木庭 茂治 院長の独自取材記事
椿歯科クリニック
(岡山市北区/岡山駅)
最終更新日:2025/05/30

岡山駅から徒歩5分に位置する「椿歯科クリニック」。岡山県内各地のみならず、四国・山陰などの遠方からも患者が訪れる。根管治療を専門とする木庭茂治院長は、大学を卒業後、医・歯・薬学部の3学部で基礎医学を学び、口腔外科領域で専門的なキャリアを積んできた。さらなる先進的な技術の習得のために、アメリカでは根管治療の、イギリスではインプラント治療の研鑽を重ねた。同院には、口腔外科領域をはじめとした難しい症例の患者やセカンドオピニオンを求める患者も多く受診する。患者のプライバシーにも配慮した半個室の診察室では、マイクロスコープなど精密な治療に必要な機器がそろう。「削った歯は元に戻らない。一生自分の歯で健康に過ごしたいと願う患者の力になりたい」と語る院長に、これまでの経験や診療への思いを聞いた。
(取材日2024年7月9日)
最高の歯科治療を求めて、世界の技術を習得
歯科医師をめざしたきっかけやご経歴を教えてください。

私は子どもの頃から「人のために役に立ちたい」という思いを持っていました。そんな念願をかなえるために医師をめざし、親が歯科医師だったこともあり、歯科の分野へ進み、当院を継ぎました。大学を卒業してからは、岡山大学医学部の口腔外科へ所属。その後、薬学部で免疫の研究を経て、岡山大学歯学部の病理教室へ入局しました。歯科治療は白い歯の部分だけでなく、顎口腔系全体が領域となります。医歯薬すべての学部を経験し、多くの知識を習得しました。歯科治療は非常に細かい治療なので、知識だけでは何も治せません。技術鍛錬が欠かせないので、歯科医療の先進地であるアメリカへ留学しました。当時は、今のようにSNSなどはなく、ウェブで学ぶことはできなかったので、直接行くしかなかったんです。お口全体のマクロからミクロまで、すべての知識習得と技術を磨く修練のために、世界へ出ていったんですね。
留学のご経験について、もう少し詳しく教えてください。
40歳頃に、アメリカのペンシルべニア大学で勉強しました。同時期に、インプラント治療を学ぶために、アメリカのUCLA、イギリスのバーミンガム大学、ロンドンホスピタルへも学びに行きました。留学中に根管治療を学んでいる中で、精密な治療の中心にあったのが「マイクロスコープ」でした。肉眼の何十倍もの拡大ができるマイクロスコープがあるからこそ、例えば歯の根の中を直接のぞいて治療することが可能となり、精度が向上するのです。また、日本では1人の歯科医師が補綴もインプラントもなんでも行うクリニックが多いですが、アメリカでは根管治療、補綴、歯周外科、口腔外科などそれぞれに専門家がいます。どの専門家もマイクロスコープを使うことからも、歯を削るにも詰め物を詰めるにも、すべての歯科治療においてその重要性がわかります。
こちらのクリニックでもマイクロスコープを導入されたのですか?

はい。帰国後に導入しました。当時の日本ではまだ珍しく、技術習得のために岡山から東京に通う日々でした。マイクロスコープを用いた治療ができるには相当期間訓練が必要ですし、精密治療を行うための周辺機器や材料などすべてにおいて歯科医院の環境づくりが必要になります。医療工学の分野は、一般の工学の分野とリンクして常に進化しています。最新の道具をそろえなければ、その時代における最高の治療は実現できないという考え方に基づき、院内の設備や環境づくりには注力してきました。マイクロスコープが珍しいので注目されますが、精密な治療を実現するためのあくまで一つの道具です。削った歯は二度と元に戻らないので、簡単な虫歯治療でも精密さが求められます。そのためにも技術はもちろん、先進の機器を導入して良い治療を提供しています。
プロフェッショナルとしてあらゆる治療の選択肢を提案
先生の診療ポリシーや大切にしていることはありますか?

