土井 浩 院長の独自取材記事
土井クリニック
(寝屋川市/香里園駅)
最終更新日:2022/03/24
香里園駅から、北西へ徒歩5分。大通りからひと筋入ったマンションの1階、少し奥まった静かな場所にある「土井クリニック」を訪ねた。2006年1月、泌尿器科全般とED(勃起障害)治療の専門クリニックとして開院。院長の土井浩先生は、患者の話にしっかりと耳を傾け、適切なアドバイスをする。初診の患者には、特に問診と病状の説明に時間をかけるという、診療姿勢は大学病院時代から変えないこだわり。「初診の患者さんには時間をかけてわかりやすい病状の説明と基本的な治療方針をお話しします」と語る土井院長に、「ただ単に病気を治すだけはいけない」と医師としての心構えを説いてくれた恩師の話から、それを実践した患者とのエピソード、最近増加している泌尿器科の症状まで、たっぷりと話を聞いた。
(取材日2018年4月18日)
初診は特に時間をかけて患者の話を聞く
もう開院から10年以上ですね。開院の経緯とクリニックのご紹介をお願いいたします。
当院は泌尿器科全般とED(勃起障害)治療に対する専門クリニックとして、2006年1月に開院しました。1988年から関西医科大学附属病院に18年間勤務していましたが、2005年12月末に関西医科大学香里病院が一時閉院することになったので、それを機に開業することを決めました。泌尿器科ですから患者さんのプライバシーには特に気を配っています。検査ベッドや椅子の周りはカーテンで仕切り、落ち着いて検査を受けていただけるようにしています。トイレは車いすの患者さんにも支障なく使っていただけるようにトイレ内を広く作っています。また現在は再診の患者さんのみですがクリニック内での待ち時間を少しでも減らすために電話もしくはインターネットで利用できる診察順番自動受付システムを使用しています。来院前に自動受付すれば院外から診察の進み具合がわかるのでご自身の順番に合わせて来院していただければ良いという仕組みです。
来院される患者さんで、どんな症状が多いでしょうか。
男性は前立腺肥大症で60~80歳ぐらいの方が多いです。症状は排尿困難、頻尿、残尿感などで酷くなると尿がまったく出なくなったり腎臓機能障害も生じるので早めの治療が必要です。女性は頻尿・尿失禁の症状で来院する方が多いです。病名では過活動膀胱・腹圧性尿失禁で年齢的には40~90歳ぐらいと幅広いです。最近はテレビ番組やコマーシャルで病気のことを知り「自分と同じ症状かも?」と気づいて来院される方も多いです。またこれらの病気で来院された患者さんの中には尿路がんが隠れている場合もあり、緊急時にはその日のうちに大学病院など手術可能な総合病院にご紹介します。特に痛みを伴わない肉眼的血尿は尿路がんの可能性が高く1回だけでも血尿があれば泌尿器科専門の医師をぜひ受診してほしいです。
泌尿器科を初めて受診する人は少し勇気がいると思いますが、先生が気をつけていることはありますか?
初診の患者さんの診察では問診から始まり診察、基本検査、お薬手帳の確認、病気のご説明までトータルでお一人20~30分ぐらいかかります。症状のお話はもちろんですが既往症や他科の受診状況含めて多くのお話をじっくりと伺います。現在の病気と直接関係ないことも含めてなるべく途中で遮らずに患者さんのお話を伺います。時々そのようなお話の中に重大な診断のヒントが隠されていて他の病院ではわからなかった病気が見つかることがあります。実はこの診察スタイルは大学病院時代から変わっていません。「先生は初診の患者さんに時間をかけ過ぎ!」とよく叱られました。ですが初診の時に十分にお時間をかけて病気のご説明をさせていただくと患者さんにとっては病気の不安が少なくなります。結果、その後の診察は短いお話でも理解しやすくなり医師にとっても患者さんにとっても利点は大きいと考えています。
ただ単に病気を治すだけではいけないという教えを胸に
先生が医師になろうと思われたきっかけは何でしょうか?
