田中 秀朋 院長の独自取材記事
あかちゃんとこどものクリニック
(川口市/川口元郷駅)
最終更新日:2025/08/12

川口元郷駅から徒歩3分の「あかちゃんとこどものクリニック」。田中秀朋院長は幼少期に病気がちで、かかりつけの小児科医に憧れて医師の道へ進んだという。東京医科歯科大学卒業後、NICUを含む新生児医療に15年間従事し、生まれた時から知っている子どもの成長を地域で見守りたいと川口市で2007年に開業した。新生児医療の経験と専門性を生かしながら、子どもと親を一緒に診る包括的な診療を実践。「笑顔で帰ってもらう」をモットーに、診療だけでなく育児支援にも力を注ぐ。開業から18年、子どもの成長を見守る醍醐味や、常に学び続ける姿勢について聞いた。
(取材日2025年7月9日)
生まれた時から成長を見守る地域の小児科医として
医師をめざしたきっかけと、小児科を選んだ理由を教えてください。

小さい頃から体が弱く喘息発作を度々起こしていて、きょうだいの中で一番病気がちでした。いつも同じ診療所の先生にお世話になっていて、その先生への憧れが医師をめざす大きなきっかけになりました。また、サラリーマンだった祖父が本当は医師になりたかったという話を父から聞き、「孫に医師になってほしい」という祖父の想いにも背中を押されました。小児科を選んだのは、病気で苦しい思いをした経験があるからこそ、自分をいつも診てくれた先生のように苦しむ子どもたちの力になりたいと思ったからです。医学部に進んでからも、その思いは変わることなく、迷わず小児科の道を選びました。
開院までにどのような経験を積まれたのですか?
医師になって3年目からは新生児医療に関わってきました。都立病院を経て川口市立医療センターのNICU立ち上げに参加し、8年間新生児医療を専門に診療を行ってきました。NICU在籍中は家を留守にしがちだったため、ある朝娘に「行ってらっしゃい」ではなく「また来てね」と言われてしまいました。それを機に家族との時間も大切にしたいと考え、その後は川口市内の一般病院で7年間勤務しました。結果的に15年間にわたってこの地域の子どもたちを診てきたので、これからもずっとこの地で子どもたちを診ていきたいと思うようになりました。
開業を決意した理由と、この地域を選んだ理由を教えてください。

勤務医時代に、開業してほしいという患者さんの声が多く、一緒にやりたいというスタッフも集まったので、2007年に独立しました。当院には18年間勤めている3人のベテランスタッフをはじめ、子育て中のスタッフや若いスタッフも在籍しています。ベテランの親御さんから初めての子育てを経験する親御さんまで、さまざまな方々のニーズに応えられる体制を整えております。今では、勤務医時代に診ていた子どもたちが母親になって自分の子どもを連れて来てくれることもあり、家族ぐるみでお付き合いできることが日々の励みになっています。
赤ちゃん診療の専門性と親子を診る包括的医療
診療で大切にしていることや診療方針を教えてください。

患者さんが抱える問題の解決策を見出すことを大切にしています。小児科医は総合診療を行う医師でもあるので、その子を診て何が心配なのか、今の症状だけではなく、患者さん全体、場合によっては家族全体を診ていく必要があります。最近は予防接種の普及や治療法の進歩で、重症の病気は減ってきてはいるものの、一人ひとりに合わせたオーダーメイドの診療が大切だと思っています。問診だけでなく、いつからどうなって症状が出ているのかを詳しく聞き、聴診器での診察も欠かせません。なるべく正解に近づけるよう、子どもからも家族からも話をよく聞いて、子どもを診て、必要な診察をした上で総合的に判断することを心がけています。
「あかちゃんとこどものクリニック」という医院名の由来は?
小さい赤ちゃんにも来てもらいたいという気持ちからです。小児科医によっては赤ちゃんの診察にあまり携わってこられなかった人もいます。小児科の中でもそれぞれ専門分野がありますが、私の場合はそれが赤ちゃんでした。「赤ちゃんのことなら任せてください」という気持ちで、この名前にしました。赤ちゃんのことはかなり多く見てきたと自負しています。病気だけでなく、成長や発達、食生活に至るまで、総合的な視点で診療しています。また、赤ちゃんにはあまり薬を使用しないほうがいいと思われがちですが、赤ちゃんには予備力がないからこそ、適切なタイミングで薬を使わないとさらに悪化して入院になってしまうこともあります。そういった見極めについても、これまでの経験から判断することができるので、何かあればぜひ頼っていただきたいです。
「子どもと一緒に親も見る」のが大切なんですね。

