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福智 寿彦 院長の独自取材記事

すずかけクリニック

(名古屋市千種区/今池駅)

最終更新日:2020/04/07

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今池駅から徒歩5分ほど。「すずかけクリニック」は、てんかん専門医である福智寿彦先生が2008年に開業した精神科クリニックだ。てんかんは、まだまだ社会に正しく認識されていない病気。「病気を排除するのではなく、みんなが知恵を出し合って社会生活できるようにするのが正しいありかた」と福智先生。そのための就労のサポートや「パープルデー」をはじめとした啓発活動にも精力的に取り組んでいる。インタビューは、てんかん患者を取り巻く多くの問題や、その解決のための取り組みなど、穏やかな口調の中に医師としての熱い信念を感じさせるものであった。
(取材日2016年5月25日)

てんかん患者のQOLの向上が自分の使命

最初に、てんかんの専門医となったきっかけを教えていただけますか?

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てんかんの専門医となったのは、偶然の出会いがきっかけですね。父が医師でしたので、ごく自然に私も医師になりましたが、研修医として就職したのが東京の国立精神神経センターというところでした。ここは精神科、脳外科、小児神経科などがそろった施設で、精神科では統合失調症やうつ病、発達障害、てんかんなど、それぞれの病棟に専門医がいました。ここで4年間研修したのですが、たまたま運動不足を解消したいと思っていた時にバドミントンに誘ってくださった先生がてんかんの専門医だったんですよ。その先生と自分の相性が良かったのと、けいれん発作を見て自分自身がびっくりしたということ、それからてんかんが神経内科と精神科の中間にあるような病気で、診断には脳波やCT、MRIなどの画像診断も重要であり、それを勉強したいと思ったのがきっかけですね。

こちらのクリニックを開業された経緯を教えてください。

てんかんは神経内科や脳外科でも診ますが、そちらでは外科手術や薬など、発作のコントロールが主になります。もちろんそれはとても大切なことですが、それ以上に結婚や就労など、彼らのQOL(生活の質)を改善させてあげることが、精神科医である自分の仕事だと思っています。そのために、まず長期入院されている統合失調症やうつ病、発達障害の方たちが、退院後にデイケアに通所しながら1人暮らしの生活のサポートをするための施設として、1998年に御器所に統合失調症の方を中心に診る「福智クリニック」を開業しました。その後、統合失調症と、てんかんとでは社会参加へのアプローチの仕方が違ったこともあり、2008年にてんかんの方を中心に診る「すずかけクリニック」を今池に開業しました。

地域の印象について、お聞かせください。

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てんかんは専門医が少なく、特に大人の社会復帰を支援しているところはさらに限られます。このため御器所のクリニックにも三重県や岐阜県、関西方面など遠方からも患者さんが多くいらっしゃっていたので、交通の便の良さから今池を選びました。また精神科のクリニックをつくる時には、なかなか近隣の方の理解を得るのが難しいのですが、この地区の方や商店街の方たちには本当に歓迎していただけましたね。今池は名古屋でも有数の繁華街ですから、少々のトラブルでは動じないというか、「クリニックができてくれて良かった」と言っていただけるほど。患者さんの就労支援のために併設しているケーキ屋さんには、近隣のマンションやアパート、飲食店の方などがお客さんとしてたくさん訪れてくださっています。

てんかんは高齢発症も多い、100人に1人の病気

クリニックの特色について、お聞かせください。

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当院は1階が「寸心」というケーキ屋さん、2階が外来、3~5階がデイケアやナイトケアの施設になりますが、6月から3階部分を就労移行支援事業所としてオープンします。さらに来年には、てんかんの方が働くジャズのライブハウスを近隣に開業予定です。「寸心」はあくまで障がい者として働く施設ですが、われわれがめざしているのは、障がい者雇用枠での一般企業への採用です。てんかんはコントロールされていれば、もちろん仕事に支障はありませんし、コントロールされていなくても、工夫次第でいくらでも仕事ができます。それを証明するためには、まず周囲の方に実際に働いているところを見てもらうこと。「寸心」がガラス張りなのは、中で働いているところを見てもらうためなんですよ。

てんかんの診断、治療はどのように行われますか?

