木暮 大嗣 院長の独自取材記事
木暮クリニック
(杉並区/上北沢駅)
最終更新日:2025/01/09

上北沢駅前の商店街の一角にある「木暮クリニック」。受付開始と同時に近隣から患者が訪れ、あっという間に待合室がいっぱいになるような地域に根差したクリニックだ。「忙しいけれど毎日が出会いですので、一人ひとりをしっかり診るだけです」と話す院長の木暮大嗣先生。かかりつけ医として内科を中心に診療しながら、高齢者の診療の専門家として大学病院での診察も行っている。子どもから大人まで地域の人たちの健康を守りながら、高齢者が安心して年を重ねるための医療にも力を注ぐ木暮院長に話を聞いた。
(取材日2010年4月16日/情報更新日2024年12月6日)
高齢者の診療を専門として、幅広い世代を診療
先生の専門分野である高齢者の診療とはどのようなものでしょうか。

もともと私は東京医科大学出身で、同大学病院の高齢者の診療を専門に扱う部門でご高齢の方のさまざまな病気を診てきました。大学病院というのは細分化され、患者さんはおなかが痛ければ消化器内科へ、血圧が高ければ循環器内科へ、というふうに1日に2科も3科も回らなければなりません。年齢を重ねてくるとそれはとても大変なことですし、さまざまな診療科の観点から複合的に診ることが必要になってきます。「病気を診る」のでなはく、「人として診る」ことで疾患が捉えられるのです。その中でも、私は消化器と動脈硬化、認知症を研究テーマとしていました。高齢者の診療を専門とする部門のある大学病院は都内でもあまり多くはありません。現在も当院での診療のほかに、日本老年医学会老年病専門医として同大学病院で外来診療を行っています。
なぜ高齢者の診療を学ぼうと思われたのですか?
きっかけは祖母が病気になってしまったことです。その時に高齢者の病気にはメンタル面が強く影響していると感じ、ただ治すだけの治療では足りないと気づきました。話を聞くことがとても大事で、以前までは近所のお医者さんのところにお年寄りが「先生の顔を見たい」と言ってよく集まっていたものです。それとまったく同じとまではいかなくても、ご近所で1人暮らしをしている方が顔を見せに来られるような場所が必要なのではないかと考え、少しでも高齢者の力になりたいと大学病院で学びを深めました。
クリニックの診療内容や特徴について教えてください。

町のかかりつけとして、あらゆる年齢層の方を対象に内科を中心とした診療をしています。自律神経の悩みやアレルギー疾患、喘息などの相談にも乗っているので、気軽にお越しいただければと思います。また、大学病院でも診療をしており、ご高齢の方の心筋梗塞や脳梗塞など重度の病状も診ていました。そういう方に健康状態を尋ねると、自分では健康だと思っていたけれど、コレステロール値が高かったとか、糖尿病の治療をしていたというように、以前から何かしらのサインがあったケースが多いです。これは、壮年期の生活から老年期の病気に影響するので、早期発見・早期治療が何より大切だと考えています。当院では内科全般の診断・治療を行う中で予防医療に力を入れており、CT検査やMRIは他の医療機関に委託しますが、睡眠時無呼吸症候群の検査や動脈硬化検査などの検査環境を整えています。
患者と1対1で向き合う診療が病の早期発見につながる
病気を早期発見するために取り組んでいることはありますか?

