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松葉 育郎 院長の独自取材記事

松葉医院

(川崎市幸区/矢向駅)

最終更新日:2021/01/28

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川崎市幸区の「松葉医院」を訪ねた。住宅街の一角にあり、水色の壁が目を引く北欧風の外観だ。院長の松葉育郎先生は、長年、糖尿病の研究と治療に取り組んできた糖尿病専門のドクター。糖尿病の研究のためデンマークに留学した経験があり、同院の建物は、当時下宿していたドクターの医院をイメージしているそうだ。そんな松葉先生が大事にしているのは、食事と運動を中心とした生活指導。「生活習慣を是正しないまま、薬で血糖値を抑えるだけでは根本的な解決にはならない」と松葉先生。今回の取材では、同院における糖尿病治療の特徴や、松葉先生が大事にしていることなどを聞いた。
(取材日2020年11月30日)

チーム医療で一人ひとりに合わせた指導を

松葉先生は糖尿病がご専門とのことですが、患者さんは糖尿病の方が中心ですか?

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8割くらいが糖尿病や、糖尿病予備軍といわれている患者さんです。ですから、まずは検尿をして血糖値を見て、その方に合った生活指導を主とした診療をしています。糖尿病の治療には薬も大事ですが、生活習慣病だといわれているように、まずは生活習慣の改善が先決。食べ過ぎや運動不足を是正しないまま、薬で血糖値を抑えるだけでは根本的な解決にはならないからです。当院では、医師、看護師に加えて管理栄養士が4人、健康運動指導士が2人在籍し、チーム医療によって、患者さん一人ひとりに合わせた治療および指導を行っています。症状が初期の患者さんに対しては、最初の3ヵ月間は薬を処方せず、栄養指導と運動指導のみで様子を見ていきます。

具体的にはどんな指導をするのですか?

医院の2階のスペースで、定期的に個別指導をしています。例えば食事指導も、一般論を教えるのではなく、患者さんが普段食べているもの、飲んでいるものを詳しくお聞きして、改善できそうな部分を直してもらうのです。今の食習慣を少し変えるだけでもだいぶ違うんだ、ということを実感してもらえると思います。キッチンもあるので、調理実習のように糖尿病食を作ったり、おしょうゆをスプレーに入れて少し吹きかけることで、塩分をほとんど取らずにおしょうゆを味わうことができるといった、ちょっとした工夫をお伝えすることもしています。運動面では、ヨガ教室も開催していて、とても好評ですよ。ただ運動するだけでは飽きてしまうと思いますので、患者さんが楽しめる内容を考えていきたいですね。

「糖尿病食を楽しむ会」というイベントも開かれているそうですね。

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年に2回、市の施設を借りて開催しています。糖尿病でも食事を楽しめる、簡単に調理できて、おいしく食べて、最後に運動するという体験型のイベントです。運動も組み込んでいるのは、食べた後に血糖値を測定し、その後の運動で血糖値がどうなるかを実際に経験してもらうためです。このイベントを通じて、皆さんもだいぶ意識が変わりますね。なぜ医師が「運動しなさい」と言うのかが、理解できるようになるんです。長年の生活習慣を変えることは難しいこと。だからこそ、患者さんが納得して治療や生活習慣の改善を継続していただけたらうれしいです。

客観的なデータをもとに治療方針を選択

遠隔診療も行っているそうですね。

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遠隔診療では、パソコンやスマートフォンの画面を介して診察を行います。ただし、3ヵ月に1回の通院が必要だったり、また、以前は初診の患者さんは実際に来院していただく必要がありました。ですが、新型コロナウイルスの問題があって、現在は時限的に、条件次第で初診も受けつけています。患者さんの中には他県など遠方から通院している方もいますし、お仕事などで通院時間がなかなかとれない方も少なくありません。新型コロナウイルス感染症の流行から運動不足になったり、インスリン注射が必要なのに通院をためらっている患者さんもおられました。糖尿病をはじめ生活習慣病は、継続して治療することが大切ですので、症状が安定しているときや、検査の結果を聞くだけのときに遠隔診療を利用していただいて、無理なく治療を継続していただければと考えています。

