久田 佳明 院長、久田 祥子 さんの独自取材記事
ひさだ眼科
(高浜市/三河高浜駅)
最終更新日:2025/01/31

初期段階では自覚症状が少ないにもかかわらず、放っておくと失明に至るケースもある目の疾患。「重篤な症状に陥る前に、患者さんの目の健康を守りたい」と真摯な思いで診療にあたるのが、三河高浜駅から徒歩5分の場所にある「ひさだ眼科」の久田佳明院長だ。患者思いの真面目なドクターであり、検診から足が遠のいている人々の目の状態を憂慮し、休日も返上して検診の案内をしたためているという。そんな院長の良き理解者で、クリニックの業務全般をこなすのは妻の久田祥子さん。悲喜こもごもを分かち合い、夫婦二人三脚で患者と向き合ってきた。同院にはほかにも熟練の視能訓練士が在籍し、子どもの検査・検診にも注力している。そんな同院の診療の特徴について、久田院長と祥子さんに詳しく話を聞いた。
(取材日2018年7月19日/情報更新日2025年1月10日)
高浜市に眼科医療を根づかせるべく夫婦二人三脚で奮闘
開業までの経緯やご経験を教えていただけますか?

【佳明院長】私は生まれも育ちも高浜市の隣にある刈谷市です。2003年の開業当時は、この近辺に個人の眼科医院が少なく、何かお役に立てればと思い、この地に根を下ろしました。開業前は、愛知医科大学附属病院や長野県の飯田市立病院などに勤務するほか、日本赤十字社和歌山医療センターで3年間みっちり白内障や緑内障の手術に携わっていました。各地の病院に勤務したおかげで、開業のヒントを得ることも多かったですね。実は私は、大学を卒業してから4年ほどは脳神経外科を専門としていたんです。人の生死に直結する脳神経外科の診療は、正直つらい部分もありました。しかし、その経験があったからこそ、患者さんから「よく見える」と喜んでいただける眼科医療に、より一層やりがいを感じて診療にあたることができています。
奥さまもスタッフの一員なのですね。
【祥子さん】はい。開業当初は家事や育児に専念していたのですが、ベテランスタッフが出産を機に退職したため、受付や診療介助のお手伝いをする中でクリニック全般の仕事に携わるようになりました。医師や看護師の資格はありませんが、夫から眼科の知識を教授してもらったり、介助の練習に付き合ってもらったりして力になれるよう頑張っています。医療のプロではない分、患者さんの目線に立って不安や疑問を分かち合えるのが私の強み。日々の診療では、緊張をほぐすような言葉がけをしたり、些細な疑問にもお答えしたりできるよう心がけています。
地域に根づくために工夫されてきたことはありますか?

【佳明院長】気軽に笑顔で受診していただけるよう、院内にリラックスできるようなBGMを流したり、検査後に安全にご帰宅いただけるよう、開いた瞳孔を縮めるための点眼処置を行ったりといったことです。ほかにも、お子さんの近視の進行を遅らせることが期待できる両眼視簡易検査装置による訓練や、洗眼処置も行っています。洗眼は付き添いのご家族にもサービスしていますよ。また、視力検査を受けられた方には、自作の検査結果シートを直接ご本人に手渡ししています。学校検診の用紙を持参されたお子さんには、視力検査のご褒美として面白い柄のスタンプも押していますよ。お子さんの喜ぶ顔が見られたら私自身もほっこりした気持ちになりますからね。ご高齢の患者さんも多いので、対話支援機器を導入し、耳の遠い方との会話に役立てています。ちなみに、コンタクトレンズの空ケースや使用済み切手の寄付に協力するなど小さなSDGsにも取り組んできました。
緑内障や糖尿病網膜症は症状がなくても定期的に検診を
こちらでよく診る疾患や、対応している検査などを教えてください。

