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石黒 良彦 院長の独自取材記事

いずみが丘クリニック

(名古屋市守山区/神領駅)

最終更新日:2022/09/15

石黒良彦院長 いずみが丘クリニック main

名古屋市守山区泉が丘、緑の多い住宅地の一角にかわいらしい外観の「いずみが丘クリニック」はある。泌尿器科をメインに内科・皮膚科を診療する同院の院長を務めるのは、泌尿器科が専門の石黒良彦先生。同院には排尿困難や頻尿など尿の問題で困っている老若男女の患者が、県内外から多く訪れているという。人には言いづらいデリケートな問題だが、親しみやすい雰囲気の石黒院長は「患者さんとの時間を大切にしています」と優しく話す。医師として、丁寧で正確な治療を心がける姿や医師としての信念、診療スタイルなど、さまざまな話を聞いた。

(取材日2022年6月22日)

老若男女問わず、患者のデリケートな問題に丁寧に対応

まずこの地で開業された理由を教えてください。

石黒良彦院長 いずみが丘クリニック1

開業前、私はこの守山区に隣接する尾張旭市の旭労災病院に勤めていました。勤務医時代からよく知っているこの地域に貢献したいという気持ちがあり、2006年にここで開業することを決めました。専門が泌尿器科ですから、尿が出ないとか、尿が漏れてしまうという患者さんが来院されることが多いです。クリニックをつくるにあたってこだわったのは、受付と待合室を仕切る本棚を作ったことです。泌尿器科は恥ずかしいと思う人も少なくないですから、受付に立った時、待合室の椅子に座っている方から少し目隠しになればと工夫しました。新型コロナウイルスの流行中は、患者さんの受診間隔の調整を行うことで混雑の緩和につなげていきました。受診をためらっている方には電話での診療も行いました。

どのような症状の患者さんが来られますか?

リモートワークが広まったことにより、一日中座りっぱなしで前立腺炎に罹患する患者が増えていますね。発熱することもあるので、新型コロナウイルス感染症と疑った事例もありました。ほかに、お子さんのおねしょや外陰部の形状の相談。これはお母さんが心配し過ぎのこともあります。女性は膀胱炎や尿漏れの症状などですね。泌尿器疾患は、認知度の低さや恥ずかしさで受診しない人も多いのですが、治療できる症状も多いと知っておいてほしいですね。これらの外来診療の一方で、訪問診療も行っており、カテーテルの管理などをしています。高齢化によって在宅医療の重要性が増す中、大切な分野だと思います。

デリケートな問題が多いと思いますが、患者さんにはどのように接していらっしゃいますか。

石黒良彦院長 いずみが丘クリニック2

とにかく偉そうにしないこと。診察室に入って来られたら「こんにちは」とあいさつし、患者さんのお名前を確認します。そして「石黒です。よろしくお願いします」と言ってから診察を始めます。これをするとしないとでは患者さんの気持ちが違うのではないでしょうか。できるだけ専門用語は使わず、ちょっと冗談も交えながら話すし、女性を診察する時は、看護師あるいは事務の女性を呼んで立ち合わせます。お子さんの場合にはなるべく腰を低くし目の高さを合わせて話すことも心がけています。あと、患者さんにはできるだけ自分の言葉で話していただきたいと思っています。インターネットで調べたのか専門用語を使われる方がいますが、誤解のもとになることもありますので普通に話してくださって大丈夫ですよ。

患者の話にじっくり耳を傾ける。それが診療スタイル

多くの患者さんが来院されていると伺いました。

石黒良彦院長 いずみが丘クリニック3

多いですね。ですが、特に初診の方などはじっくり時間をかけて診療しています。それでほかの方をお待たせしてしまうこともあるので、現在のところ予約制は取っていません。また、初診でなくても患者さんとの時間は大切にしていますよ。雑談でもその中に病気のヒントや原因が隠れていることもあるので侮れませんので。患者さんが思い詰めている時は、時間を取って話し続けることもあります。ですから、当院の待ち時間は正直に言って長いと思います。でも、この診療スタイルは変えられないですね。