遠隔診療においては、検査機器やアプリを積極的に活用されているとか。

糖尿病は、診療の時だけ血糖値を測っても、十分ではないのです。むしろ日常の積み重ねが大事です。ですので、糖尿病の方であれば、血糖値を自分で測定できる機器をお貸ししますので、その測定値を送ってもらい、問診の内容を踏まえて薬の量を調整し、処方箋をお送りします。2018年からは、パーソナルヘルスを管理するスマートフォンのアプリを導入し、患者さんに利用していただいています。このアプリに記録される患者さんの毎日の血糖値や食事、運動・血圧記録などのデータを連携し、診療時に閲覧できるシステムを導入しました。食事の写真を撮るなど患者さんご自身の意思も必要ですが、日常生活の記録を見られるのはとても有用です。何が良くて何が良くないのか判断がつきやすいですね。より生活に即したアドバイスと治療ができるようになりました。

糖尿病の診療に関して、特徴的な部分を教えていただけますか?

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人工膵臓を使った検査です。人工膵臓とは、糖尿病の患者さんが外科的な手術をする時などに、血糖値をコントロールするために使われている人工臓器のことです。患者さんにこの機械を着けていただくことで、血糖値の正常化に必要なインスリンの分泌量を測定できます。 現在、糖尿病の治療薬は種類が増えていますし、インスリン注射という選択肢もありますので、検査データをもとに、適したものを選ぶことができるんです。「病気が一向に良くならない」という患者さんにも有用ですし、治療に抵抗があるという患者さんが、この検査によって現状を知り、納得して治療を受けるようになったケースもあります。

傾聴を大切に、患者の気持ちに寄り添った医療を

診療において、大切にしていることは何ですか?

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傾聴です。患者さんのおっしゃることを丁寧にお伺いしたいと考えています。例えば仕事の内容は生活のリズムに影響しますし、家族の介護などでご自身の生活リズムが崩れてしまうこともあります。すると、症状が悪化してしまうんですね。とはいえ、仕事や生活環境はなかなか変えられないですから、その人が無理なくできることの中から、改善の糸口を見つけることを大事にしています。また、医師は人の生死に関わっているぶん、つらい気持ちになることもあるのですが、逆に、寄与できることもあると感じています。糖尿病の患者さんは悪性腫瘍を合併しやすいことが知られていますが、患者さんの話から早期に発見することができ、適切な治療につながった時はとても喜ばれました。そういうときは心から良かったと思いますし、やりがいを感じます。

最近は30代、40代といった若い世代が、糖尿病になるケースも増えていると聞きます。

若い世代の場合、尿検査で糖が出ていると指摘されても、精密検査で「まだ糖尿病ではない」と言われ、放置してしまう人もいるようです。しかし、後になって病院に来たとき、かなり症状が進んでいたというケースが少なくありません。とても残念なことですね。糖尿病には「境界型」といって、血糖値が糖尿病型ではないために糖尿病とは診断されないものの、正常とも言えない状態があります。この段階で受診してもらえれば、食事や運動習慣を変えていくことで改善に向かう可能性が高いですし、進行を食い止めることも期待できます。心筋梗塞などの原因となる動脈硬化は、境界型の段階から進行していますので、血糖値が高い傾向があるなら、生活習慣の改善が必要です。

最後に、読者へのメッセージをいただけますか?

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生活習慣を見直してみましょう。おなかが空いたら食べる、食べたら体を動かすことが、人間の本来の在り方です。現代人は食べ過ぎているといいますが、昔の2倍も3倍も食べているわけではないでしょう。生活が便利になって、日常的に体を動かしていないから、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが崩れて糖尿病になるのではないかと思います。とはいえ、健康のために今の生活にないものを取り入れることは大変ですから、通勤時、一駅前で電車を降りて歩くとか、今の生活の中で改善点を見つけて、健康的なサイクルをつくっていきましょう。できれば体重計、血圧計、万歩計を用意して、自分の生活スタイルを観察してみてください。受診した際は、そういった日々の生活習慣の変化や工夫についても教えていただければと思います。

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