細井 憲 理事長の独自取材記事
細井整形外科
(神戸市東灘区/青木駅)
最終更新日:2025/04/04

阪神本線・青木駅の南出口すぐにある「細井整形外科」は、2009年の開院以来、丁寧な診察で患者から頼りにされているクリニックだ。32年という豊富な病院勤務経験を持つ細井憲(ほそい・あきら)理事長が開業した同院は、外来診療からマンツーマンの運動器リハビリテーション、在宅医療、訪問リハビリテーションまで、地域の人々の痛みや不安に、スタッフ一丸となって取り組む。「とにかく話をしっかり聞くことが何よりも大切」と話す細井理事長は、常に患者に優しいまなざしを真っすぐに向けている。そんな細井理事長に、キャリアを重ねてきたベテラン医師の一人として今感じること、診療で大切にしていること、医療にかける思いなど、話を聞かせてもらった。
(取材日2025年2月21日)
19時まで受けつけ可能。学生や働く世代に配慮
細井整形外科について教えてください。

当院は外来診療、運動器リハビリに加え、在宅医療、訪問リハビリを行うクリニックです。運動器の専門家チームとして、医師や看護師だけでなく、理学療法士やトレーナーともしっかり連携し、地域にお住まいの皆さんが元気で生活を楽しんでいただけるように日々研鑽に努めています。体のどこかに痛みや動かしづらさを抱えながら生活するのは、とてもストレスがたまることです。患者さんには、日々の暮らしに不自由がないことはもちろん、スポーツなどの趣味もしっかり楽しんでいただきたい。そのためにわれわれにできることは何かを常に考え、患者さんの生活の質を高めるために丁寧なアプローチをしていくことを大切にしています。
どのような患者さんが多いのでしょうか?
この地域にお住まいの方が中心です。徒歩や自転車で通える範囲にいらっしゃる患者さんが多いですが、駅からすぐの立地もあって、遠方から電車を利用して来てくださる患者さんも少なくありません。小さなお子さんから高齢の方までと年齢層も幅広いですし、ケガや肩・腰・膝の痛み、スポーツ障害など、患者さんのお悩みもさまざま。交通事故後のむち打ちなどの症状にも対応しています。整形外科は首から下の運動器の疾患全般を扱う診療科です。慢性的なものから突発的なものまで、不自由を感じているけれど「こんなものかな?」と諦めている症状があれば、ぜひ一度相談していただきたいですね。改善するための方法が見つかるかもしれません。
働く世代の肩や腰の痛みなどの相談もあると聞きました。

特に働く世代ではぎっくり腰で受診される方が多いですね。ぎっくり腰は、筋肉に負担がかかり痛みが出る一般的な腰痛、椎間板ヘルニアなどの神経によるもの、骨粗しょう症由来の圧迫骨折によるものの大きく3つに分けられます。診察とエックス線検査で原因を探っていきます。ちなみにエックス線検査をできるのは医療機関だけです。治療は腰痛ベルトの着用と薬物療法が基本。働く世代では腰が悪くても、腰に負担がかかる作業をしなくてはいけない人も少なくありません。腹圧を高めるための腰痛ベルトで腰を守ってほしいですね。薬は消炎鎮痛剤と、場合によっては筋弛緩剤、消炎鎮痛成分が入った湿布で様子を見てもらいます。痛みが長引くようなら、運動器リハビリを追加することもあります。早めに受診してもらえれば、痛む期間が短くなる可能性が高まるでしょう。当院は19時30分まで診療していますので、仕事帰りにでも受診していただきたいですね。
「この人のために」という気持ちが強くなった
開業を決意した理由を教えてください。

