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中並 朋晶 院長の独自取材記事

なかなみメンタルクリニック

(北九州市小倉南区/下曽根駅)

最終更新日:2023/12/06

中並朋晶院長 なかなみメンタルクリニック main

JR日豊本線下曽根駅から車で約10分、小倉南区の郊外にある「なかなみメンタルクリニック」は出産前後の女性や子どもの心の問題にも対応したメンタルクリニックだ。「親と子のこころのリビング」をコンセプトに、曜日や時間帯ごとに外来を分けることで待ち時間を少なくすることに努めている。産婦人科の医師としての臨床経験も持つ中並朋晶院長は薬の処方に対して慎重で、依存傾向にある患者に対しては不必要な処方をしないことをこだわりとして持って向き合っている。「人はいつからでも、どんな状態からでも、自分がなりたい自分に近づくことができるはず。そのお手伝いができれば」と話す中並院長に、診療におけるポリシーをはじめ、コンセプトである女性や子どもの心の問題、薬に対する姿勢などについて詳しく聞いた。

(取材日2022年9月1日)

産婦人科での経験を生かし親子のメンタルケアを

先生はもともと産婦人科の医師だったそうですね。

中並朋晶院長 なかなみメンタルクリニック1

父や祖父、親戚が医師という家系で育ったためか、物心がついた時から医師になるのだという気持ちはありました。一時期反抗して医学部に行かないと宣言することもあったのですが、父が亡くなる間際に残した「医者はやりがいがあるぞ」という言葉が強く残り、医師の道を選びました。他の診療科と違って生命の誕生に携わることができることに興味を持ち、なおかつ祖父や父と同じ産婦人科の医師となり、九州大学病院や佐賀社会保険病院などに勤務して出産に関わってきました。ただ、あまりの激務に一度は医師を辞めようと思うこともありました。しかしそうした中で産後うつの患者さんに出会い、これまでの産婦人科での経験を生かすことができる新たな領域に興味を持ち、精神科に移ることにしたんです。

産婦人科を経験しているからこその強みもあるのでしょうか?

男性医師の割には女性の月経や周産期のメンタルの問題というのは、理解できるほうだと思っています。精神科の医師になってからは九州大学病院で「母子メンタルクリニック」という新しい外来の立ち上げメンバーとなり、お子さんの心の問題にも向き合うようになりました。世界的にみても日本は子どもの診療に対応している精神科が少なく、ニーズはあるけれど臨床の場は少ないという領域。開業前の3年間は北九州市精神保健福祉センターに勤務したのですが、そこでは啓発や相談が中心で、中でも母子関係の問題がほとんどでした。病院につなげようと思っても紹介する場所がなく、そういった状況を改善できるのではないかと思い開業を決意しました。以来、出産前後の女性や子どもを中心にさまざまな心の問題に携わってきました。

診療において大切にしていることはありますか?

中並朋晶院長 なかなみメンタルクリニック2

子どものメンタルケアを目的に行く場所が少ないためか、保護者の方も悲壮感を持って相談に来られます。だからこそ最初のコンタクトは非常に大切にしています。お子さんに対してはよく来てくれたねという気持ちは忘れないようにしていますし、保護者に対しては診療の前に相談の時間を設けるようにしているんです。そこでは当クリニックでどんなケアやサポートができるかをしっかりと伝えています。もともと産婦人科の医師ですから、お子さんの病状の理解を促したり、対応の仕方を指導したり、母親のサポートには力を入れたいと思っています。

妊産婦から子どもの心のケアまで幅広くサポート

クリニックにはどのような悩みでいらっしゃる方が多いのでしょうか?

中並朋晶院長 なかなみメンタルクリニック3

開業当初は北九州市の産後うつ対策に携わっていたので、保健師から直接相談を受けて産後うつの早期発見早期介入に取り組んでおり、妊産婦の患者さんが多くいらっしゃいました。最近では月経前症候群でイライラしているのをわかってもらえない、生理前に気分が落ち込む月経前気分障害、更年期障害といった相談が増えています。一般外来では男性のうつ病、お子さんでは不登校と発達障害での受診が中心になっています。また新型コロナウイルス感染症の流行によって、これまで受診するタイプではなかったお子さんも受診することが増えています。精神科は症状の種類や状態もさまざまなので必要な診療時間も違いますから、曜日や時間によって診療内容を分け、なるべく患者さんの待ち時間を減らせるように工夫しています。

人生の一大イベントでもある出産ですが、気をつけたほうが良いポイントはありますか?