【祥子さん】学校検診で受診を勧められたお子さんや、コンタクトレンズの処方を希望される方、白内障や緑内障、糖尿病の方もいらっしゃいます。
【佳明院長】検診や診断には患者さんの負担軽減のため、超広角眼底カメラや光干渉断層計(OCT)などを活用しています。超広角眼底カメラがあれば瞳孔を広げることなく、5分ほどで詳細に目の内部を確認できます。近年は前眼部を撮影するためのレンズも購入し、緑内障の診断に役立てています。新しい機種のOCTも導入し、黄斑部疾患のより詳しい診断と、鮮明な画像撮影が可能になりました。眼底カメラも多くの場合で瞳孔を開かずスピーディーに眼底網膜を撮影でき、造影剤も不要な機種です。眼底に異常が出やすい方の糖尿病網膜症や網膜剥離などの精密な検査に役立ちます。目の構造は複雑ですから、カラー写真の資料やイラストを使い、極力患者さんにわかりやすく伝える工夫をしています。
目の疾患の怖いところは、どんな点でしょうか?
【佳明院長】放っておくと失明の危険性があるにもかかわらず、初期段階では自覚症状が少ない点です。視野が徐々に狭まる緑内障や、糖尿病の合併症として知られる糖尿病網膜症、眼底出血などがその例で、病状がかなり進行してから受診されるケースも珍しくありません。例えば、タクシーの運転手さんが、お仕事も辞めなければいけないほど症状が進行し、がっくり肩を落とされる……というケースもあるようです。緑内障は、点眼薬を差し続けることで進行を食い止めることも期待できます。また、糖尿病の合併症は、血糖値コントロールの指標にもなるので、内科の先生と連携を図って治療にあたらなければいけません。どちらも定期的に検診を受けていただきたい疾患ですね。
検診を受けてもらうために何か工夫されていますか?

【佳明院長】待合室にパンフレットを置いたり、目の疾患に関心を持ってもらえるよう努めています。ジェネリック医薬品も取り入れて医療費の負担を軽くする工夫もしていますが、点眼薬を1回もらってそれきりになる患者さんも多いのが心配ですね。そこで、しばらく来院されていない糖尿病や緑内障の患者さんには、はがきを送って検診を促すなど、私のほうから積極的に目の健康を守るよう働きかけています。
【祥子さん】健康上の理由で検診から足が遠のいているご高齢の方もいらっしゃるので、はがきを出すのは控えようと思ったこともあります。ですが、「はがきのおかげで足を運びやすくなった」との声もあり、これからも続けていきたいですね。
目を守るための「小さな魔法」を信じて
祥子さんには忘れられない言葉があるそうですね。

【祥子さん】白内障手術を受けられた方の「眼科の医師は魔法が使えるんだね」という言葉です。患者さんが、そんなふうに喜びを表現されることにびっくりしました。それだけ、見えるようにするための手術とは特別なことなのだ、と。そして夫も、見えるようになるための「魔法」が使える人なのではと感動し、眼科医療に対する考え方が、がらりと変わりました。手術のように派手な結果は得られないかもしれませんが、すぐには改善しない目の疾患を抱えている患者さんにも、日々の診療で「小さな魔法」が起こっていればうれしいですね。
ご夫婦にとって、お互いはどのような存在ですか?
【佳明院長】妻には本当に頭が上がりません(笑)。患者さんへの配慮ばかりか、私が気持ち良く診療に臨めるよう常に心を砕いてくれています。私が診療中に説明しきれなかった点も、患者さんに補足してくれるので頼りにしています。
【祥子夫人】夫は患者さんのご負担を考慮し、手術に至らず済むようにとレーザー治療に力を入れて取り組んでいます。ピンポイントでレーザーを当てるのは、簡単なように見えてすごく神経を使うのでしょうね。休日には少しでも疲れを取ってほしいところですが、検診の案内のはがきを書いたり、マメに説明用の資料を作ったりと仕事のことが頭にあるようです。こういった真面目さや、少し表現が不器用ながらも患者さん思いのところが夫の持ち味だと思います(笑)。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

【祥子さん】患者さんと接する中で痛感するのは、ある程度の年齢になったら定期的に検診を受ける大切さです。特に職場で検診を受ける機会のない方は、当院を利用して目の健康を守っていただけたら。また最近は、インターネットで病気の情報を手軽に得ることができますが、思い込みは目の状態を正しく理解する妨げになりかねません。診療では、まっさらな気持ちで説明を聞くと良いでしょう。
【佳明院長】内蔵や骨と同じく、目も大切な器官です。お困りのことがあっても、お越しいただかないことにはアドバイスも治療もできません。人生を左右するような大事に至る前に、病気の早期発見、治療、進行防止につなげられたら幸いです。