先生が泌尿器科に進まれたのはなぜでしょうか。

私はもともと薬学部で有機合成化学を学び、その後医学部に入りました。そのため、医師になったのは人より遅いんです。医師に対する考え方も、ほかの人とちょっと違いがあるかもしれません。私が考える医師とは、患者さんが「痛い」と言ったら「どれどれ」と診察して薬を出して、場合によっては手術しましょうという感じでずっと寄り添ってくれるイメージです。昔の医師はそうだったと思いますよ。状況が悪くなっても、亡くなるまで責任を持ってちゃんと診る。泌尿器科は特にそうなんですね。手術も外科に送らないで自分で行いますし、男性も女性も子どもも、場合によっては生まれる前の赤ちゃんを扱うこともあります。前立腺がん、腎がん、膀胱がんなども終末期まで寄り添っていきます。それが私には一番医師らしく感じ、泌尿器科に進みました。

大学卒業後は、実際に泌尿器科を診療し始めた頃はいかがでしたか?

石黒良彦院長 いずみが丘クリニック4

大学病院では毎日のように先輩の先生に怒られていましたね。モタモタして「おまえには任せられない」と言われたり。他科の先生に「やめたくなるんじゃないの?」と心配されるぐらいでした。でも本当に鍛えられましたよ。泌尿器科の医師としての手技、知識はもちろん、患者さんへの接し方について多く学ぶことができました。先生は私には厳しかったのですが、患者さんにはとても優しかったんです。二診体制だったので隣から先生の声が聞こえて、「ああ、あんなふうに話せばいいんだな」と。今でも意識していますね。ついこの間その先生から電話があって、非常に大事な方を私に診てほしいという話をいただきました。先生に信用されていると思うと涙が出ましたね。

泌尿器科専門の医師として地域医療に今後も尽力

クリニックとしての強みはどんなことでしょうか。

石黒良彦院長 いずみが丘クリニック5

よく患者さんに、腎臓は尿の工場で、膀胱は尿の倉庫という説明をします。工場が何かの原因でダウンすると倉庫に尿が流れず、倉庫の出荷体制がダウンすると「在庫=尿」がどんどんたまります。以前、尿が出ないからと内科などで利尿剤を処方され、それを飲んで状態が悪くなった患者さんを診察したことがありました。倉庫の出荷体制がダウンしていたのに気づかず利尿剤を出したため、もともと問題なく尿を作っていた工場がさらに尿を作ってしまったんです。尿の問題は判断が難しい場合がありますので、尿のことは泌尿器科に来ていただきたいですね。ただやはり全身状態を診ることは重要で、私は患者さんにはどんな薬を飲んでいるのか必ず聞きますし、他院で採血した場合はデータを持って来てもらいます。きちんとした根拠に基づいた治療をしていきたいと思っています。

今後のことなどについてお話しください。

泌尿器で困っている患者さんをしっかり診つつ、内科、皮膚科など地域の方々が求められることにも応えていきたいですね。私は、大学で学んだことを社会に還元したい、少なくとも私の身の回りで泌尿器の病気に苦しむ人をなくしたいという思いで開業しました。そのために開業医や訪問看護・介護の担当者向けに講演や勉強会なども行っています。医療者であってもカテーテルの扱いに慣れていない人もいるので、地域全体の底上げを図っていきたいです。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

石黒良彦院長 いずみが丘クリニック6

先ほど利尿剤の例を出し、「尿の問題は泌尿器科へ」と言いましたが、泌尿器科を専門的に診療している医院は多くないのが現状で、この守山区でも不足しています。最初だけ少し遠くても泌尿器専門の医院へ行って治療方針を立ててもらい、あとは近くのかかりつけにしている内科の先生に薬を処方してもらうという方法もあります。それで不安なことがあったら、また泌尿器科で診断を受ける、そういう付き合い方もいいかと思います。また尿漏れなどで「年だから」と言う患者さんがいますが、治療を諦めてほしくないですね。確かに年齢が影響することもありますが、病気は医師と看護師と薬剤師と患者さん自身が協力し合って治すもの。患者さんに対しては常に「良くなる方法を一緒に考えていきましょう」という姿勢でいたいですね。

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