江角 晃治 院長の独自取材記事
えずみクリニック
(堺市西区/富木駅)
最終更新日:2024/09/02

堺市西区にある「えずみクリニック」。同院はショッピングモールの2階という利便性の高い立地にある。バリアフリーの院内は、車いすの患者に配慮した低いカウンターや、点字ブロックなどを設置。診療しているのは、風邪や花粉症、糖尿病などの内科一般のほか、食道、胃、大腸などの消化器科やすり傷ややけどなどの外科、肛門科、禁煙相談と幅広い。これは、江角晃治(えずみ・こうじ)院長の「専門性をなるべく出さず、幅広く診る」という信念から来るものだ。地域のかかりつけ医として奮闘する江角院長に、こだわりの診療スタイルや今後の展望、さらには休日の過ごし方まで、たっぷりと話を聞いた。
(取材日2019年9月30日)
専門内外を問わず、「何でも診られる医師」を志す
ショッピングモールの2階と、とても便利な場所にあるクリニックですね。

そうですね。でも、外からは中の様子が見えないので、「ここにクリニックがある」ということが広まるまでに3、4年ほどはかかったと思います。このショッピングモールで働く人たちですら当院を知らなかったほどです。最初のうちは、風邪などの軽い症状の患者さんが、一日に数人しか来ないという日もありました。患者さんが増えるまでの間はなかなか苦労しましたね。でも、新しい医師にいきなり深刻な病状を打ち明けるのは勇気がいるでしょうから、たぶん、軽い症状のときに来て「どんな先生なんだろう?」と様子を見られていたんでしょうね。
現在はどんな患者さんがいらっしゃいますか?
お子さんから高齢の方まで、幅広く来院していただいています。あとは、下のショッピングモールの厨房でやけどしたり、包丁で切ってしまったりしたスタッフの方もいらっしゃいます。ショッピングモールという立地上、買い物途中で倒れてしまった人が運ばれて来ることもありますね。そういう意味では、学校の保健室のような役割も担っていると思っています。
先生が医師になろうと思ったきっかけは何でしたか?

私の父は病理医師で、2人の兄も医師だったんです。私は医師になる気はなかったので、大学は工学部に進学したのですが、中退して医学部を受験し直しました。結局、私にとって仕事のビジョンが最もイメージしやすいのは、医師だったのだと思います。学生の頃から、「何でも診られる医師になりたい」という気持ちがあり、それが今の診療方針にもつながっていますね。外科医師を選んだのもその理由からです。今思うと安易な考えですが、体の中で一番大きく面積を占める臓器は消化器ですから、消化器を診られれば何でも診ることができると思っていたんですね。大学卒業後は、大阪大学医学部附属病院などで勤務医として働きました。勤務医時代は朝から晩までがんの治療をしていたのですが、「最初にめざしていたものと違うな」と思うようになって、開業することに決めたんです。
患者が安心して悩みを打ち明けられる存在でありたい
診療で患者さんと接する際に、何か心がけていることはありますか?

患者さんの話を引き出すことです。医師も患者さんも人間ですから、どうしても合う・合わないは存在すると思います。症状の説明に関しても、必要最低限でいいという人もいれば、すごく詳しく聞きたいという人もいる。これまでの経験をもとに、患者さんの表情を見ながら、「この患者さんにはこの情報までが必要だ」と判断しながら説明をしています。心がけているのは、診察の最後に「ほかに質問はないですか?」と必ず聞くこと。そうすると、ほかの部位の痛みなどを打ち明けてくれることもあると思うんです。
トータルで診るというのが、クリニックのモットーなんですね。
現在の医療は非常に細分化されているため、「何科に行ったらよいかわからない」というケースが多いと思います。病院側が「専門外なので別の病院に行ってください」ということもあるかもしれませんが、これは望ましくないと思いますね。当院では、まずは診察をして話を聞くことを徹底しています。その上で治療をしたり、何かを提案したり、別の病院に紹介したりといった提案ができると思うからです。まず診察をしてみないことには何も始まりませんよね。かかりつけ医として、適した医療機関に患者を案内するパイロット的な役割もそうですが、ほかに潜んでいる病気がないかを診ることも大切な役割だと思っています。そして、「こういう可能性が除外されたので、○○科の領域だと思います。違うと言われたらまた帰ってきてください」と伝え、最後まで責任を持って診るということも大切にしています。
印象に残っている患者さんとのエピソードを教えてください。

最近では、例えば「首にしこりができた。どこに行ったらいいかわからないけど、とりあえずえずみさんのところに来た」と患者さんから言ってもらえるようになったので、自分がやってきたことは間違ってなかったなと思えるようになりました。あと、人と話すことが好きなので、暇なときは患者さんとずっと話しています。開業してすぐの時は患者さんも少なかったので、最長で1時間40分もお話ししていたことがあります。「次の患者さんが来たらやめましょうね」と言い続けて、気がついたらそのくらいの時間がたっていました。
治療へのハードルを下げるメンタルケアにも力を注ぐ
胃の内視鏡検査には鼻からの内視鏡を使って行っているんですね。

何かしら症状があったのに検査をしなくて、がんの診断が遅れるというケースも多いです。早期発見のため、必ず検査は受けてほしいです。しかし、「胃カメラ・バリウム検査を受けてください」と言うのは正論ですが、それが患者さんに受け入れられるかどうかはまた別の話です。少しでも心理的なハードルを下げるために、当院では経鼻内視鏡検査を実施しています。私が思うに、経口でも経鼻でもつらさはあまり変わらず、最終的には医師の技術力が大きく影響してくるものなのです。でも、精神的に抵抗を少なくすることは大切だと思いますね。あとは、強制するのではなく、「決心がついたら電話して」と、患者さんに考える余裕と主導権を差し上げるようにしています。そこまで言うと、どこかで決心をつけてくれることが多いですよ。
お忙しい毎日だと思いますが、休日はどんなことをして過ごしていますか?
お小遣いが少ないので、お金のかからない趣味を楽しんでいます(笑)。車をコンピューターにつないでいじったり、何も考えずに運転をしたりすることが好きですね。あと、匿名でブログを書くことも趣味の一つです。自分でドメインを契約して、カスタマイズもしていますよ。もとは工学部だったので、コンピューター系のことが好きなのかもしれませんね。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

お年寄りにもっと来てほしいなと思います。「何の症状かわからないときはあのクリニックに行けばいい」と広まってくれたらうれしいです。最近ではインターネット検索で病院を探したり、病気について調べたりすることも多いと思います。インターネット検索は、最初のとっかかりとしては良い手段ですが、当然間違った情報も上がってきます。自己判断せず、最終的には医師に相談してほしいなと思います。私は、医師になったからには「専門外です」とは絶対に言わないようにしています。何か困ったことがあれば、「こんなこと相談してもよいのかな」とは思わず、まずはお気軽にお話しください。