谷田 泰孝 院長の独自取材記事
谷田整形外科
(尼崎市/尼崎駅)
最終更新日:2025/09/12

阪神本線尼崎駅から徒歩3分、マンション2階に掲げられた鮮やかなブルーの看板が目を引くのは「谷田整形外科」。淡いミントグリーンを基調とした院内は、開業から16年たったとは思えないほど清潔感にあふれている。谷田泰孝院長は勤務医時代、専門の脊椎外科をはじめ、骨折などの外傷や人工関節など数多くの手術を手がけてきた。同院では首、肩、腰、膝、手足の痛みやしびれなど、身近な疾患に対する治療やリハビリテーションを中心に対応している。主な患者層は「元気な高齢者」と、優しくほほ笑む院長。地域への深い愛情が伝わる取材時間となった。
(取材日2019年2月4日)
医師3年目、救急で重症患者を救ったことが自信に
まず、医師をめざしたきっかけからお聞きします。

小学生の頃は野球ばかりしていて、子どもの頃は多くの友達と同じようにプロ野球選手になりたいと思っていましたが、年齢を重ねるにつれて無理だということがわかってきました(笑)。父が開業医でしたので、医師という職業は幼い頃から身近で、周りの人たちからも何となくそういう感じで見られていましたし、私自身の意識の中にもあったので、結果的にこの道へ進みました。入学した頃は父と同じ内科系に進むことを考えていたのですが、高学年になっていろんな科を回ってみて、外科系に進むという選択肢もあるかなと思うようになりました。大学時代はラグビーをしていたのですが、スポーツに関心があり、ラグビー部の先輩が何人かいることもあって整形外科を選びました。学生の時に父が亡くなったのですが、もし生きていたら、父の後を継ぐということも考えて選択が違っていたかもしれません。
卒業から開業までの経緯を教えてください。
1年間大阪医科大学で研修をしてから大学の関連病院で4年間、多くの臨床経験を積みました。その後大学へ戻ってからは整形外科の中でも脊椎外科を専門とし、椎間板ヘルニアなどの脊椎疾患の治療に携わっていました。8年間大学病院で勤めた後、高槻市の第一東和会病院に整形外科部長として赴任し、そこでは脊椎外科以外にも骨折などの外傷治療や人工関節手術なども数多く手がけました。充実した勤務医生活で当初は開業は特に考えていませんでしたが、将来のことを考えるようになって、大きな病院でずっと手術をし続けるのもいいけど、積み重ねてきた経験を生かして、地域のかかりつけ医として患者さんに寄り添った診療を行っていきたいと思うようになり、開業に踏みきりました。
勤務医時代印象に残っている患者さんはいますか?

一番記憶に残っているのは、まだ医師3年目で救急当直をしていた時に運ばれてきた患者さんです。交通事故による頭部外傷、四肢開放骨折でかなりの重症でした。朝までかかりましたが、全身管理を施しながら開放骨折の処置を行いました。この時のことは今でも覚えています。医師になって間もない時期にこれほどの重症の方を経験し、外傷治療に少し自信が持てるようになりました。また医師の仕事は人の人生に大きく関わることがあるということも認識するようになりました。その方は10年ほどして別の疾患で亡くなられたのですが、奥さまが「あの時はお世話になりました」と来てくださいました。
整形外科からリハビリテーション、外傷治療まで幅広く
こちらの患者層や主訴は?

