池田 和茂 院長の独自取材記事
いけだこどもクリニック
(堺市北区/北花田駅)
最終更新日:2024/12/13

北花田駅から徒歩約3分、複数のクリニックが集まる医療モールの1階にある「いけだこどもクリニック」。院長の池田和茂先生は、小児科の医師として血液悪性腫瘍の治療や新生児医療の現場で知識とスキルを積み重ねてきた、小児科一筋のプロフェッショナルだ。命を守るための現場で専門性の求められる医療に携わってきた経験を生かし、「これからは地域の一員として、子どもたちの成長を支えたい」と2006年に同院を開業。クリニックの院長として診療を行うのはもちろん、堺市医師会では災害救急など関する取り組みなど、多角的な視点から地域医療の発展に力を尽くす。多忙な日々を送りながらも、さらに地域のためにできることを模索し続ける池田院長に、診療の特徴や小児科医療への思いを聞いた。
(取材日2024年11月14日)
家族に寄り添い、子どもの成長を支える街のクリニック
なぜ、小児科を専門に選ばれたのですか?

大学生の時、友人に誘われて子どもたちと旅行したり遊んだりするボランティアに参加したことが最初のきっかけでした。それまでは子どもに対して特に関心もなかったのですが、一緒に過ごしてみると本当に楽しくて。面倒を見るのは大変で気苦労もありましたけど、その中で学ぶことが本当に多く、楽しさと同時に充足感を感じましたね。そこから子どもの成長や発育について学ぶようになり、ますます興味が拡大したんです。将来医師になるなら、子どもたちの健康を支え医療の面から成長をサポートしていきたいと考え、小児科の道を選びました。
ご経歴と、開業するまでの経緯を教えてください。
医学部卒業後は大学病院に勤務し、小児科の中でも血液悪性腫瘍の治療を専任しました。その後、済生会兵庫県病院にて新生児医療部門の立ち上げに関わり、早産・低出生体重児や新生児仮死、先天性疾患など、新生児期に発症するさまざまな疾患の診療に携わりました。どちらも、命を守るための最前線といえる非常に難しい現場で、当時まだまだ少なかった小児の骨髄移植をはじめとする専門的な医療を学ぶなど医師として貴重な経験を積むことができたと思います。しかし、長年勤めていくうちに管理者として若手を指導する役割を担うようになり、まだまだ診療に携わっていきたかった私は開業を決意。生まれ育った地域で地域医療に貢献していくため、自らのクリニックを開院しました。
開業にあたり、どんなクリニックをめざされたのでしょうか?

「ここに来れば何でも相談できる」と、地域の皆さんに安心して頼ってもらえるようなクリニックです。医院の理念として「21世紀を担う大切な子どもたちのかかりつけ医」を掲げているのも、子育てにおいて少しでも力になれたらと考えたからですし、少子化が加速する中でその思いは年々強くなっていますね。その理念を実現するために、当院では地域のニーズに合わせて日曜診療にしたり、スムーズに診療できるようウェブ予約や電子カルテを導入したりするなど、さまざまな工夫を実施。また、院内は親しみやすい雰囲気づくりにこだわり、プレールームの設置や人気キャラクターのユニフォームへの採用するなど、少しでも親御さんや子どもたちにリラックスしていただける環境を整えています。また、すべてをバリアフリーにしてベビーカーのままで移動できるなど、誰もが安心して通えるクリニックをめざしています。
治療・予防の両面から健康を守り、低身長治療にも対応
こちらではどのような診療を受けられますか?

