上野友也 院長の独自取材記事
うえの歯科医院
(横浜市鶴見区/鶴見駅)
最終更新日:2021/10/12

横浜市鶴見区の住宅街を、鶴見駅方向からまっすぐ西に向かうバスに乗って約10分。近未来的な外観の「医療法人VERITASうえの歯科医院」が現れる。院内に入ると、上野友也院長こだわりの歯科医院らしからぬ空間が広がっていた。吹き抜けの天井、天井から吊り下げられたデザイン照明、整然と並ぶシックなソファ、広々と横に伸びた受付カウンター。まるでホテルのエントランスのようだ。2013年に現在の地へ新築移転した同院だが、鶴見で開院して2015年で14年目になる。「患者様来院数は1万を超えましたが、いまだに開院当初の患者さんがメンテナンスにいらっしゃっています」という上野院長。定期検診の数を尋ねると年間延べ2千人以上というから驚かされる。これほどまでに患者を引き付けるものは何か、その理由を探ると人間力というキーワードが浮かんできた。
(取材日2015年11月25日)
患者の不安を減らすためにこだわったデザイン
すごくすてきなクリニックですね。受付はホテルのロビーのようです。

ありがとうございます。前のクリニックが手狭になったので、2013年にここを建てて移転しました。おっしゃる通り、ホテルや美術館をイメージして作っています。少しでも患者さんの癒やしになればと、天井をはじめとした要所に木材を使ったり、週替わりでフラワーデザイナーの方に受付横の花を生けてもらったりしています。歯科医院というと白一色のインテリアを思い出される方が多いと思いますが、当院では、歯科医院らしくならないよう建築デザイナーの方にお願いしました。あえて「らしくない」デザインにしたのは、想像以上に歯科医院へ恐怖心をお持ちの方が多いとわかり、それならば歯科医院に見えないようにすれば少しは患者さんの恐怖心も和らげられるのではないかと思ったからです。
1階の診療室はユニークな間取りのように見えました。
大まかに言えば、治療に使う器具を滅菌する滅菌ルームと歯型の石膏模型を作る石膏ルームを中心に、8つの診療台がぐるりと囲んで扇状に広がっている形になっています。診療台同士の仕切りはありますが、できるだけオープンスペースを取ってスタッフが動きやすい動線を確保しました。滅菌ルームと石膏ルームには、仕切りも扉を取り付けていません。通り抜けできるトンネル状になっているので、端から端の診療台までストレートに移動できます。どちらも従来は隠すのが当たり前の部屋ですが、あえてオープンにしたのは、患者さんの目の前で洗浄したり石膏の型を作ったりすることで、「きちんと洗浄されているのか?」などという不安を取り除きたかった、というのが一番の理由です。一方で、部屋にいるスタッフは常に見られていますから、きれいに使おう、汚したら掃除しようという意識が働いて、部屋の清潔が保たれるという効果にもつながっています。
患者さんの不安を取り除くため、他にやってらっしゃることはありますか?

患者さんと歯科医師との橋渡し役、トリートメントコーディネーターを常駐させています。私たち歯科医師も患者さんとお話はしますが、十分な会話ができなかったり、患者さんは直接ドクターに本音を言いづらかったりするものです。そこで当院では、初診の患者さんにまずトリートメントコーディネーターの部屋で本当にご希望される治療方法から生活背景に至るまでじっくりお話を伺い、疑問があればそこでお答えし解消しています。トリートメントコーディネーターを置いて一番驚いたのは、「どうして磨いてこなかったの?」など歯科医師のちょっとした一言で、いかにたくさんの患者さんが傷ついていたのかということです。そうした本音は、初診の時にお渡しする問診票には決して書かれません。そうした患者さんの思いを、これからもできる限り受け止めていきたいと思っています。
生涯のホームドクターをめざし万人に優しい環境形成
オペ室は特別な設備があるのですか?