本来なら抜歯するような状態でも「この1本を残そう」とするのが歯科医療の原点です。治療は、まず現状をきちんと把握することからスタートします。ですから、各種検査は徹底的に実施します。その上で、最善と思われる治療方法について丁寧に説明。治療には幅がありますから、各治療のメリット・デメリットをお話しし、最終的に治療を選択するのは患者さんです。そこでゴールが決まって、初めて手段である「治療方法」が決まります。歯科医師と患者さんの認識が一致することが大前提です。費用面などさまざまなご事情もあるでしょうから、今できる治療の選択肢をご説明して、最終的に患者さんが人生観やライフスタイルを踏まえて決定できるように、私からは専門家として情報を提供します。虫歯だからすぐ削ると安易に決めたり、すべてを歯科医師任せにしたりすることはお勧めできません。
力を入れている治療はありますか?
歯の根の治療である根管治療の難症例を数多く経験してきました。根管治療は歯の根の中を殺菌する治療ですが、根管治療が必要になるのは、神経を取る治療をした後、歯の根の先が菌に感染した場合などです。ほかの医療機関ではなかなか治らずに、困って遠方から時間をかけて来院される患者さんも多くいらっしゃいます。他には、インプラント治療ですね。歯が欠損してしまった際、ブリッジや入れ歯といった方法もありますが、インプラント治療が第一の選択肢となります。ブリッジは他の健康な歯を削ることになってしまいますし、入れ歯は機能性に課題があり、固定するために金具を引っかけている歯にとっても良くない影響があります。残っている歯を健康に残すという予防の面から考えても、インプラントがお勧めなのです。
また、「精密な治療」にもこだわっているのですね。

はい。削った歯は二度と元に戻りません。まずは安易に歯を削らず神経を残す技術で、それ以上悪くならないように、根管治療や矯正で総合的にアプローチして、歯の保存をめざします。そのためのすべての精密治療にマイクロスコープが必要となります。さまざまな技術を集大成してお口全体をつくっていくのです。かぶせ物一つ製作するにしても、保険診療と自費診療では治療の過程が異なります。ぴったりと密着するかぶせ物の製作には、歯茎が健康な状態でないと精密な型が採れないので、歯茎の状態を整えるための工程や噛み合わせを正しくするための工程が加わります。
社会課題に向き合い「一生涯、自分の歯」をめざす
お口の健康について、お考えをお聞かせください。

口の健康状態は社会性にも大きく関わると考えます。例えば、胃が悪かったとしても人から見てわかりませんが、口は人から見てわかりやすい部分なので、社会で活躍していこうと思ったら口の健康は欠かせないですよね。歯科治療において、先進国の中でも日本は遅れを取っていました。最近は、若い頃からの予防歯科の取り組みや、安易に銀歯にしないなど、社会的に歯に対する意識が少しずつ変化していますね。しかし、急速に進む高齢化の中で、今社会問題になっているのが「フレイル」です。
フレイルについて、詳しく教えてください。
フレイルとは、加齢や疾患によって身体的・精神的なさまざまな機能が徐々に衰え、心身のストレスに脆弱になった状態のことで、フレイルを引き起こす原因は、身体・心や認知・社会性があります。食べ物を食べられなくなってしまうと、認知の機能低下は約1.5倍上がるといわれています。そのため、歯科の治療ができるうちに、ちゃんと食べられる状態にしておくことが大切です。入れ歯は最終手段で、まずは入れ歯にせずに自分の歯できちんと噛めるようにしていきましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

「自分の歯を一生涯、健康に維持したい」という思いをお持ちの、困っているたくさんの方に来ていただきたいですね。小さな虫歯から食べるのに困っている方まで、または治療してもうまく改善につながらなかった方、セカンドオピニオンを探している方など、難しい状態の方でも、まずはお気軽にご相談にいらしてください。こちらも一生懸命、全力で最善を尽くします。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療(1本)/オペ代:30万円〜、かぶせ:5万円〜