橋野 かの子 院長の独自取材記事
橋野こどもクリニック
(佐賀市/佐賀駅)
最終更新日:2026/05/21
佐賀駅から車で約10分、宅地と田んぼが入り混じるのどかな一角に「橋野こどもクリニック」はある。院長の橋野かの子先生は久留米大学卒業後、聖マリア病院をはじめとする複数の基幹病院で研鑽を積み、2003年に同院を開業した。1階に診察室や隔離室、2階には小児科併設型の病児・病後児保育室を設置。子どもが本来持つ治ろうとする力を大切にしながら、漢方も取り入れた個別の治療を提供している。キャラクターのついた白衣姿で、子どもたちに親しみを持ってもらう工夫も欠かさない。「小さなことでもいいので、心配事があったら何でも聞きに来てほしいです」と快活な笑顔で語る橋野院長に、診療への思いや病児保育の特徴、子育て支援の取り組みについて聞いた。
(取材日2026年4月16日)
父が守り続けた場所で子どもたちの笑顔を守る
まずは、こちらに小児科を開業された経緯をお聞かせください。

私は幼少期にこの土地に移り住み、外科の開業医だった父のもと育ちました。父は医療家系の出身ではありませんでしたが、外科医師の仕事を心から愛していました。常に枕元に電話を置き、24時間体制で患者さんを受け入れ、依頼があれば遠方まで往診に出かけていました。休みなく地域の方々と向き合い続けるその背中を見て育ったことが、私が医師を志した原点です。専門を決める際は循環器内科と迷いましたが、子どもの心臓病に強い関心があったこと、そして内科だけでなく耳、鼻、眼、皮膚など幅広い疾患を一つの診療科で診られる点に惹かれ小児科の道を選びました。弟が父の外科医院を継ぎ、2003年に私はその向かいに当院を開設いたしました。
勤務医時代にはどのようなご経験を積まれたのでしょうか。
久留米大学を卒業後、大学では小児循環器を専攻していました。子どもの心臓病を中心に診療し、心臓カテーテル治療にも携わってまいりました。その後、聖マリア病院、大牟田市立病院、飯塚病院、佐賀社会保険病院(現・佐賀中部病院)といった地域の基幹病院に勤務し、幅広い疾患の臨床経験を積むことができました。久留米大学の小児科には「患者さんを断らない」という文化が根づいています。多くの専門グループがあり、まずは何でも診るそして時間の許す限り受け入れる姿勢を学んだことは、現在の私の診療における大きな土台となっています。 現在も小児循環器の経験を生かし、県の学校心臓検診において、小学生から高校生まで大学病院の先生方と一緒に携わらせていただいています。
クリニックの設備面で工夫された点を教えてください。

昔は田んぼが広がるのどかな地域でした。近年は住宅が増え、お子さん連れのご家族も多く住まれるようになりました。新しい家族も、昔からお住まいの方も、誰もが安心して通っていただけるよう、院内の環境づくりには開業当初から細心の注意を払っています。当院は1階が診療スペース、2階が病児・病後児保育室の構成です。小児科は感染症の患者さんが多いため、メインの診察室のほかに隔離室や点滴室を合わせて4室設けています。嘔吐・下痢のあるお子さんとインフルエンザのお子さんが同時に点滴を受ける場合、同じ部屋にいると院内感染のリスクを完全には避けられません。疾患の種類やご家族ごとに部屋を分け、動線もなるべく交わらないよう設計しました。
子どもの「治る力」を信じ、最善を探る
日々の診療で大切にされていることを教えてください。