この辺りは下町情緒にあふれていて、気さくな方々が多い地域だなと感じています。患者さんは、この近くに昔から住んでおられるご年配の方が中心で、肩こりや腰痛、関節痛などの痛みを訴えて来られることがほとんどで、痛みに対する治療やリハビリテーションがメインになります。当院に来られるのは、そういった痛み以外は本当に元気な方が多く、90歳近くになってもしっかりされていて、ジムへ行ったり水泳に行ったり運動を続ける前向きな方もおられ、私が逆に元気で長生きできる秘訣をお聞きすることもあります。駅から近く、学校もあるので、夕方以降は仕事帰りの方や部活を終えた中高生の患者さんが多くなります。近くに新しいマンションも増えているので、今後は若い人や子どもがさらに増えるかもしれませんね。
こちらで行っているリハビリテーションについて教えてください。
マッサージなどを行う男性スタッフと助手の女性スタッフが担当しています。リハビリテーション機器を使った温熱、電気治療やけん引治療などを中心に、肩こりや腰痛の強い方にはマッサージを行ったりもしています。関節の動きが悪くなっている方や筋力が衰えている方への運動訓練も行っています。痛みの原因が仕事を含めた日常生活動作にあることも少なくないので、症状に応じて生活指導を行うことも大切だと考えています。あまりに痛みを怖がりすぎて安静ばかりにならないよう、できる範囲で体を動かすようにということは言っています。些細なきっかけで痛みが出てきた方には、今まできっちり生活できていたので、このつらい時期を乗り越えたらまた以前のように過ごせるようになりますよと、励ましたりしています。
そのほかに、どのような治療をしていますか?

痛みに対する治療として、ブロック注射や関節注射などを行っています。切り傷の縫合や皮膚表在の小さな良性腫瘤の切除手術、やけどや巻き爪の治療も手がけています。すり傷に対しては、今でも消毒をしてガーゼを貼るという処置を行っている所が多いと思うのですが、当院では傷の消毒はせずに水で洗うだけで、ガーゼは使わずにラップなどで傷を覆います。傷から出る浸出液に傷を治すための成分が含まれているので、それを使って治癒をめざすという方法です。消毒をしてガーゼを貼ると浸出液を吸い取ってしまい、傷の治癒を妨げてしまうことになり、またガーゼは傷にくっつくのでガーゼを交換するたびに出血し痛みも伴うことが多いです。当院で行っている処置は痛みが少なく患部への負担も少ないものだといえます。この処置は勤務医時代に講演会で聞き、開業後はずっとこの方法で対応しています。
地域のニーズによって育まれた今の姿が、理想のかたち
診療に際して気をつけていることは?

困っている人の手助けができればいい。シンプルにただそれだけです。今までの経験やそこから得た知識、技術を生かして、患者さんの苦痛を少しでも和らげて、「診てもらってよかった」と思っていただくことです。そのためには、患者さんの話をしっかり聞いて、わかりやすく丁寧に説明することが大切だと思っています。どこかお店へ行って、そこの主人に何か偉そうなことを言われたり、怖い顔をされたら嫌じゃないですか。ましてやここへは、困っていることがあって来られているわけですから、「怖いな、話しにくいな」なんて絶対に思われないように気をつけています。
尼崎市の整形外科の医師の活動にも参加しているそうですね。
奇数月に症例検討会として、各開業医が診断、治療に困った症例などを提示して、どのようにしたら良いのかなどを話し合う場をつくっています。内輪の会なので皆本音で語り合って、こんなことで困っているんだとか、こういう治療手段があるのかとか、日常診療に役立つ情報を得られることが多く、毎回楽しく参加させてもらっています。そこに関西労災病院や兵庫県立尼崎総合医療センターの先生たちも来られていて、専門としている分野のレクチャーをしてもらっています。「ああ、今はこういうふうに変わってきているのか、私たちの頃とだいぶ違うな」と、勉強させてもらい、患者さんを紹介するときの参考にしています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

特に今後の展望というものはありませんが、今の形がこの地域の患者さんのニーズに合っているのかなと感じているので、これからもこのままいけたらなと考えています。地域の方々が治療に来られて、中には顔見知りの人たちとお話をされ、元気に帰っていかれる。これが地域に密着したクリニックなのかなと。できるだけ長く続けていきたいと思っています。メッセージは、痛みや違和感などがあれば、できるだけ早い段階で受診してくださいということですね。例えば膝が腫れて水がたまっているかもしれない場合、誰が言いだしたか、「水を抜くと癖になる」という話を信じて我慢する方がおられます。まずは整形外科を受診してきっちりと診断してもらって適切な治療を受けてください。放っておくと、治るものも治りにくくなり、日常生活に支障を来す可能性もあります。だから、そういうときは早く来ていただきたいですね。