当院には、長い期間勤務している看護師が4人ほど在籍しています。それによって、看護師は私が診療する前に患者さんの話をしっかりと聞くことができます。スタッフは皆優秀ですので、非常に丁寧に質問して患者さんの話を引き出してくれて、かなり的確だと感じてます。例えば、患者さんご本人が風邪だと思ってクリニックを受診した場合でも、こちらが質問しなければすべての症状をご自身から説明するのは難しいものです。他に治療中の病気はないか、気になっていることはないかなど、かなり細かく質問をして情報を引き出すことで、本当の病態を知ることができると考えています。ただ「大丈夫だと思いますよ」と言うのではなくて、疑わしかったらまず「検査しましょう」と、すぐに対応できるのが当院の強みですね。
病院との連携体制も取られているのですね。
検査で病気が見つかったときは基本的に当院で対応しますが、中には難しいケースもあります。そうした際、設備の整った病院をすぐに紹介できる体制を整えていることも強みの一つだと思います。私自身は東京医科大学病院に現在も籍を置いているので、連携を図ることができます。また、講演会なども行っていましたので、各分野の専門家とのつながりもあります。こうしたつながりを大切に、患者さんの病状に適した病院を本人と相談して紹介することが可能なのです。
木暮先生の専門である認知症についても教えてください。

認知症には、患者さん一人ひとりに家族構成や生活背景があるので、一概にこうといった治療法がありません。一方で、ご家族は認知症患者さんに対してどのように対応して良いかわからないといった悩みがつきものです。何か不安なことがあればどんな些細なことでも気軽に相談してほしいですし、専門家のアドバイスが一つの指針になるのではないかと思います。予防の一環としては、日を浴びたり、積極的にコミュニケーションを取ったりすることが大切です。特に、ご家族であれば普段から積極的に話しかけて、どこかに連れて行ってあげてほしいと思いますね。すぐに怒らないことを意識してほしいとは思いますが、介護者もストレスをためないようにすることが大切です。他には、普段の日常生活の中で目標を持たせることもいいでしょう。とにかく、いっぱいコミュニケーションを取っていくことが、認知症の予防につながります。
体の不調を我慢せず、自分の体をいたわってほしい
先生はこの地域のご出身だそうですね。子どもの頃から医師になろうと思っていたのでしょうか?

ええ。上北沢は私の地元です。昔は空き地や公園、広場がたくさんあり、子ども時代は鼻水をたらしながら近所を走り回って遊んでばかりいましたね。それでも、幼い頃から医者になろうとは思っていたようです。小学校の文集に「将来の夢は医者になること」「お父さんのような放射線科の医者になる」と書いてありました。ただ、実際に大学に進んでみて、放射線科は直接患者さんを診るわけではないので、患者さんとコミュニケーションを図る機会が少ないと考えるようになり、私は患者さんをより近くで診られるようにと、内科を選びました。
先生が診療で大切にしていることは何でしょうか。
気を抜かないことです。混雑していると焦る気持ちからつい急いでしまうもの。ですが、それは患者さんにも伝わるので、「忙しそうだから胸の音を聞かなくてもいい」とおっしゃる方がいます。患者さんも遠慮してしまうわけです。でも、聞きそびれたことで肺炎を見逃す可能性もあります。だから私は、どんなに混んでいても気になることがあれば検査をしますし、患者さんにも「少し待つけれど、エックス線写真を撮りましょう」と言うようにしているんです。油断せず、おかしいと思うことに対して手を抜かない、これが大切です。そして、診療では患者さんの話をよく聞き、必ず触診すること、その上で必要な検査を行うという基本を徹底しています。100人来ても、1対100ではなく、患者さんにとっては1対1。そう思って、充実感を持って仕事に向き合えることが私の原動力になっています。
読者へのメッセージをお願いします。

皆さんには「ご自分の体をいたわってください」とお伝えしたい一方で、内科医として伝えたいことは「健康診断を受けてください」という一言に尽きます。何か気になることがあったら、まずは近所のクリニックを受診してほしいですし、逆に医師に相談しなかったことで、病気を悪化させてしまうケースがよくあるからです。若いうちからの生活が今後の病気に影響してくるので、将来的に病気にならないよう「何かあったら相談する」といった健康意識を高めていけたらと思います。また、近年はネット社会がゆえに、インターネットやテレビの情報に関して自分にとって良い情報のみを捉えがちになってしまう傾向があります。その反面、「ネットではこう書いてあったけど本当に正しいのか?」と不安を感じる方も多いと思います。医師に相談することで正確な判断がつけば不安解消になると思いますので、まずは一度受診していただければと思います。