ここは主にインプラント治療のオペを行う部屋です。オペは長時間かかる場合もありますから、患者さんの体への負担をできるだけ減らせるように、人間工学に基づいて作られた疲れにくいユニットを入れています。照明は、術野を鮮明に照らすためにLEDの無影灯を入れました。そして最大の特徴は、感染予防として天井に設置した空調システムです。ユニットの背もたれを倒すと、ちょうど患者さんのお顔が空調システムの真下に来るような配置になっています。空調システムから出てくる風は滅菌の空気で、カーテンのように患者さんの頭を筒状に覆うので、術野を滅菌室と同じ状態に保てるということです。
キッズルームの他に、おもちゃの置かれた個室がありますが?
当院では、ファミリールームと呼んでいます。キッズルームにいても一人で遊べないような小さなお子さんや、人見知りして親御さんと離れられないお子さんがいらっしゃった時、治療する親御さんの横でお子さんが待てるようおもちゃや絵本を置いた部屋です。部屋全体の配色やデザインは、横浜の海をイメージして作りました。この地域は本当にファミリーの方が多く、特に小さなお子さん連れの方にはご好評いただいています。一人で遊べる子には、キッズルームも人気です。親御さんの治療が終わっても、帰りたくないと言うお子さんは珍しくありません。キッズルームのデザインは、近くにある三ッ池公園をモチーフにしました。当院ができたばかりの頃は、ご近所のお子さんが外からキッズルームを見て「ここで遊んでいいですか?」と訪ねて来たことが何度かあります。うれしかったですね。本当は、外に公園を作ってご近所に解放したかったのですが、スペースの関係で実現できませんでした。
こちらはどういった患者さんが多いのでしょう?

年齢層に偏りはありませんし、訴えられる症状も虫歯や歯周病、インプラント治療などさまざまです。強いて言えば、定期検診の方が多い、長く通っていただいている患者さんが多いということでしょうか。開院当初にまだ幼かった子が、今は大学生になって診療台に寝ていると、「こんなに大きく育って」とその子の親のような気分になってしまいます。ご近所に住んでいた女性が結婚されて鶴見を離れても、引っ越された先から旦那さんを連れてわざわざ遠くからいらしてたり、お子さんと一緒にまた通院されるようになったりすることもありますね。私自身、生涯お付き合いできるホームドクターを志していますので、小さなお子さんから高齢者、障害者の方まで末永くいらしていただく、そのための環境形成を行っています。
歯科医師に必要なのは技術の前に人間力
クリニックの方針についてお聞かせください。

患者さんの要望をしっかり聞き専門家の立場からベストなプランをご提案し、お互いが納得して治療を進めていくこと。それから、院内感染のリスクを極力抑えてご安心を提供することですね。掃除専門のクリーンスタッフを置いて、欧州基準でクラスBの高圧蒸気滅菌器やホルマリンガス殺菌器で治療器具を滅菌し、待合室には業務用空気清浄機を入れ、キッズルームのおもちゃも毎日除菌をしています。お子さんに対しては、「無理に治療しない」というスタンスです。例えば診療室に入るのが嫌な子は、待合室で私がブラッシングをします。そして次回は、診療室の入り口まで行こうと誘ってそこでブラッシングして終わり。その次は診療台まで誘って、できたねと褒めてブラッシングして終わり、というようなステップを踏むことで、歯科医院を好きになってもらうように心がけています。
熱心にスタッフの教育をされているようにお見受けします。
研修は多いほうではないでしょうか。院内に講師を呼んで講義していただくことはよくあります。しかしそうした技術的なことよりも大事なのは、より良い人間関係を構築する力です。高い技術力は歯科医院の魅力になりますが、現実には、受付の対応が良いとかスタッフが笑顔で迎えてくれる歯科医院のほうに人は集まるのではないでしょうか。言い換えれば、患者さんと歯科医師との関係というより、人と人との関係が物を言うということです。もちろん技術も必要ですが、スタッフ教育では人間力を身に付けることに重点を置いています。
印象深い患者さんについてお聞かせください。
皆さん、それぞれ印象深いといえば言えますが、お一人だけというと開院当初から通っていただいている現在70代の男性の方です。当院は開院記念日が4月7日なのですが、ちょうどその方は近い日にご予約をいただいていました。ご予約の当日、その方は私の顔を見て一言「もう開院して○年ですね」とおっしゃったんです。私は患者さんとプライベートでお付き合いすることはありませんから、その方とも診療の時にお会いするだけです。しかしそれでも、開院した日まで覚えていただけたのかと、その時の感動は今でも忘れられません。
将来の展望について何か考えていらっしゃいますか?

歯周病の関係で食事指導や栄養指導をしてもらうために2人の管理栄養士に来てもらっていますが、社員食堂を作ろうと進めています。移転する前の閉院したテナントが近くにあるのですが、社員食堂を作るためにそこをまだ借りたままにしているんです。ゆくゆくは「歯にいい食事のできる店」として地域にも開放し、一人暮らしの高齢者の方などに利用していただく地域コミュニティーの場に活用していけたらと思います。もうひとつは、保育園を作ること。スタッフも子どもを連れて出勤できますし、当院の管理栄養士が作った給食を出したら安心です。つまり、歯科医院にこだわらず、普通の会社と同じような考え方をしているんです。単なる歯科医院では終わりません。当院のやることが、ビジネスモデルとして将来、世の中に広められたらいいなと考えています。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/1本36万円~、マウスピース型装置を用いた矯正/69万3000円~