全身の健康や生活に悪影響を与える
子どもの肥満・睡眠時無呼吸
安原こどもクリニック
(寝屋川市/香里園駅)
最終更新日:2025/12/15
- 保険診療
子どもの場合、肥満と病気とは結びつきにくい。大きないびきをかいていたり、昼間眠そうにしていたりする場合も、それが睡眠時無呼吸症候群の影響だとはイメージできない。しかし、肥満や睡眠時無呼吸症候群は、心身の健康に悪影響を及ぼし、勉強や部活動などのパフォーマンスにも影響する。だからこそ、できるだけ早く相談してほしいと「安原こどもクリニック」の安原昭博院長は早期受診の重要性を訴える。同院では内分泌に特化した外来を設け、子どもの肥満に前向きに取り組むとともに、肥満に起因することが多い睡眠時無呼吸症候群などの治療にも注力している。安原院長に、子どもの肥満や睡眠時無呼吸症候群の原因やリスク、治療の進め方などについて解説してもらった。
(取材日2025年11月27日)
目次
原因や他疾患との関係を踏まえた上で、より適切な治療の提供をめざす
- Q内分泌に特化した外来ではどのような疾患を診ていますか?
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A
▲甲状腺機能障害や糖尿病など、幅広い疾患の診療に対応している
低身長、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)、後天性のバセドウ病など甲状腺の機能障害、糖尿病、思春期早発症、肥満などを診療しています。肥満を除くと、低身長は成長ホルモン、甲状腺の機能障害は甲状腺ホルモン、糖尿病はホルモンの一種のインスリン、思春期早発症は性ホルモンと、いずれもホルモンバランスの崩れから引き起こされる疾患です。肥満については生活習慣が要因となっているケースが多いのですが、肥満から糖尿病を発症したり、その逆もあったりして、糖尿病と密接に関わってきます。近年は10代後半を中心に2型糖尿病の人が増えていて、大人の場合と同様に、疲れやすいなどの症状が現れて日常生活にも支障を来します。
- Q子どもの肥満について教えてください。
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A
▲肥満は生活習慣だけでなくさまざまな要因が考えられると話す院長
肥満の原因は、大人と同様に食べすぎや運動不足といった生活習慣ですが、糖尿病の影響、さらに遺伝的な要因も否定できません。同じものを同じだけ食べていても、太りやすい人とそうでない人がいるように、体質が関わっているケースもあります。肥満の判定は大人と同様です。BMI(ボディーマスインデックス)の数値、皮下脂肪の厚さ、腹囲などをもとに判断し、血液検査を行って肝臓の機能をチェックすることもあります。一方で、自閉症、ADHD(注意欠如・多動性障害)といった発達障害が、食べすぎを招いて肥満の原因になっているケースがあることも、知っておいていただきたいですね。
- Q子どもの肥満にはどのようなリスクがありますか?
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A
▲放置すると生活習慣病などの疾患につながる可能性も
子どもの肥満も大人と同様に放置するのは危険です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病につながってしまい、中には脂肪肝になっているお子さんもいます。さらに、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクもあり、イビキが大きい、いつも眠そうにしている、イライラしがちで不機嫌なことが多いといった場合は要注意です。肥満を改善するためには、早寝早起きの規則正しい生活に加えて、運動が不可欠です。しかし、肥満のお子さんはそもそも運動が苦手なことが多く、生活指導に苦労します。人の目を気にするため、外出がおっくうになったり、自信が持てずに自己肯定感の低下につながったりするケースも少なくありません。
- Q肥満の治療はどのような流れですか?
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A
▲精密な検査を行い、一人ひとりに適した治療を提供している
初回に行うのは、身体計測とコレステロールや中性脂肪、血糖値、甲状腺機能を調べるための血液検査です。お子さんによっては、より長期間の血糖値の変動を見るHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)を調べることもあります。こうした検査により、何らかの治療が必要な肥満と診断されたお子さんには、生活習慣改善のための指導を開始して、1〜3ヵ月おきに通院してもらいながら、まずは体重マイナス5kgをめざします。5kg減量できれば、肝機能などが正常に戻ることが見込めるからです。近年、大人の肥満症治療には薬が用いられますが、子どもの場合、薬は使用しません。
- Q睡眠時無呼吸症候群の治療についても教えてください。
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A
▲睡眠時無呼吸症候群の治療にも注力をしている同院
当院の場合、12歳くらいから上を診療の対象としており、多いのは高校生以上です。中には、別の疾患で受診されて、睡眠時無呼吸症候群が見つかるケースもあります。受診されたらまずは問診を行います。大きなイビキや昼間の強い眠気、いつも機嫌が悪いといった特有の症状が見られないか確認し、必要と判断した場合は検査をお願いするのが基本的な流れです。検査機器を貸し出して、1〜2晩、就寝時に装着してもらい、収集したデータをもとに判定します。治療法は鼻から空気を送り込むCPAP(シーパップ)を使用するのが一般的です。ただし、CPAPを装着できない子もいるため、肥満が関係している場合は減量に重点を置いた指導を行います。

