大塚 康久 院長の独自取材記事
塩谷ペインクリニック
(品川区/目黒駅)
最終更新日:2025/12/12
目黒駅から徒歩約1分。ビルの2階に上がると「塩谷ペインクリニック」の受付がある。出迎えてくれたのは、穏やかな笑顔が印象的な大塚康久院長。ここは、痛みに悩む患者に対し専門的に向き合うクリニックだ。治療のメインとなるのは痛みを感じにくくさせるための神経ブロック注射。脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、三叉神経痛などが対象となる。ほとんどの患者には初診時から神経ブロック注射を打ち、なるべく早く痛みから解放することを図るのが特徴。一方で、「痛みと心は密接な関係性にあるため、患者さんの話をよく聞くことが大切です」と話す。そんな大塚院長に、主に神経ブロック注射に関することや診療内容について話を聞いた。
(取材日2025年10月15日)
痛みの軽減を図り、改善を促すクリニック
最初に、クリニックの成り立ちを教えてください。

ペインクリニックの分野では日本随一といわれているNTT東日本関東病院に長らく勤めていた塩谷正弘先生が、2004年に開院されたのが当院の始まりです。私はNTT東日本関東病院でペインクリニックについて学んだ際に塩谷先生と出会い、それが縁となり2006年に入職しました。当院の医師である小杉志都子先生もNTT東日本関東病院で塩谷先生に師事しており、2004年から勤めています。その後、2017年に塩谷先生が急逝され、私と小杉先生の2人で塩谷先生の技術や教えを引き継ぎ、今に至ります。開院の目的は「街中でも少ない待ち時間で高度な診療を提供したい」ということでしたので、その想いを大切にしています。
神経ブロック注射とはどのようなものですか?
神経ブロック注射といっても、多くの種類があります。痛みを取り除いたり、血流を良くしたり、神経自体を麻痺させたり、治療の目的もさまざまです。よって一言で説明するのは難しいのですが、一般的には痛みのある部位や痛みの原因となっている神経の近くに局所麻酔薬を注射して、痛みの軽減を図る治療とされています。当院では、脊髄神経を包む硬膜の外側に局所麻酔薬を注入する「硬膜外ブロック注射」と、痛みを起こしている神経に直接針を接触させて痛みをやわらげるための「神経根ブロック注射」が最も多いです。他に首にある交感神経に局所麻酔薬を注入して交感神経の緊張をほぐすための「星状神経節ブロック注射」や、三叉神経痛への治療になる「三叉神経ブロック注射」などがあります。「三叉神経ブロック注射」は顔への注射になるため難易度が高く、対応できる医療機関も少ないのが現状です。当院では、遠方からの患者さんも少なくありません。
痛みの一時的な緩和を図るだけでなく、治療も見込めるのでしょうか?

神経ブロック注射でよく誤解されるところですね。例えば脊柱管狭窄症の場合、神経が狭いところを通っていて、その狭さゆえに神経が当たって下肢などに痛みを感じます。狭いところには内服薬や点滴が届きにくいのに対して、神経ブロック注射で炎症にアプローチすることで痛みの悪循環を断ち切ることが期待できるため、それだけで改善が見込めます。また帯状疱疹後神経痛は、神経の根元にいたウイルスが広がって長期間にわたって痛みが残る疾患です。痛みによって交感神経が緊張して血管を締めるため血圧が上がるのですが、注射により交感神経をブロックすることで血流の改善を図ります。そもそも局所麻酔薬は血管を拡張させて血流を良くすることが見込める薬のため、一時的な痛み止めとは異なります。
数ミリ単位の精度にこだわって行う神経ブロック注射
神経ブロック注射は、どのような症状や疾患に適応するのでしょうか?

