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川原 健資 院長の独自取材記事

のぞみクリニック

(横浜市港北区/新横浜駅)

最終更新日:2023/11/30

川原健資院長 のぞみクリニック  main

「悩みごとは一つもない」という人はあまりいないだろう。誰しもが何かしらの悩みや不安を抱えて日々を送っており、心や体に不調を来してしまう人も少なくない。新横浜駅から徒歩4分の「のぞみクリニック」は、川原健資院長が心にトラブルを抱えた人が「のぞみ」を持てるようにと開業。特筆すべき強みは、常駐する公認心理師との連携によるチーム医療。川原院長の診断を専門性の高い心理検査やテストでフォローすることで、より精細なアプローチへつなげている。また、働く人のメンタルヘルスケアにも精通している。多様な心の問題をスタッフ一丸となって解決に導く姿勢が頼もしい川原院長に、話を聞いた。

(取材日2019年12月20日)

「心のからくり」が発端の症状に他院との連携で対応

心療内科と精神科を標榜されているのですね。

川原健資院長 のぞみクリニック 1

心療内科では、私が「心のからくり」と呼んでいる、心理的な要因がもとで現れる体の症状を診ます。一方、精神科は精神疾患、つまり心の病気に対応する診療科です。両方を標榜しているのは、どちらの領域もカバーしたいと考えているからですが、実際の診察では、どちらが本質なのかわからないケースが少なくないんです。そのため明確に診療内容を分けることはせず、心と体の両面から健康な生活をサポートしたいと考えています。なかなか良くならない体の症状に対し、患者さん自身も自覚していない心のからくりが隠れていないか見極めることで、身体医学とは異なるアプローチから改善をめざせることがあります。

どのような症状で受診する人が多いですか?

うつに関連する症状ですね。うつ病の方もいれば、いわゆる「新型うつ」に該当する方、何となく憂鬱(ゆううつ)な気分が続いている、気分が沈むという、「うつっぽい」症状に悩む方もいて全体の7割ほどを占めています。ただ、主訴がうつ症状であるとは限りません。例えば過敏性腸症候群は、主な症状は下痢や便秘ですがきっかけは心理的ストレスにある場合が多いです。また症状の出方もさまざまで、精神的ストレスがきっかけで体に不調が出る人もいれば、もともと別の病気を患っていて、状態が良くならないためにうつ状態に陥ってしまう人もいます。さらに治療に関してですが、うつ病の場合は脳の神経伝達物質の不具合が原因の場合もあれば、本人の性格的な問題や生活環境が絡んでいるケースもあり複雑です。そのため単に薬を使えば良いわけではなく、慎重に治療法を考える必要があります。

「心のからくり」について詳しく教えてください。

川原健資院長 のぞみクリニック 2

心のからくりが発端の体の病気を心身症といい、慢性的な頭痛や便秘、下痢、気管支喘息などの背景に心理的な要因が隠れていることは少なくありません。「心身相関」といって、心と体は密接に関係し合っています。しかし、患者さん本人はなかなか根本原因が心の問題にあると気づけていないんですね。そのため、まず内科などを受診され、詳しい検査や治療を受けても良くならないために心療内科を紹介されるというケースも多いです。当院でも、他科のクリニックから紹介を受けることがよくあります。このように、治療では他院との協力が求められる場面も多いですから、地域の医師会や「診診連携の会」に参加し、スムーズに連携を取り合えるようにしています。

公認心理師による詳細な検査で正確な診断をめざす

薬物療法のほか、どのような治療方法がありますか?

川原健資院長 のぞみクリニック 3

一人ひとりに合わせた治療が必要です。例えばパニック症状がある場合、電車に乗って会社に行くことができません。ですが、社会復帰をするには電車で通勤することは不可欠。その際、薬物療法だけでは本人の自信もつきませんし、自然に電車に乗れるようにはなりませんよね。ですから、リハビリテーションとして現実に乗車して、慣れていく必要があります。最初から一人で長時間乗ることはさせず、付き添いの方と各駅停車の1駅から始めて、できたら次は2駅、3駅、そして急行に乗ってみましょう、と段階を踏んで行っていきます。その段階を踏んだ行動療法が重要です。本人はつらいでしょうが、やらないと良くならない。きちんと寄り添って信頼関係を築き、その上で治療を進めることが大切ですね。