鹿児島大学医学部を卒業後、大阪大学医学部附属病院を皮切りに、最後に勤めた森之宮病院まで32年間病院の整形外科勤務をしてきました。実はあまり開業志向はなく、定年まで勤めたら、あとは非常勤として診察できればいいかなと考えていました。しかし、同僚として過ごしたことがある内科の先生から「在宅医療も含めて一緒にやっていかないか」と誘っていただいたんです。開業するにはちょっと遅めの年齢ではあったのですが、「そういう生き方もいいかもしれないな」と思い、内科の先生が開業していた同じビルの別フロアで開業することを決意しました。おかげさまで想像していた未来とはまったく違った、慌ただしくも充実した毎日を過ごさせてもらっています。
実際に開業して、勤務医時代から大きく変わったと感じることはありますか?
「地域医療に貢献したい」という気持ちが大きくなったことでしょうか。病院勤務をしていた時も、手術や外来に真剣に取り組んできましたが、今はその時よりももっともっと患者さんを身近に感じています。例えば小さなことですが、スーパーで声をかけられたりする。そのたびに、なんだかジーンとするんですよ。今は、在宅医療でも日々の診療でも、病院勤務だとなかなか体験できない「患者さんの生活」にふれることができる。患者さんの素顔が見える距離で関わることができるので、以前よりももっと「この人のために」という気持ちが強くなったように思います。それが重なって「地域医療に貢献したい」という気持ちが自然に大きくなりました。
在宅医療に積極的に携わっていらっしゃるのも、その気持ちの表れの一つですね。

在宅医療は、整形外科医の専門性を生かした診療はもちろん、全身管理も含めて患者さんのニーズを満たすことが大切だと思っています。看護師や訪問リハビリを行う理学療法士との連携ももちろんですが、地域の民生委員やケアマネジャー、ご家族やホームヘルパーなど、患者さんだけでなく患者を取り巻くすべての人々と連携を取ることが大切です。少子高齢化が進む日本で、安心して年を重ねるために自分にできることは何か。ただ仕事の一つとしてこなすのではなく、いろいろと考えながら、一人でも多くの人が笑顔で最期の時を迎えられるように、医師として力になれたらと思っています。
地域の人たちのそばにいるクリニックであり続けたい
患者さんと接する際に心がけていることはありますか?

まずは話をよく聞くことですね。痛みや不自由はとても主観的なものですから、困っていることもさまざまです。だから、話をよく聞かないことには始まりません。その上で適切な検査をし、自分の手で触診をし、一つ一つ確認するように心がけています。また、説明をする際にはわかりやすさを大切に。患者さんは不安を抱え、緊張している場合がほとんどですので、専門的な言葉でうわべだけの説明をしても駄目。パンフレットや資料をお見せしながら、わかりやすい説明をするように努めています。何よりも「来て良かった」とホッとしていただくことが治療の第一歩ですから。
リハビリにも力を入れられているそうですね。
はい。当院では、機器による消炎鎮痛リハビリと、理学療法士がマンツーマンでマッサージや体操指導をする運動器リハビリの2種類を提供しています。運動器のリハビリルームは診察室のすぐ前にあるので、理学療法士が患者さんの状態や治療について何か疑問を持ったら、すぐに聞きに来てくれます。リハビリの経過を見て、今後どう進めていくかの提案もしてくれるんですよ。私もリハビリの様子をよく見に行きます。実際に目にすることで、患者さんの状態を適切に把握することができますから。運動器リハビリの利点は、人のぬくもりを感じられることにもあります。安心感を持っていただくことも目的の一つなんですね、リハビリには機能面だけでなく、精神面でも良い影響が望めると感じています。
それでは最後に、今後の展望や先生の夢を聞かせてください。

当院は多くの患者さんに気軽に来ていただきたい、と開院以来19時30分まで診療をしています。診療の終わる時間は遅くなったとしても、頼っていただけることが本当にうれしいですね。当院を頼ってきてくださる皆さんのために、この場所を守っていけたらと思っています。一人でも多くの皆さんの悩みや苦痛を解消する手助けをしていきたいです。患者さんの願いを丁寧に受け取りながら、リハビリを含めさまざまな治療方法を提案していきます。そうすることが地域医療への貢献につながっていけば、こんなにうれしいことはありません。困っていることがあれば気軽に受診できる、地域の皆さまのそばにいるクリニックであり続けることが私の夢です。