中並 朋晶 院長の独自取材記事
なかなみメンタルクリニック
(北九州市小倉南区/下曽根駅)
最終更新日:2026/06/05
下曽根駅から車で約10分の郊外にある「なかなみメンタルクリニック」は、子どもの発達障害や親の育児不安を中心に、親子の悩みに幅広く対応するメンタルクリニック。産婦人科医師としての臨床経験を生かした同院の診療も特徴で、若い女性や母親も多く通う。薬の処方には慎重で、近年は薬物療法以外のアプローチにも力を入れる中並朋晶院長。不安を抱えながら暮らす多くの親子に救いの手を差し伸べられるよう、啓発にも取り組んでいるそうだ。常にありのままの姿を見せ、相手と本音で語り合おうとする中並院長に、診療におけるポリシーや現在注力している診療について聞いた。
(取材日2024年12月19日)
産婦人科出身の精神科医師が親子の不安に寄り添う
もともと産婦人科の医師だったそうですね。先生のご経歴について教えてください。

家族や親戚が医師という家系で育ったためか、物心ついた時から医師になろうと考えていました。一時期は反抗もしましたが、亡くなる間際の父の「医者はやりがいがあるぞ」という言葉が強く残り、最終的に医師の道を選びました。そして生命の誕生に携われる点に惹かれ、祖父や父と同じ産婦人科医師に。複数の病院に勤務し、多くの出産に関わりました。その中で産後うつの患者さんに出会い、産婦人科での経験を生かした新たな領域に興味を持ち、精神科に移ったという経緯です。精神科の医師になってからはお子さんの心の問題に向き合ったり母子関係の相談に乗ったりしましたが、日本は子どもの診療に対応できる精神科が多くありません。適切な医療機関につなげたくても紹介先もなかったため、状況を改善しようと住み慣れたこの地で開業しました。
産婦人科を経験しているからこその強みや、診療の特徴を伺います。
男性医師の割には、女性の月経や周産期のメンタルの問題への理解があるところが強みですね。特に若い女性は性に関する相談がしにくいと思いますが、当院ではこちらから月経などについて尋ねることもしばしばあります。そうすることで「この人はわかってくれる」と安心してくださり、皆さん女性ならではのお悩みを打ち明けてくれると思うんです。また当院は「親と子の心のリビング」がコンセプトで、一般的な精神科診療に加え、北九州では数少ない未成年の診療も実施しているのが特徴です。主に児童思春期の悩みや疾患、発達障害を診ており、子ども・大人ともになるべく薬に頼らない方針で治療を進めています。薬を完全否定するのではなく必要に応じて使いつつ、薬物療法以外の選択肢も極力提示したいというスタンスです。
患者さんはどのような方がいらっしゃるのでしょうか?

昔は発達障害が疑われる子どもの診断・対応がメインでしたが、新型コロナウイルス感染症をきっかけに、最近は不登校の子が目立つようになりました。マスクをしているためにお互いの顔がわからず、多感な時期に対人関係に不安を覚える子や環境に適応できない子が増えたと感じますね。同時にお母さんも、わが子の将来を案じて不安になるケースが多いです。難しい話なのですが、この両者に共通する「不安」という感情は生きていく上である程度必要なものでもあり、うまく向き合っていかなければなりません。そうした問題へのアプローチとして、当院ではものの見方・捉え方を変えることで不安を軽減し、問題を乗り越えられるようにサポートする認知行動療法を行っています。
アドラー心理学と栄養学の知識を生かしたメンタルケア
現在先生が特に力を入れていることは何ですか?