診療に関しては、子どもさんの病気であれば何でも診るというのが当院のスタンスです。発熱、腹痛、咳といった症状をはじめ、風邪やインフルエンザなどの感染症、アレルギー疾患など幅広い主訴に対応し、より専門的な治療が必要な場合は適切な医療機関へとつなげます。それと同時にさまざまな種類の予防接種も実施しており、治療と予防の両面から子ども健康を守ります。また、当院ならではの特徴としては、低身長の検査・治療を行っていること。低身長の原因はほとんどの場合持って生まれた体質ですが、ごく一部に成長ホルモンの不足や甲状腺機能低下、骨の先天性疾患など病気が潜んでいます。通常2泊3日ほどの入院が必要な負荷試験を外来で行い、できるだけ多くの患者さんに対応しています。まだまだ治療が可能な医院が限られている分野ですので、遠方からも多くの患者さんが来られていますね。
診療において診療上、大切にしていることはありますか?
安心かつ信頼されるクリニックであるために、まずは何でも相談できる関係づくりを心がけています。診療で大切にしているのは、親御さんの不安や疑問にしっかりと寄り添うこと。例えば風邪の症状で受診された場合でも、診察の終わりにぽろっと出てくる別の質問に、実は本当に聞きたかった心配事が隠されている場合があり、そこで意外な病気が見つかることも少なくありません。ですから、そうした親御さんたちとの何げないコミュニケーションもおろそかにせず、時間が押していたとしてもできるだけ丁寧な対話を重視しています。クリニックとして今、何を求められているのかを常に考え、実践するよう心がけています。
新型コロナウイルス感染症の流行に際しては、発熱の外来にも早期に取り組まれたとお聞きしました。

そうですね。新型コロナウイルスの感染が子どもの間で拡大した状況から、当院でもすぐに発熱の外来を開始しました。しかし、当初は未曾有の事態に患者さんもスタッフも不安を抱え、慣れない体制でスムーズな診療ができずご迷惑をおかけしてしまったこともありました。現在は、感染症対策のために時間と空間を分離し、すべての患者さんに安心していただける診療体制を追求しています。まだまだ改善点はありますが、患者さんのご指摘やご要望にも耳を傾けながらより良い診療環境をつくりあげているところです。発熱の多い子どもだからこそ症状を見極めるために最初の問診は重要ですが、一律な動きではなく状況に応じた適切な対応ができるよう、スタッフともしっかりと意志共有を図っていきたいですね。
地域に飛び出し幅広い活動を通して子どもの未来を守る
診療以外で、力を入れている取り組みについて教えてください。

数年前から堺市医師会の活動にも取り組んでおり、現在は災害救急と看護学校業務を担当。そのほか、小学校の学校医やこども園の嘱託医を務めるなど、クリニックを飛び出して幅広い分野での医療活動に力を入れています。当院が開院した2006年頃の日本の年間出生数は100万人を超えていましたが、2024年は約68.9万人と予想され、70万人を割る可能性が大きいといわれています。子どもの数が減れば親御さん同士のネットワークも減少し、ますます子育てが難しい環境に。そうした状況をサポートするためにも、クリニックという枠にとどまらず、どんどん外に出て地域全体に関わっていきたいと考えています。
今後、新たに挑戦したいことはありますか?
今、やりたいと考えているのは、小児の訪問看護です。要介護の高齢者に比べるとその数は少ないかもしれませんが、低出生体重児で何かしらの病気を抱えたまま医療的ケアを必要とする子どもが地域にも存在します。そうした子どもたちが抱える病状は、勤務医時代に培ってきた新生児医療の知識と経験を大いに生かせる分野。なかなか通院ができなくて困っているご家庭にこちらから出向くことで、少しでも助けになればうれしいですね。そしてもう一つ、今後学んでいきたいのが発達障害に関する分野です。いわゆる「グレーゾーン」と呼ばれる子どもが増えている中、適切に診断することはもちろん、そこからの生活指導が非常に重要です。地域の心理カウンセラーとの交流を深めるなどして、連携を図っていくことも考えていきたいです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

これまでお話ししたように、地域の子どもたちのかかりつけ医、何でも相談できるクリニックになるのが当院の目標です。どんな小さな不調でも気軽に受診していただきたいですし、積極的な予防接種を通して、地域から子どもの病気をなくしていくことも当院がめざす大きな目標です。親御さんには子どもの病気や健康づくりに関することはもちろん、子育てや子どもの成長で不安に感じることでも、いつでも相談に来ていただきたいですね。そして、この地域が安心して子育てができる街に発展していけば本当にうれしいです。そのためにも、ご家族にしっかりと寄り添いながら地域の子どもたちの成長を見守っていけるよう、これからもさまざまなことに挑戦していきたいと思っています。