、保険会社から当院に連絡があって以降は保険会社の負担となりますが、連絡があるまでは患者さんに立て替えていただかなくてはいけません。受診前に保険会社に当院を受診する旨を伝えていただくほうがよいと思います。