親御さんの様子を見るということも小児科医にとって重要なことです。例えばお子さんについて取り組んでほしいことを伝えるにしても、普段からお子さんと一緒にいて変化に気がつきやすい親御さんと、仕事をされていて日中はあまり一緒にいられない親御さんの場合では、同じように対処できるとは限りません。また、明らかに不安そうな顔の人にあれもこれも一気に伝えてしまっては余計に不安にさせてしまうこともあります。ですから、親御さんの様子も一緒に見て、どう伝えどう進めていくのがいいかを一人ひとり考えることが必要です。また、時にはホームケアについての話も大切。スタッフも「おうちでできることはこういうことだよ」と丁寧に説明してくれます。何かわからないとか不安だなって顔を親がしていると、子どもも不安になってしまいます。だからこそ親御さんの不安も取り除いて、親御さんも子どもたちも一緒に笑顔で帰ってもらうことを心がけています。
チーム医療で地域の育児も支える小児科をめざして
スタッフとの関係性やチーム医療について教えてください。

毎日朝礼で情報共有し、患者さんの情報をスタッフが教えてくれることもあります。診療中に私の言い方が良くないと感じた場合は「先生、もっとこういう言い方がいいと思います」と率直に言ってくれるので、ありがたいですね。スタッフとは風通し良く話をしやすい雰囲気を作っています。また、みんなで患者さんに感謝しながら仕事をすることも大切にしています。みんなの力で患者さんが集まってくれる。ワンフォーオール、オールフォーワンの精神を、18年前の立ち上げた時から大切に診療しています。
診療以外にもさまざまな活動をされているそうですね。
彩の国予防接種推進協議会のコアメンバーとしても活動しており、予防接種の普及啓発に努めています。以前は定期接種でなかった水痘やB型肝炎なども、全国の患者さんや医師など皆が働きかけて定期化につながりました。日本外来小児科学会の理事を務めることで、全国の素晴らしい取り組みをしている先生たちとの交流もあります。医療の世界は5年、10年で様変わりするので、クリニックに閉じこもっているとすぐに時代遅れになってしまいます。治療方針でも、昔は正しかったことが今は違うということもたくさんあります。最善の治療をするためには、常に学び続けることが大切です。また、学校医として小学校や幼稚園、保育園も担当し、川口助産師会の離乳食講座でも講師を務めるなど、地域での活動も行っております。子どもたちの健康や親御さんの安心につながるようにさまざまなことに取り組んでいきたいです。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

赤ちゃんから成長する過程を見ていて、病気だけでなく育児の中での困り事があった時、栄養や成長、発達のことも含めて相談できる存在でありたいと思っています。0歳、1歳の小さい子どもさんのことで「これって医師に聞いてもいいのかな」と思うようなことでも、ぜひご相談ください。不安な気持ちで育児をするより、笑顔で楽しく子育てできるようサポートしていきたいと考えています。子どもの周りには笑顔があるべきで、親が安心して育てられる環境づくりも大切。最近は育児休暇を取るお父さんも増えて、父親も積極的に子育てする時代になりました。診療だけでなく育児にも貢献できる地域の医師として、これからも子どもたちの成長を見守っていきたいと思います。