公認心理師が常駐していると伺いました。

はい。カウンセリングや心理検査を担当する公認心理師が在籍しており、専門的な技能が求められるウェクスラー式知能検査のほか、インクのしみのような模様が何に見えるかで性格や深層心理を探るロールシャッハ・テストなどに対応しています。心療内科では、体の不調の陰に隠れる心のからくりが何かを見極めることが重要となりますが、検査で具体的な数値として表せるものではなく、医師の経験や勘に頼る部分も少なくありません。また短い時間で把握できるものではないため、通常の診察だけではなかなか難しいんです。そのため、時間をかけた詳細なカウンセリングや心理検査でフォローしてもらうことで、できる限り的確な治療が行えるように努めています。なお、医師は私の他に非常勤の先生が2人いまして、特に初診はなるべくお待たせしないよう努めています。

女性のメンタルヘルスケアにも注力しているのですね。

川原健資院長 のぞみクリニック 4

妊娠中から出産後の、周産期と呼ばれる時期にいる女性の診療にも力を注いでいます。妊娠中や産後の授乳中に、うつ病を発症する女性は少なくありません。また、家事や子育て、介護、さらに職場と家庭の両立に関する悩みから、心身に不調を来す女性は多くいらっしゃいます。当院では豊富な経験を持つ医師が、その方の立場になって丁寧にお話を伺うとともに、専門的な知識に基づいて診療を行い、症状やご事情に合わせてお薬を処方しています。女性が受診しやすい雰囲気づくりにも努めていますので「こんなことを相談していいのかな?」と思わず、まずはお話しをお聞かせください。

不安や悩みを共有できるサポーターを持ってほしい

心療内科の医師を志したきっかけと開業までの経緯をお聞かせください。

川原健資院長 のぞみクリニック 5

そもそも医師をめざしたのは、子どもの頃からのかかりつけ医の先生の姿があってのことです。医療の中でも心療内科を専門としたのも、自分自身の経験からです。先ほどお話ししたとおり、体の不調に精神的な問題が関わっていることが少なくなく、いくら内科的な治療をしても症状の改善に至らないことがあります。そのような経験が私にもあり、心と体の関係(心身相関)の関心を寄せるようになりました。市中病院で経験を積み、2001年に当院を開院しました。私は自身のかかりつけ医をモデルにしていたわけですから、初心のとおり、この地域の皆さんのかかりつけ医になれたらうれしいです。

先生は著書でも、アラサー世代の心理をまとめておられますね。

『アラサー世代のこころの歪み―ポスト青年期の新しい患者さんたち』という本ですね。この本でまとめているように、私が感じるのは、以前と比べて若い人のストレスに対する抵抗力が弱くなっていること。心が傷つきやすく、現実逃避しやすくなり、それがうつっぽい症状として現れる。いわゆる「新型うつ」の特徴には、仕事は手につかないのに、好きなことは精力的にできる傾向があります。上の世代の人間から見れば、甘えている、理解できないという話になるのでしょうが、今は多様化の社会。自分の力で進むべき道ややりがいを見つける必要があります。選択肢が増えたことで当然迷いも増えますし、自分自身で試行錯誤をしなくてはならないつらさもあります。そんな自己不全感や倦怠を抱える人々の心について、私なりの見解を交えながら臨床経験に基づいた対応策なども記しています。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

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高齢化が進む現代社会では認知症も大きな課題の一つです。当院では、患者さんだけでなくご家族も含めた診療に力を入れています。というのも、診断では普段の様子を客観的に把握することも必要なため、ご家族には必ず同席していただくなどの協力が不可欠なのもありますが、介護疲れからうつ状態に陥ってしまう方もいらっしゃるからなんです。また、いろいろな事情からいわゆる老老介護、認認介護を余儀なくされていることも少なくありません。そのため、ご家族のメンタルヘルスにも注意を払うことで、無理のない治療、介護ができるようサポートできたらと考えています。自分の問題は自分で解決するという姿勢は大切です。しかし、悩んだときに一緒に解決策を考えてくれ、支えてくれる存在がいることは心強いもの。ですから、ぜひ自分を支えてくれるサポーターを持っていただきたいですね。

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