小学校3年生の時に急性糸球体腎炎で2ヵ月ほどある小児科病院に入院しました。その時の担当の男性医師がとても優しくてかっこよくて憧れました。回診時に話してくれた先生の言葉がとても心強く安心できました。将来自分も憧れの先生みたいになりたいなと思ったことを覚えています。
数ある診療科の中から、泌尿器科を選ばれたのはなぜですか?
医学部の学生時代たいへんお世話になった恩師が泌尿器科の教授だったことと大切なのに医師の数が少ない泌尿器科で頑張ってみたいと思ったことが大きいと思います。病院実習で回っている時も何かと親密に声をかけてくれる先生が多かった印象です。外科内科などに比べて圧倒的に入局者が少なかったこともあり熱心に指導して早く一人前の医師に育てようとする医局の空気がうれしかったです。良き先輩がいるやりがいのある職場に巡り合えて、泌尿器科に入局したことは非常に良かったと思っています。
医学部生時代の泌尿器科の恩師からは、どんなことを学ばれましたか。
学生には厳しい先生でした。いい加減なことをするとすぐに怒られました。私も怖かったです。でも入局してみると学生実習の時とはまったく別人のような温和で面倒見の良い先生だったのでびっくりしました。亡くなられた今でも頭が上がりません。教授である先生の外来診察には3年間助手としてそばで多くのことを学ばせていただきました。一番の教えは「患者さんには君たちの知らないさまざまなご事情やご不自由なことがある。私たち医師は病気のことについてはプロだけれど病気を治すことだけで治療法を選んではいけない。医学的にはこの治療が絶対良いことがわかっていても患者さんのご事情や希望を十分にくみとった上でその方にとっての最良の治療をしないといけない。ただ単に病気を治すことだけが医師の仕事ではない」というお言葉です。この教えは今も忘れず実践しています。
最初の段階で、基本の治療方針を示すことがモットー
医師は病気を治すだけではない、という想いで患者さんと向き合われる中で印象的なエピソードはありますか?
大学病院の勤務医時代、入院治療の担当をした60歳ぐらいの男性患者さんでした。最初はご自分のことを何も話されなかったのですが、日がたつうちに徐々に打ち解けて会話するようになりました。多少、情緒の不安定なところもあり「もう明日から治療は断る」と言われて、必死に説得したこともありました。そんなある日、「身寄りがないと言ったけれど、昔、縁を切った弟がいて、死ぬまでにもう一度会いたい」と告白されました。病院のソーシャルワーカーや行政に協力を依頼して、弟さんを探したところ居場所が判明しました。電話をかけて「お兄さんが弟さんに会いたいと強く希望されています」とお伝えすると、すぐに飛んで来てくださいました。実は弟さんはお兄さんに会いたくてずっと探していたけれどどうしても行方がわからず半ば諦めておられたようです。何十年ぶりのご兄弟再会の様子はこちらも胸が熱くなるほどでした。その後無事退院されました。
診察でモットーとしているのはどんなことでしょうか。
ご友人の勧めやクチコミ、他のクリニックを受診した後に来院される方も多いです。初診の患者さんには時間をかけてわかりやすい病状の説明と基本的な治療方針をお話しします。自分で絵を描いたりして工夫しながらできるだけわかりやすい説明を心がけています。「説明がわかりやすかった」「自分がどういう状態にあるのかがよく理解できた」「ここへ来て良かった」と思ってくださればうれしいですね。
読者にメッセージをいただけますか。
近頃、性感染症が増えつつあるように思います。もし感染してしまったら早めに受診していただきたいです。またパートナーがいる方にはパートナーも含めた治療が必要となります。患者本人を治療してもパートナーが保菌者の場合、完治してもすぐに再発を繰り返します。男性は排尿痛や排膿などの症状があり見つかりやすいのですが、女性の場合、ほとんど症状がないため、重症化してから発見されることも多いです。放っておいて自然に治る病気ではないので治療は必須です。当院からのお願いですが男性患者さんの場合、2時間以上排尿しない状態で来院いただき、当院で採尿していただきます。排尿を我慢していただいた尿でなければ正確な診断ができないためです。最後に、排尿に関する症状ならば我慢せず泌尿器科専門の医師にご相談ください。きっと勇気を出して受診して良かったと思っていただけると思いますよ。
自由診療費用の目安
自由診療とはED治療/約6000円~