刑部優美 院長の独自取材記事
緒方医院
(大田区/矢口渡駅)
最終更新日:2021/10/12
「緒方医院」は、刑部(おさかべ)優美医師が院長を務める消化器内科・内科の医院だ。刑部院長はピロリ菌に関するトピックのアドバイザーとして雑誌で度々取材を受けている医師。医学博士でもあり、ピロリ菌に関して高い専門知識を持っている。しかし、院内に入ってみると、先生のこうした経歴を忘れてしまうようなとても温かな雰囲気で驚いた。受付に置いてあるキャンディ、花で飾られたカーテン、ハーブの落ち着く香り……。まるで、ティールームに遊びに来たようだ。先生とのインタビューで印象的だったのは、自身が持つ高い専門知識よりもこうした地域のかかりつけ医としての役割を重視する姿勢だ。そこには、やはり地元に密着して医院を運営していた母への尊敬の念があったのかもしれない。刑部院長に話を聞いた。
(取材日2014年6月9日)
ピロリ菌除菌の効果を正しく理解して検診を
雑誌に先生の記事が掲載されているのを拝見しました。
ありがとうございます。記事は、近年、ピロリ菌が胃疾患に非常に悪い影響を与えている菌だということがわかってきたこと、そして、昨年3月にピロリ菌感染性の慢性胃炎でも保険での治療が可能になったことを受けて書かれたものです。ぜひピロリ菌の除菌を皆さんにも受けて頂きたいと思って取材を受けました。最近は、報道などから患者さんのピロリ菌の認知度も上がってきていて、除菌に関するお問い合わせもよく受けるようになりました。
ピロリ菌除菌の効果について教えてください。
ピロリ菌は多くの人が5歳くらいまでに感染しますが、もしピロリ菌が発見されたらその時点で除菌してしまったほうがそれに伴って現れる疾患は抑えられます。ですから、ピロリ菌の除菌は早ければ早いほどいいんです。ピロリ菌に感染していると胃の粘膜が炎症をおこします。そして、萎縮性胃炎・腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)という現象を引き起こします。この状態になっていると、胃がんのリスクが高くなります。そのため、この状態になる前に除菌治療を受けられたほうがいいのです。
ピロリ菌の除菌さえすれば胃がんの心配はもうない、ということではないのですね。
そうです。ピロリ菌除菌によって胃の発がんのリスクは3分の1程度抑制できると言われています。しかし、それも除菌した時の胃の粘膜の状態によって変わります。ですから、除菌時に胃の粘膜の状態を確認しながら行うことが大事なのです。健康保険の適用には、ピロリ菌除菌の前に内視鏡の検査を受けて「胃炎である」と診断されることが必須となっていますが、これもこうした理由によるものです。胃十二指腸潰瘍や悪性腫瘍がすでにあるという人も中にはいるわけですから。たとえピロリ菌が除菌できても、発がんのリスクは残ります。除菌したら終わり、ではなく、その後の経過観察が大切であることを患者さんにもしっかり理解していただきたいですね。資格も持っていますので、どうぞ安心して治療を受けに来てください。
胃カメラのシステムにも先生のこだわりがあると聞きました。
カメラに関しては当院では高性能の胃カメラを使用しています。ピロリ菌感染がある方など粘膜が炎症を起こしているような方は詳しい観察が必要となります。そうすると、経口の高性能のカメラで行ったほうが今の段階ではいいですね。高性能のカメラは、観察後に行う治療行為もしやすいんです。当院では、患者さんが苦しまずに済むようにできるだけ嘔吐反射が少なくなるようなマウスピースもご用意しています。また、どうしてもという場合は鎮静剤の使用もできます。しかし、鎮静剤の使用は心肺の機能に影響を与えるため、偶発症の危険性もあり、特にご高齢の方などは注意して使用する必要がありますね。また、当院で使用している胃カメラは院内感染防止に万全を期した消毒がされております。
香り、季節の行事…。アットホームな工夫の院内
院内は非常にいい香りがしますね。
これはローズゼラニウムの香りです。患者の皆さんがほっとできる空間になればいいなと思って香りにはこだわっています。ラベンダーの香りもよく使いますね。待合室のハーブティーも毎朝私が煎れたものを置いています。母が1970年に開院して以来、ずっと地元に密着した医院としてやってきていますので、アットホームな雰囲気にしたかったんです。こうした工夫は各所でしていますね。
他にはどんな工夫をされていますか?