周産期にメンタルヘルスを崩しやすい傾向の人がいます。例えば精神科の病気の既往歴があったり、望んだ妊娠ではない場合であったりするケースは要注意。それに家族関係も大切で、何でも相談できるいわゆるサポーターが少ない人ほど孤立化しやすいので、産後うつになりやすく重症化しやすいのです。しかも本人はうつに気づかないことが多く、周囲の人たちが変化に気づくことが重要になります。家事が手につかなくなるなどできていたことができなくなったり、興味が喪失したり、あるいは涙もろくなる、眠れない、食欲がなくなるといった変化を見逃さないこと。女性のうつは繰り返す傾向があるため、自然体で時間の許す限り傾聴することを心がけてください。

お子さんの不登校や発達障害では保護者への教育に力を入れているそうですね。

中並朋晶院長 なかなみメンタルクリニック4

不登校では学校に行けないことで自信をなくしているのか、いじめなど心の傷があるのか、精神疾患がないかなど、医学的な見立てを中心に診療を行います。中でも大切なのはお子さんに対する保護者の対応。保護者からの学校に行きなさいというプレッシャーをいかに取り除くかという点がポイントなので、保護者への心理教育に取り組んでいます。また発達障害については、治療というよりはむしろお子さんの特性に応じた取扱説明書を作ってあげることが大切です。発達障害は人間的に何かが欠如しているのではなく、情報のインプットからアウトプットまでの過程が一般と少し違う少数派にすぎません。ですから保護者も自分の認知機能の基準で対応しようとすればうまくいきません。取扱説明書に基づいて、その生きづらさを理解することがスタートになります。

人は変わろうと思えばなりたい自分に近づける

薬の処方について先生のお考えを教えていただけますか?

中並朋晶院長 なかなみメンタルクリニック5

子どもの精神科に携わってきた医師は、相対的に薬を使わないケースが多く、私も必要な場合に限って処方するというスタンスをとっています。ただしめりはりは重要ですから、ダラダラと意味なく長く使うようなことはしません。薬物依存症の治療にも関わってきた経験から、薬物に対する初期教育の重要性も理解しています。そのためなるべく説明の時間を長く確保するように気をつけています。飲み方を間違えれば効果が望めなかったり、多く飲んでしまったりするようになってしまいますから。特に神経症の場合は抗不安薬に依存するタイプの患者さんがいるので、定期処方をせず、困ったときに飲むという処方をします。薬を増やしてほしいという要望があったとしても安易に増やさず、薬を飲んだ時間帯やシチュエーションを検証し、飲み方をアドバイスしながらなるべく薬を減らせるように促します。

精神科においてはスタッフによるバックアップも欠かせませんね。

医師にしかできないことは多く、診療はある種時間との戦いになります。さまざまな診療科の中でも精神科、心療内科は患者さんの話をたくさん聞かなければなりませんし、患者さん自身が説明に時間を要する場合もあります。そういった点からもスタッフのサポートは必要不可欠です。当クリニックには看護師の他に精神保健福祉士、社会福祉士、臨床心理士のスタッフがいますが、紹介する病院との連携、就労支援、心理的な評価のための心理テスト、ヒアリングなど、さまざまな面でチーム医療を心がけています。

最後に今後の展望を含め読者の皆さんにメッセージをお願いします。

中並朋晶院長 なかなみメンタルクリニック6

スタッフとも話しているのが選択肢のある治療の提供を心がけること。精神科や心療内科だと薬物治療か否かという点にフォーカスが当たりますが、それ以外、例えば食事や睡眠の工夫といったアプローチもできるはずですから。加えてお子さんの場合、保護者の対応で大きく変わるケースが多いので、心理学の勉強会は続けていきたいですね。当クリニックはアドラー心理学や選択理論心理学を取り入れており、これは変えられない過去にこだわらず、現状を受け止め未来を明るく良い方向に変えていこうという考え方です。キーワードは「なりたい自分になれるお手伝い」。人はいつからでも、どんな状態からでも、変わろうと思えばなりたい自分に近づくことができるということをお伝えしていきたいです。

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