梅岡 弘一郎 院長の独自取材記事
梅岡レディースクリニック
(松山市/土橋駅)
最終更新日:2022/02/09
まるでヨーロッパの一軒家のようなたたずまいの「梅岡レディースクリニック」。自然な形の出産を応援する産婦人科として、日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医である梅岡弘一郎院長が2005年に開院。自然分娩の中でもフリースタイル分娩を取り入れるなど、女性に優しく、負担の少ない医療の提供をめざしている。マタニティーライフ、そして産後のケアにも注力しており、「助産師や看護師らスタッフも親身になって患者さんに寄り添ってくれています」との言葉に、チーム医療で一人ひとりに合わせたサポートに取り組んでいる様子がうかがえる。そんな同院の診療方針や力を入れている取り組みについて、梅岡院長にじっくりと話を聞いた。
(取材日2021年12月10日)
チーム医療で「妊娠・出産・育児」を末永くサポート
産婦人科医師を志したきっかけ、開院までの経緯を教えてください。
当院の立地は、もともと父が産婦人科を営んでいた場所なんです。私は、子どもの頃から産婦人科医師として働く父の姿を見ていましたから、ゆくゆくは家業を継ぐことになるのかなと考えていました。なので、産婦人科医師を志したのは父の影響がまず一つ。それから医師として唯一「生」に関わることのできる、新たな命の誕生に「おめでとう」と言える、そんな産婦人科に魅力を感じたことも決め手となりました。その後、1995年に父が亡くなったのですが、当時の私はまだ愛媛大学医学部産婦人科に所属する研修医でしたから、一度医院は閉めることに。市立八幡浜総合病院や倉敷中央病院、愛媛大学医学部の産婦人科で経験を積み、2005年「梅岡レディースクリニック」として新たに開院しました。
助産師さんがたくさん活躍しているとお聞きしました。
現在は12人の助産師が活躍してくれています。婦人科の疾患や妊娠で不安に思うこと、出産後のお乳の手入れや夜泣きなど、大変なことがたくさんありますから、そんなときに助産師や看護師が寄り添ってくれています。私は医療の専門的なことを、スタッフはそれぞれの視点からのサポートを。全員で連携して「助産院のような産婦人科」をめざしたいと思っています。私が言うのも何ですが、当院は助産師も看護師も、みんな優秀。患者さんのために何をすればいいか、どんなことが必要か、それぞれが考え、勉強会などにも積極的に参加してスキルを学んでくれています。私を含めた全員で知識や技術をアップデートし、妊娠前から出産後まで、患者さんお一人お一人の状況に寄り添うことを大切にしています。
妊娠前から産後までサポート体制が整っているんですね。
はい。妊娠前でいうと、当院ではブライダルチェックにも対応しています。これは「妊娠・出産能力があるかどうか」を調べるのではなく、風疹などの妊娠に影響のある病気への抗体があるかを調べ、「いつ妊娠しても良い状態かどうか」を確認するものです。結婚前に受けに来られる方もいれば、独身で受けに来られる方もいますね。また妊婦健診時は、個室で助産師と1対1で行う保健指導の時間があります。当院では、妊婦さんのバックグラウンドも考慮した上で、不安なくお産に臨めるような環境づくりをめざしています。その時々の不安を解消できずに、ため込んでしまう方も少なくないんです。助産師になら言いやすいこともあると思いますので、どうか無理をすることなく、遠慮せずに不安や疑問をお話しいただけるとうれしいです。
自然な形の出産と母親の心身を支える産後ケアにも注力
フリースタイル分娩を取り入れられているのですね。
分娩台での一般的なお産に限らず、より自然な形で妊産婦さんが望む体勢でお産を行うのがフリースタイル分娩です。天井からつるした産み綱を利用していきむこともできますし、立位に近い出産姿勢も可能です。人によって楽な出産スタイルは異なりますから、私たちスタッフが妊産婦さんと一緒になって一番楽な姿勢や呼吸法などをアドバイスし、安全に出産できるようサポートします。ただ、これは妊婦さんが望む出産をかなえるための選択肢の一つ。これまで基幹病院で培ってきた技術や知識を生かし、ご本人がどういうお産にしたいかをお聞きして状況に沿った方法をご提案しています。
出産後のケアにも力を入れているとお聞きしました。
先述したように一人ひとりが不安なくお産に臨めることを大切にしており、産後に関しても同じです。当院では、出産後は退院まで母子同室。よく泣く赤ちゃんもいれば、よく眠る赤ちゃんもいますので、初めてだとなお困ってしまうお母さんもいると思います。母子の人間関係を築く上で大切な時期ですので、どんな赤ちゃんなのか、お母さんはどんな様子なのかを助産師と看護師が見守りながら、お母さんが無理をしないようにサポートしています。また退院後も、産後の育児疲れなどで心身のケアが必要なお母さんを対象とした産後ケアを行っています。里帰りから家に戻り、親御さんやパートナーのサポートが得られなくなった中で3時間おきの授乳に疲れ果て、産後うつを発症するといったケースもありますから、そうなる前に相談できる場所でありたいと考えています。
産後ケアとは具体的にどんなものなのですか?