院内に人形がたくさん置いてあるのは、予防接種にいらしたお子さん用です。泣かれたり怖がられたりするお子さんも多いので、通院したごほうびも用意しています。それと、季節感があったほうがいいと思っていまして、その季節ならではの行事や飾り付けをしています。例えば、ひな祭りの時は皆さんに雛あられをお配りしました。こどもの日にはこいのぼりのおせんべいですね。患者さんと季節感を共有できるよう心掛けています。アットホームなクリニックですので、いらっしゃった患者さんが楽しめるような工夫をしています。「月が替わったから行ってみよう」と、そんな気持ちで来ていい医院なんです。もしも、ここでできないような診察が必要となった場合は近隣の病院と医療連携を取ることもできます。大きい病院での治療が終わったら、また戻ってきていただいてまったく構いません。蒲田の医師会にも所属していますので、近隣の先生のご紹介もできますよ。
いらっしゃるのはどんな患者さんが多いですか?
ここに通院されている方は、母の代から通院しているご高齢の方も多いですし、新しく近所に引っ越してこられた若い世代の方も多いです。幅広い世代の活気あふれる方がこの地区はたくさんいらっしゃると感じています。最近ですと近隣の方がピロリ菌除菌のご相談でいらっしゃることも多いですね。また、大田区で行っているもの、企業で実施しているものを問わず健康診断を受けに来る方も多いです。当院は私の専門である胃腸だけでなく、一般内科の診察も行っています。糖尿病、高血圧、脂質代謝異常、喘息といった症状の方もいらっしゃっていますので、なにか体調のことで心配なことがあればすぐにいらっしゃってください。老若男女、さまざまな年代の方のお悩みに答えますよ。
親子2代のドクターはこれからも地域のかかりつけ医
こちらの写真は何でしょうか?
これは2012年にテレビで放送していた朝の連続ドラマの最中に撮っていただいたものです。番組の最後のワンコーナーですね。私の母も、そのドラマの主人公のように、この地域で長年診療していた女性医師の1人です。また、実は当院には2本の梅の木があるんですよ。私も、この梅の木たちとともに、この地域の皆さんにとっての存在に成長していきたいですね。
医師であるお母さまとの忘れられない思い出を教えてください。
母は私が小学生の中学年ぐらいの頃から開業医として働き始めました。診療が終わっても医師会での勉強活動をしたり、休日でも急患でいらっしゃった方の診察をしたりと本当に忙しそうでした。私は少し仕事のほうにばかりのめりこんでいる感がありますので、家事と両立していた母を尊敬しています。私は開業する前に大学病院や総合病院で勤務していたのですが、当時は24時間の対応が必要なこともよくあり、くじけそうな時もありました。そんな時、母は「大丈夫よ、それくらい。あなたはおなかの中にいた時から救急車の音をずっと聞きながら育ってきたんだから」と私を励ましてくれました。この時の母の言葉は心強かったですね。
最後に、読者の方にメッセージをお願いします。
この町は、昔ながらのご近所付き合いがいまだに息づく一方で、若いファミリー世代の活気もあふれる良い町だと思います。私はこの地域のかかりつけの医師として、日々進歩していく医療にアクティブに関わりながら、医師会などの地域に密着した活動にも力を入れていきたいです。健康に不安や疑問を抱えている方はたくさんいらっしゃると思います。自分のことでも、ご家族のことでも、相談したいと思ったときにすぐ側にいられる存在でありたいと思っていますので、気軽に来院してください。