痛みの症状としては腰下肢痛や頸肩腕痛など、疾患としては頸椎・腰椎の脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、頸椎症性神経根症、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛などが挙げられます。他には片頭痛や緊張性頭痛などで来られる患者さんもいます。慢性的な痛みだけでなく、ぎっくり腰などの急性痛にも有用で、1~2回で治療が終了することもあります。また、難治性の神経痛に対しては、高周波熱凝固法とパルス高周波法があります。ともに神経ブロック注射の効果を長続きさせることが期待できる治療で、高周波熱凝固法は背骨の近くにある神経に針を近づけ、高周波電流により70~90度の高温の熱を発生させ、痛みの遮断をめざします。パルス高周波法は、針の先端から高周波電流を42度以下の低温で流し、痛みを抑えることをめざす方法です。
どのような経緯で来院する患者さんが多いですか?
整形外科や皮膚科の先生からの紹介もありますし、最近は患者さん自身がウェブサイトで調べて来院されるケースが多いでしょうか。また、手術が嫌で来る人もいれば、さまざまな検査を受けたものの痛みの原因が不明で当院にたどりつく人もいます。ですから、まずは患者さんの痛みを否定せず、受容することが大切です。痛みは気持ちとも深く関わっていて、患者さんが私たちを信頼してくれなければ、さらに強い痛みを感じてしまう場合もあります。原因不明の痛みで悩んでいた患者さんに対しては「これまでにたくさんの検査を受けて、悪いものが見つかったわけではないので、良かったです。しかし、痛みがある状態は大変なので、ゼロにはできなくても、軽くなる方法を考えていきましょう」と話して、治療をスタートするようにしています。
診療はどのように行っていますか?

問診で痛みがどこにあるのか・どれくらいの痛みかを聞きます。もちろん、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症ではMRI検査を行いますが、まずは患者さんの話を聞きます。血管が神経に当たることが原因として多いとされる三叉神経痛であっても、血管が神経に当たっていないケースもあるからです。痛みの場所がわかるだけでも、どの神経が関係しているのかを類推でき、患者さんの話でおおよその診断がつく場合が多いです。注射する際に気をつけているのは精度です。例えば神経根をブロックする場合、神経のすぐそばに薬を注入すると、痛みを感じにくく、効果も期待できます。そのためにエックス線透視下で、打つ場所を数ミリ単位の精度で決めて、スピーディーかつ適切に注射します。注射する回数は患者さんによって違いがあり、1回で改善が見込める場合もあれば、なかなか改善が見込めない場合もあります。
患者の痛みを受容し、一人ひとりに向き合った診療を
初診時から神経ブロック注射を行うと聞きました。

患者さんを早く痛みから解放してあげたいという塩谷先生の教えから、ほとんどの患者さんに対して初診時に注射します。MRIの画像を見なくてもおおよその見当がつくため、検査を行う場合でも並行しながら治療を進めることがあります。MRIの画像を診て悪いとわかったところと、患者さんが痛いと感じるところが逆というケースもありますね。2ヵ所で迷った際は疑わしいほうに注射し、効果がなさそうだと感じたら、もう1ヵ所に注射します。このように痛みの原因となっている神経を特定するためにも注射しますが、それができるのが神経ブロック注射の特徴なので、原因不明の痛みに悩まれている患者さんに対しても注射します。
診療で大切にしていることを教えてください。
同じような痛みであっても、人によって感じ方や受け取り方は違います。例えば注射をして次の日には痛みが戻ったとします。それでも「治療をしてよかった」と喜ぶ人もいれば「治療の意味がなかった」と不満に思う人もいるでしょう。ですから、患者さんの話すことを受け入れ、個々を診ることを重視しています。当院では神経ブロックがメインではあるものの、薬物療法も行っています。内服薬のみの人や、神経ブロック注射と内服薬を併用する人、精神的なアプローチも加えることで痛みの軽減が望める人もいます。それだけ痛みというのは人によって差があるため、患者さん一人ひとりに向き合うことを心がけています。
痛みに悩んでいる人へのメッセージをお願いします。

当院で診るのは神経が骨に挟まっているための痛みなど、体にとっては無駄といえるような痛みがほとんどです。このような痛みは運動後の筋肉痛などとは違い、休んでいても良くなることはありません。むしろ、整形外科的な疾患は神経ブロック注射で痛みの軽減を図り、患部を動かす運動療法と併用することで、改善が見込めます。そのためにも、一度はペインクリニックの受診をお勧めします。これまでに他院で治療や検査を受けたことがある人は、その内容をまとめて来院していただければ診療時間は短くて済むと思います。何かあればご相談ください。