てんかんは似て非なる発作がたくさん存在するため、てんかんの疑いがある場合、まずは専門医に診てもらうことが重要です。当院の場合ですと、初診ではまず今までの病気、それから今ある発作がどのようなものか、さらに発作症状の後にどのような問題が起きたのかを伺います。特に診断には発作症状を見ることが重要ですから、可能であればてんかん発作をビデオや携帯電話で撮影していたけるといいですね。それから脳波検査やMRIなどの画像検査も行います。そうしててんかんと診断された場合、てんかんの中にもさらに種類が分かれますから、それに合ったお薬を出します。てんかんは本人に自覚がないことが多いので、周りの人が気づくことが重要です。今は新しい薬や治療法が開発されていますから、適切な診断と治療を受ければ7割の方は発作がほぼゼロになります。残りの3割の方も、かなり発作回数を減らすことができますよ。

てんかんは、どのくらい身近な病気なのでしょうか?

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てんかんの発病率は1パーセントですから、100人に1人の病気なんですよ。子どもの病気と認識している方が多いですが、実は65歳以上の高齢者の発病率もとても高い病気です。脳の発達段階で微小な梗塞ができたり、血管の問題によって、それまで何の問題もなかった人が高齢になって初めて発作を起こすのです。ところがてんかんは子どもの病気というイメージのために、てんかんと診断されず、認知症と間違えられることも多いです。実は高齢発症のてんかんは、子どもと比べてコントロールしやすいんです。だからこそ適切な診断が重要であり、われわれも啓発活動や講演会で、てんかんについて正しく理解してもらおうと「パープルデー」活動に取り組んでいます。

大切なのは患者自身が社会に出ていくこと

「パープルデー」について詳しくお聞かせください。

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「パープルデー」はもともとカナダで始まり、北米を中心に、紫色を身につけることによって、てんかんの人たちをサポートする社会的な運動です。日本で本格的に始まったのは去年からで、東北大学のてんかん科と東京大学の精神科、静岡のてんかん・神経医療センター、和歌山県立医科大学、そして愛知医科大学と私が中心となって、「全国てんかんリハビリテーション研究会」という研究会を立ち上げて、てんかんの方たちの社会参加を促す活動の一環として取り組んでいます。賛同している先生方は皆さんボランティアで、自分たちでお金を出し合っているのですが、それだけのやりがいがありますね。3月26日には世界的にイベントが開催されており、去年から日本の各地でもイベントが行われています。ダンスや音楽を通しての交流、相談会、ラジオ局とのタイアップイベント、皇居でのランニング企画など、全国でたくさんの方が趣旨に賛同し参加してくださいました。

てんかんについて、やはり周囲の誤解が多いと感じますか?

パープルデーの活動以前も、学校の先生や行政の方に、てんかんについての講演会は何回も行っていて、皆さん頭では理解してくださいますが、自身の生徒や子どもの結婚相手、就職先など、自分の身の回りのことになると排除してしまう場面をたくさん見てきました。でも実は、てんかんでなくても自分が何かしらの病気になった時に、同じような問題が降りかかる可能性があるわけです。たとえ疾患があったとしても、うまく社会で生活していけるようにみんなで知恵を出し合うことが、正しいありかただと思います。

最後に、読者の皆さんにメッセージをいただけますか?

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大切なのは、てんかんの人たちが自分たちから社会に出ていくことです。勇気を持って出ていくことで、周りの人たちのネガティブなイメージも払拭され、病気について正しく理解されるのです。そうして社会の受け皿もつくられていきます。それは統合失調症や発達障害も同じです。当院はプライバシーを守って診察できる環境を整えていますから、勇気を持って来てみてください。てんかんの発作がなくなっても、社会に出られなければ意味がありません。仕事をして、結婚をし、子どもをつくる。一般の人と同じように自立した生活をしていただくために、われわれは治療し、支援をしています。

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