当院では宿泊、日帰り入院、そして訪問という形で、助産師と看護師が専門的な支援を行います。産後ケアは人それぞれのアプローチが重要。授乳がうまくいっているか、睡眠はどうか、何に悩んでいるかを助産師がカウンセリングをして適切な対応を行います。赤ちゃんとちょっと離れて、まずはゆっくり睡眠を取ってもらうだけで楽になるお母さんもいますからね。主に助産師が担当しますが、お薬の処方など医学的に関与が必要な場合は私が医師として関わっていきます。当院のスタッフ全員が母子ともに幸せに過ごせることを願っています。お母さんが結果的に産後うつなどを発症してしまわないようにしたいという思いから、最初の段階である育児の不安や疲労を解消するために産後ケアの取り組みを始めました。当院でお産をしていない方でも利用できますので、「疲れたな」「つらいな」と思っただけでも、むしろそう思う前に気軽に利用いただきたいと思っています。
さらなる患者へのサポートをめざして
産後ケアやイベントなどの取り組みのために新棟を開設されたそうですね。
妊娠中だけでなく出産後もお母さんたちに寄り添っていくことについては、開院当初からのテーマでした。そこで、1ヵ月健診から後の空白の期間を埋めるため、ヨガやベビーマッサージなどの講座、さらに年に2度の赤ちゃん同窓会などを開催し、お母さんたちの育児に関する不安をできる限り和らげる機会を設けてきました。取り組んでいるうちにどんどんボリュームが増えていったんです。その延長線上に産後ケアがあるのですが、実践するには場所が足りないということで新棟の建設に至りました。新棟には、産後ケアのお母さんが入院できるお部屋のほか、家族入院に対応した部屋、エステルームや整体ルーム、スタジオを設けています。病室は新棟含めすべてシャワーやトイレ完備の個室なので、ご家族も安心して面会していただけると思います。
不妊治療に関して、先生のお考えを聞かせてください。
不妊治療に関しても、出産と同じようになるべく自然な形で進めていくことを心がけています。いきなり体外受精など高度な治療を行うのではなく、まずは負担の少ないところから始めて、妊娠への可能性を探っていきます。その方の年齢や状況、ご要望をお伺いした上で、どういう歩みで治療を進めていくのがいいのか。こちらから「こうしましょう」ではなく、その方の意思を尊重することを大切にしています。また体外受精に関しても、心身的にも経済的にもできるだけ負担のかからないものを選択しています。妊活を検討されている方は、まずはご相談いただけたらと思います。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
妊娠、出産、育児は、女性にとって大きな転機となることですから、出産の恐怖、育児や社会復帰への不安などから躊躇される方もいらっしゃると思います。ただ一言で言うと「案ずるより産むが易し」ということだと思うのです。「自分一人で頑張ろうとするのではなく、周りに頼って周りを巻き込んでいいんですよ」ということは強くお伝えしたいですね。さまざまな葛藤を経て、妊娠、出産、育児に臨む。そんな女性の決断を私たちは精いっぱい応援させていただきます。産後ケアについても、行政の補助が受けられる場合もありますから、上手に活用して無理なく出産・子育てができる道を一緒に考えていきましょう。
自由診療費用の目安
自由診療とは【不妊治療】人工授精/1万6000円、体外受精/15万円~30万円(治療内容によって変動)、ブライダルチェック/2万円