私は小児科を「子どもの総合診療科」であると考えています。風邪などの一般的な症状はもちろん、皮膚や耳、眼のことまで、全身を幅広く診ることを大切にしています。専門的な検査や治療が必要な場合は適切な医療機関を紹介しますが、まずは当院で幅広く受け止める、という姿勢を常に持っています。発育・発達の相談、夜尿症(おねしょ)、食物アレルギーや花粉症、喘息などのアレルギー、湿疹やスキンケアの指導など気軽に相談していただきたいですね。治療では、本来持っている「治ろうとする力」を最大限に引き出すことを重視しています。ガイドラインに沿った対応を基本としながら、不要な抗生剤は処方せず、症例によっては漢方薬も選択肢に加えるなど、一人ひとりに最適な治療を心がけています。
保護者とのコミュニケーションで心がけていることは?
保護者の方の「心配や不安」を受け止めることを大切にしています。初めてのお子さんの場合、不安を抱えて来院されることも少なくありませんが、些細なことでも聞いていただきたいと考えています。「聞いて良かった」「受診して安心した」と思って帰っていただけることが、私たちの願いです。体調不良で受診された際は、病状や診断の説明はもちろん、ご家庭で注意していただくポイントをお伝えし、小さいお子さんには体温以外にも顔色、呼吸、ミルクの飲み方、泣き声など、観察のポイントをお話しします。今後どのような経過になりそうか、緊急で受診すべき目安についてもご説明いたします。 診察の最後には「ほかに聞いておきたいことはありませんか?」とお声がけし、病気のことだけでなく、子育てのお悩みも相談しやすい環境作りを心がけています。
お子さんの予防接種ではどのような工夫をされていますか?

予防接種のご予約はインターネットから承っております。 当日は、お子さんも保護者の方も緊張されると思いますので、皆さんがリラックスして過ごせるよう常に心がけています。 特に不安が強いお子さんには、接種の前にお声がけをし、スタッフ一丸となって不安を和らげるようサポートいたします。無事に終わった後は、お子さんをご両親とスタッフで思いきり褒めてあげたいと考えています。その時に「思ったより痛くなかった!」といった言葉が、私たちも本当にうれしいものです。接種後は、次に受けるワクチンの内容や時期についてご案内します。年長のお子さんには「なぜこの注射が必要なのか」についても、わかりやすく説明するようにしています。
温かなチームと病児保育で、地域の子育てを支える
スタッフの皆さんについてもお聞かせいただけますか。

当院の看護師は子育て経験が豊富で、子育てを終えたベテランから現在進行形で奮闘中のスタッフまで幅広く在籍しています。スタッフ全員子どもが好きですので、安心してお子さんの対応をお任せください。また保育士も常駐しており、2階の病児保育室にお子さんが少ない時間帯の時には外来へのサポートも来てくれます。待合室でお子さんの相手をしたり、保護者の方の子育ての相談に乗るほか、保育園のことや遊び方などさまざまな質問にも丁寧にお答えしています。スタッフとは定期的に話し合いを行い、最新情報の共有を欠かしません。保護者の方が困っていそうだと感じたら自然に声をかけてくれる、そんな気配りのできるチームですので、私自身とても頼りにしています。
病児・病後児保育室についても教えてください。
当院の病児・病後児保育室は小児科と一体となった「医療機関併設型」の施設です。お預かり中にお子さんの呼吸が苦しくなったり、体調が急変した場合でも、すぐに対応できるのが最大の強みです。保育室内で吸入や鼻汁吸引といった、医療処置が行えるのも併設型ならではの特徴です。病児保育ではお熱がある段階からお預かりが可能です。佐賀は共働きのご家族が多い地域ですので、お子さんが体調を崩した際、専門的なケアを受けながら安心して預けられる場所があることは、保護者の方には大きな支えになるのではないでしょうか。私たちは、病気のお子さんを抱えながら働くことの大変さをよく知っています。病児保育室は、そんな保護者の皆様の力になりたいという想いから開設いたしました。スタッフが密に連携し、一人ひとりに目を配りながら、その子に合った最適な環境を整えています。
最後に、子育て中の読者に向けてメッセージをお願いします。

現在、学校医の他14ヵ所の保育園や幼稚園の園医も務めています。クリニック以外での様子、学校や園などで元気な姿を見ることができるのは、私の喜びであり、楽しみでもあります。診察室では見せないような笑顔で話しかけてくれたり、成長した姿を見ることができるのは、日々の診療の励みにもなっています。以前通院していたお子さんが成人して、今度はご自身のお子さんを連れてきてくださることがあります。そんな瞬間は、この仕事を続けてきて本当に良かったと心から実感します。保護者の方には、子育てを楽しんでいただけるようお手伝いができればと考えておりますので、皆さんと一緒にお子さんの成長を見守っていけるよう、心配・不安なことがあればいつでも気軽にご相談ください。