私自身も学び、実践しているアドラー心理学の啓発に注力しています。アドラー心理学は「誰もが幸せになれる」という前提に基づいた心理学で、親子関係や対人関係を良好にする上で役立てられないかと考えたのがきっかけです。現在は診療時にお話しするだけでなく、スマホのアプリからも私のメッセージを発信しています。音声のみの配信のため、忙しいお母さんも料理や運転などをしながら聞きやすいのがメリット。診療時によくいただく質問もアプリのほうで詳しくお答えしていますので、患者さんのより深い理解につながるのではないでしょうか。さらに、アドラー心理学について本気で学びたい、もっと知識を得たいという方に向けて、オンラインまたは対面での勉強会も始めました。
もう一つ、栄養学の観点からのアドバイスにも取り組んでいるそうですね。
栄養学は10年ほど前から学んできた分野で、食べた物がうまく消化・吸収されず、全身に栄養が行き渡っていないのが原因でメンタルに支障を来たすのではないかという観点から考える学問です。精神科では重要な領域なのですが、すぐに診療に取り入れなかったのは、私自身の体で試してから患者さんに指導しようと思ったから。たとえ栄養学の知識があっても、同時にストレスマネジメントができていないと心身のバランスが崩れたり太ってしまったりするんです。アドラー心理学に基づいたメンタルケアと食生活改善を続けた結果、体重や体脂肪率がかなり減少し、患者さんからも驚かれるようになりました。そこで十分な説得力のあるアドバイスができると判断し、数年前から診療や勉強会の場で啓発しています。
患者さんから最近よくある相談は何でしょうか?

近年は出産後の育児不安の相談に多く乗っています。メンタルが不安定で、常にストレスを抱えながら子育てをしている方の中には発達障害関連の特性を持ったお母さんも少なくありません。育児という予想不可能なものへのアプローチがわからず混乱し、悪い場合は虐待に発展して新たな問題が起きてしまう。その根底にはやはり不安が隠れていますので、私も3人の子育てをする際に参考にした、アドラー心理学をベースとしたケアに努めています。アドラー心理学は歴史や民族を超え、200年近くかけてノウハウを蓄積してきた学問です。子育てには正解がないからこそ、精神科としてエビデンスのある方法を用いたサポートを重視しています。
「不安」は捉え方次第でいかようにも変えられる
子どもの患者さんと接する上で心がけていることはありますか?

初めて見る人には恐怖心や警戒心を持つものですので、まず私が敵ではないことを認識してもらえるよう「怖かったかもしれないけど、来てくれてありがとう」と必ず伝えています。さらに発達障害の子は変化を恐れるため、服装もほとんど変えません。白衣は着ず、季節に合わせて私服を4パターン用意するのみで「こんな感じの人が中並先生」とわかりやすくしています。そして初診は顔合わせ程度にとどめ、長く話さないのもポイントです。「何か言わないと」と思わせてしまうとますます緊張してしまい次回の受診につながらないので、あえて深入りはしませんね。逆に話したい子の場合は時間の許す限り会話をして、話し方などからその子の特性の把握に努めています。
今後の展望をお聞きかせください。
勉強会に参加したくても諸事情で難しい方のために、勉強会の様子を録画した動画を見られるサービスを近々スタートする予定です。ご本人に意欲があるのに、忙しいからなどの理由でせっかくのチャンスを逃してほしくないんですよね。こちら側でできることをした上で、一人でも多くの方と一緒に学んでいきたいと考えています。また自ら引退する気はないのですが、もうすぐ還暦を迎える身として、私がいなくなったときのことは常々考えています。いずれ親御さんやお子さん自身で問題を解決する力をつけられるよう、今後もお手伝いしたいですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

世の中が複雑化した現代では、普通に生活していても不安になる出来事は多くあります。私も不安を抱えながら生きていますが、不安は物事の捉え方によっていかようにも変えられます。最初は誰かの力を借りたとしても、最後はご自身で乗り越えて行けるようになる。ただ、最初の入り口がわからずに悩んでいる方が多いように思いますので、進みたい方向に導いてくれる存在を探すことが大切です。そして当院を、受診先の選択肢に入れていただけたらこれ以上うれしいことはありません。理想は、子どもの精神科医師が不要な世界。人間関係が悪くなる前にご自身で改善できれば何よりですので、望みを捨てずに診療したいと思っています。

